お読みいただく前に
本記事は、Shopifyが海外で公開した事例・機能解説をもとにした翻訳記事です。内容の性質上、一部に日本では現在ご利用いただけない機能・サービスが含まれます。日本での提供状況は、記事末尾の「日本市場での注意点」にまとめていますので、あわせてご確認ください。
顧客が好きなチャネルでブランドを買えるようにすることは、もはや流行ではなく常識になりました。D2Cの新興企業も老舗ブランドも、オムニチャネル販売を当たり前の戦略として採用しています。
オムニチャネルとは、顧客がさまざまなマーケティングチャネルを行き来しながら購入に進む際に、途切れのない体験を提供する顧客中心の戦略です。複数チャネルを用意することは、獲得と維持の両面で重要であるだけでなく、収益性向上にもつながります。
統合コマースプラットフォームを使えば、複数の販売チャネルを一元管理し、リアルタイムで顧客体験をシームレスに統合できます。在庫最適化も簡単になり、常に顧客ニーズを中心に据えられます。
ここでは、いま注目の小売ブランド9社がどのようにオムニチャネルを実践しているか、そしてそこから学べることを紹介します。
1. MyFitFoods
パーソナルトレーナーで創業者のMario Mendias氏は、フィットネスの成果を左右する「ヘルシーな食事」を、誰もが手軽に取れるようにするためにMyFitFoodsを立ち上げました。「便利で栄養価の高い食事で人々の目標達成を助ける」というシンプルなビジョンから出発し、同社は3州9店舗まで拡大し、年商5,000万ドル超を視野に入れています。
一貫したデータと堅牢なテック基盤により、MyFitFoodsは顧客体験を中心に据えたままスケールする準備が整いました。店頭でもオンラインでも、素早く信頼できるチェックアウトと新鮮でヘルシーな食事を提供しています。
主な学び:
- 統合オムニチャネル体験:全オペレーションを単一プラットフォーム(Shopify)に集約し、テックの分断を解消。店頭POSからオンライン注文までが1つのシステムに流れ込み、事業全体を360度で可視化しながらカスタマーサービスに集中できるようになりました。
- 取引の高速化:動作が遅くクラッシュしがちな旧システムを入れ替え、店頭チェックアウト時間を180秒から60秒に短縮。ピークタイムでも顧客満足と売上が向上しました。
- 会員・ロイヤルティプログラム:Fit Clubの会員にはリピート購入で20%割引を提供。統合システムによりスタッフは即座に割引を適用し、常連客を認識できるため、摩擦のない体験でロイヤルティを高めています。
2. Allbirds
AllbirdsがD2Cとオムニチャネル販売の代表格として支持されるのには理由があります。サステナブルなフットウェアブランドとして、気候とファッションへの影響に目を配り続けています。
ニュージーランド発のB CorpであるAllbirdsは、天然素材のシンプルなデザインからスタートし、いまでは年齢や性別を問わない多彩なラインナップを持つ多店舗リテーラーへと成長しました。
主な学び:
- BOPIS(オンライン購入・店舗受取):オンライン専業から出発したAllbirdsは、北米、欧州、アジアに店舗を広げたグローバルリテーラーへ成長。特定のシューズが店頭にない場合でも、オンライン注文→店舗受取で送料や配送待ちを回避できます。
- パーソナライズされた顧客エンゲージメント:購買履歴に基づき、新商品のパーソナライズ推薦を顧客へ配信。リピートを促進します。
- オンラインで常に存在感を維持:オンライン発のブランドが勢いを保つのは容易ではありませんが、Allbirdsは複数のソーシャルチャネルを活用し、インフルエンサーとのコラボやSNS・メールでの販売を継続。チャネルに合わせたコンテンツを作るため、InstagramやTikTokに特化したインフルエンサーとも連携しています。
3. Glamnetic
GlamneticはアーティストのAnn McFerran氏が抱いたスタートアップの夢から始まりました。磁気アイラッシュを、誰でも簡単に着脱できるよう徹底的に磨き上げたブランドです。手頃で長持ちし、オフも簡単なプレスオンネイルへとラインを拡大。EC発のリテーラーとして始まりながら、早期にSephoraやTargetといった大手小売にも展開し、オムニチャネル戦略を一気に加速させました。
主な学び:
- ソーシャル広告:オンライン上のGlamnetic広告は至るところに表示され、動画や商品コンテンツが視線を引き付けます。そこから数クリックでリサーチ、購入、最寄り店舗の検索まで進められます。
- 魅力的な創業者ストーリー:創業者が常に前面に出る必要はありませんが、Ann氏のように「着けやすい製品をつくりたい」という思いが数百万件の注文につながった事例は、強いソーシャルプルーフになります。創業者自身が製品を心から愛していることが購入動機を後押しします。
4. Lazy Oaf
