健全なワークライフバランスを保つことは、ビジネスを運営している人も、会社員として働いている人にも重要です。私生活の時間を適切に確保することは、健康の維持はもちろん、生産性向上につながります。
なかでも起業家は、働く時間や休暇のスケジュールを自分で決められる一方で、仕事と私生活の境界が曖昧になりやすい点が課題です。気づかないうちに働きすぎて、私生活とのバランスを崩してしまうリスクがあります。
本記事では、ストレスを軽減し、生産性を高める最適なワークライフバランスの見つけ方を紹介します。

ワークライフバランスとは?
ワークライフバランスとは、仕事と生活のバランスが取れ、どちらも充実した状態を目指す考え方です。内閣府の「仕事と生活の調和」推進サイトでは、以下のように定義されています。
仕事と生活の調和が実現した社会とは、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」である。
ワークライフバランスは、1980年代後半にアメリカで生まれた言葉です。近年では、2025年に高市早苗首相が「ワークライフバランスを捨てる」と発言したことで、再度注目を集めています。また、労働時間の削減が重視されがちですが、出産・育児・介護といったライフイベントと両立できる環境づくりや、リモートワークをはじめとするワークスタイルの多様化、仕事と成果に対する満足度向上などの面も、ワークライフバランスのための取り組みに含まれます。

ワークライフバランスが重要な理由
生産性向上やコスト削減に効果的
ワークライフバランスの実現は、働く人の健康やメンタルヘルスを守るためだけではなく、企業の競争力を向上させるためにも重要です。例えば中小企業を対象に東京海上日動リスクコンサルティングが行った調査によると、労働時間削減のための取り組みを行った企業のうち54.6%が、「仕事の生産性が向上した」と答えています。他にも「コストが削減できた」「仕事の意欲が向上した」という回答も多く、経営改善につながる効果が表れていることがわかります。
人材の確保につながる
さらに同調査によれば、出産・育児支援の取り組みを行った企業では、38.9%が「会社に対する満足度が向上した」、18.5%が「離職予防に効果があった」と回答しています。ランスタッド株式会社が公開した調査結果でも、日本の労働者が就業先を選ぶ際に重視する要素として65%が「ワークライフバランス」をあげており、「報酬」の63%を超える結果となっています。ワークライフバランスの実現が、優秀な人材の採用や定着といった経営上の課題解決にも重要な役割を果たすといえるでしょう。
経営者のパフォーマンスが高まる
経営者や起業家のメンタルヘルスが悪化すると、判断力が低下するなど事業リスクを増大させる可能性があります。適度な余暇をとることは起業家にとって欠かせない創造性や集中力を高める効果があるため、開業したばかりでもワークライフバランスを意識しておくことは必要だといえます。

ワークライフバランスの悪化で起こる課題と問題点
ワークライフバランスの崩れが引き起こす悪影響は、個人の健康や生産性だけにとどまりません。ハードワークに伴うストレスは、配偶者や家族、または同僚などの人間関係にも影響を及ぼします。
- 仕事のことが常に頭から離れなくなる:事業や仕事のことばかり考えてしまい、家族や友人、趣味、プライベートな時間を確保しにくくなります。また、仕事と生活のバランスが崩れると、仕事上の問題が必要以上に大きく見え、私生活の出来事を軽視してしまいます。その結果、精神的な余裕を失いやすくなります。
- 仕事の生産性が下がる:仕事と私生活の切り替えがうまくできない人ほど、生産性が低下する傾向があります。短い休憩や適度な休暇を取ることで、気持ちがリセットされ、集中力やモチベーションを取り戻せる場合も少なくありません。
- 必要なときに休めなくなる:仕事の重要度が高くなり「今は休んでいる場合じゃない」と感じて、無理を続けてしまうケースもみられます。適切な休息を取らない状態が続くと、メンタルヘルスの悪化だけでなく、ビジネスそのものにも悪影響を及ぼします。
- 外注や代行にかかるコストが増える:仕事に時間を取られるあまり、掃除代行や家事代行、送迎サービスなどを利用する人も増えています。一方で、それぞれのコストが積み重なると、大きな負担になります。

ワークライフバランスを維持する7つのコツ
1. 週ごとに仕事の計画を立てる
ビジネスで成果を出し、プライベートの時間も確保するためには、1週間単位で仕事を整理すると効果的です。運動や人と会う時間、趣味など、意識しないと後回しになりやすい予定も、あらかじめスケジュールに組み込んでおきましょう。また、仕事を始める前に