英国発のLazy Oafは、2000年代初頭のリバイバルに乗ったのではなく、その波をつくってきたブランドです。2001年の創業以来、ユニークな色使いとデザインでアパレル、アクセサリー、ホームウェアを展開し、若々しさを意識した遊び心あるアイテムを届けています。
主な学び:
- ソーシャルコマース:Instagramの販売機能を活用し、購買ジャーニーを前に進める導線を確保。約100万フォロワーを抱える同ブランドにとって、メインページのショップ設置は不可欠で、気に入った商品をフィードから数クリックで購入できます。
- ブランドの責任:気候への影響や社会・文化的な発信を明確にし、サプライヤー情報や企画から製品完成までのプロセスを公開。スローファッションを実践し、女性創業・女性が多いチームであることも示すなど、倫理の「舞台裏」を見せることをオムニチャネル上の重要な接点にしています。
- Oafworld:ブランドにメディア機能を持たせ、アーティストインタビュー、ビジュアルエディトリアル、ニュースをキュレーションするOafworldを運営。プロダクトの外側にあるクリエイティブ面も可視化し、ブランドのナラティブと提供価値に焦点を当てています。
5. Steve Madden
Steve Maddenは、厚底プラットフォームで一世を風靡した90年代の象徴的フットウェアブランドです。いまではシューズに加え、ハンドバッグやアクセサリーなど幅広いラインアップを展開し、複数ブランドを擁するポートフォリオ企業へと成長しています。
主な学び:
- オンライン購入の店頭返品:実店舗発のブランドとして対面のつながりを維持しつつ、オンライン派の顧客にもチャネル横断のパーソナライズ体験を提供。返品方法も自由で、店舗での返品を選べます。
- 顧客対応の強化:全チャネルで高品質なカスタマーサービスを提供し、公式サイトのライブチャットで購入・配送・返品の問い合わせに即応しています。
- BNPL(後払い)の活用:Afterpay、Klarna、Affirmなどの後払いを提供し、カート→外部決済→注文完了までをシームレスに。全額を今払えるか迷わせず、分割払いの安心感で完了率を高めています。
6. Monos
日本語の「もののあわれ」に着想を得て、美しい瞬間を愛でる心を込めたミニマルなラゲッジを届けるMonos。4つのオンラインストアを持つデジタルネイティブとして出発しながら、オンラインと実店舗が溶け合う体験を構想し、その実現にShopifyを活用しました。
ECとリテールの両オペレーションを最小限の内製で運用し、チームは顧客満足とブランド成長に集中できています。
主な学び:
- 複数のオンラインストアとオフライン拡張:Shopify上で4つのECサイトを運営し、地域ごとの旅行者に対応。Shopify POSで在庫・販売チャネル・顧客データを統合し、どこで購入が起きても単一の「真実の情報源」を維持しています。
- 店頭購入・自宅配送:大型ラゲッジは店頭で体験しつつ、配送は自宅へ直送。倉庫や別店舗に在庫があってもスタッフが即座に所在を特定して手配し、次の旅までのタイムラインに合わせて届けます。
- 顧客との深い関係:店舗スタッフは購入履歴に即時アクセスでき、どのチャネルで見つけた顧客にも一貫したパーソナライズ提案が可能です。
7. Parachute
創業者のAriel Kaye氏は「誰もが上質で心地よい住まいを享受すべきだ」という信念からParachuteを立ち上げました。ラグジュアリーなホームウェアと手頃で心地よい購買体験のギャップを埋めるため、丁寧なデザインとスムーズな購入導線を両立させ、オンラインの利便性と実店舗の居心地をブレンドしました。
当初はカスタム技術スタックで運用していましたが、スケールやチャネル統合、体験の一貫性に課題があり、Shopifyへの移行でコヒーシブでシームレスなジャーニーづくりに再集中できました。
主な学び:
- オンラインと店舗を一つのシステムで:Shopify POSにより分断された複数システムを単一プラットフォームに統合し、在庫・プロモーション・チェックアウトの運用を標準化・簡素化しました。
- BOPISで利便性を提供:オンラインで購入し店舗で受け取れる導線を整備し、理想のベッドリネンを自分のスケジュールで入手可能に。4年間でBOPIS売上が5倍に成長しました。
- 顧客プロファイル:店舗でのすべての接点がShopifyの顧客プロファイルに紐づき、関連商品の提案や新しいデュベの使用感チェックなど、きめ細かなフォローアップが可能です。
- 一貫したブランド表現:Web初訪問から店頭でのタッチ&フィールまで、スタイル、品質、「心地よさの約束」を全チャネルで統一しています。
8. Diane Von Furstenberg
1973年にアイコニックなラップドレスを送り出して以来、Diane von Furstenberg(DVF)は大胆なプリント、タイムレスなシルエット、女性のエンパワーメントの代名詞となってきました。
現在DVFは、世界各地のブティックとマンハッタン・ミートパッキング地区の旗艦店、さらに70以上の国で展開するECチャネルで顧客にリーチ。オンラインとオフラインのデータを単一プラットフォームに統合するユニファイドなアプローチで、ラグジュアリー小売のクライアントリング水準を引き上げています。スタイリストは来店でも「カートに追加」でも、常にレッドカーペット級の体験を提供できる体制です。
主な学び:
- 統合データ:Shopify上でオンライン・店頭をまたぐ顧客の購買ジャーニーを一望。サイズの好み、過去購入、スタイルノートまでを単一プロフィールに集約し、即座に参照できます。
- パーソナルなクライアントリング:NY旗艦店のパーソナルスタイリストが高度な顧客インサイトを用い、1対1のガイダンスを提供。常連・新規を問わず、より深い関係性を築いています。
- ターゲティッドフォローアップ:Endear(Shopify連携)などのアプリで購買行動に基づきセグメントし、再入荷や新作ローンチ、プレローンチパーティーなどを個々の嗜好に合わせて案内します。
9. Mizzen+Main
Mizzen+Mainは、パフォーマンス素材とクラシックなメンズウェア設計を融合し、快適さを犠牲にせずシャープに見えるドレスシャツやアパレルを展開しています。
オンラインで知名度を高めたのち、早期に実店舗へも舵を切り、大手小売とのホールセール契約を拡大。全米で11店舗をオープンしました。Shopifyで店頭とオンラインの購買チャネルを統合することで、年々着実なオムニチャネル成長を実現しています。
主な学び:
- 単一の顧客ビュー:オンライン専用の顧客でも店頭常連でも、購入履歴やロイヤルティポイントを単一のShopifyプロフィールに集約。スタッフはサイズの好みや購入済みアイテムを即時に参照でき、新規案内やギフト提案を的確に行えます。
- その場で発送:在庫が店頭にない場合でも「Ship to customer」で販売を成立。週次取引の約20%がこのオプションを利用し、顧客が“手ぶらで帰る”事態を防ぎます。
- 一貫したプロモーション:オムニチャネルの販促はオンライン・店頭で同条件を適用。ShopifyのPOSタイル機能でスタッフはディスカウントをワンタップ反映でき、複雑な迂回策は不要です。
Shopifyでオムニチャネル小売へ
モバイルアプリ開発からリワード連携まで、“つながる戦略”はもはや選択ではなく標準です。ShopifyのようなECプラットフォームなら、あらゆるコマースチャネルを単一・集中型のシステムに統合し、運用をシンプルにできます。
Shopifyを使えば、在庫をリアルタイムに最適管理し、顧客がどこで買っても統合プロファイルにアクセスでき、全チャネルで一貫したメッセージングを維持できます。新ラインの立ち上げ、ポップアップ出店、新市場への展開など、顧客が期待するシームレスな体験を実現する基盤が整います。
オムニチャネル小売のFAQ
ベストなオムニチャネルリテーラーはどこですか?
Warby Parkerは、店頭・オンライン・ソーシャルメディアを統合し、シームレスな顧客体験を提供する優れたオムニチャネルリテーラーです。
オムニチャネル小売のリーダー企業は?
Allbirds、Rothy’s、Steve Maddenなどがオムニチャネル小売のリーダーです。
オムニチャネルリテーラーの例は?
Sephoraのように、ウェブサイトやモバイルアプリでのオンライン販売と店頭販売を組み合わせる企業がオムニチャネルリテーラーの例です。
オムニチャネルアプローチは時代遅れですか?
オムニチャネルは時代遅れではありません。顧客が購入に至るまでに複数のタッチポイントを提供する手法として、すべてのリテーラーにとって重要になりつつあります。オムニチャネル顧客は、単一チャネル顧客に比べて購買回数がほぼ2倍になります。
✅ 日本で利用可能な機能
- Shopifyペイメント: オンライン決済の最も簡単な方法
- Shop Pay: ワンタップでの安全で高速なチェックアウト
- Shop Pay Component: グローバルに利用可能な決済コンポーネント
- Shop App: iOS・Android対応のショッピング・配送追跡アプリ
- Shopify POSソフトウェア: 実店舗とオンラインの在庫・売上同期システム
- 予約注文機能: まだ入手できない商品の予約販売設定
- 基本税務機能: 自動・手動税務計算
- サードパーティ税務アプリ対応: 専門税務ソフトとの連携
❌ 日本で現在利用不可または一部制限のある機能
- Shopify Collective: 他ブランドとの商品協業・クロスセリング(US・CA限定)
- Shop Campaigns: 有料顧客獲得キャンペーン(US・CA限定)
- Audiences: デジタル広告向け顧客リスト生成(US・CA限定)
- Shopify Capital: ビジネス資金調達サービス(US・CA・UK・AU限定)
- Shopify Balance: 売上・支出一元管理(US限定)
- Shopify Bill Pay: 請求書支払い管理(US限定)
- Shopify Credit: ビジネス用クレジットカード(US限定)





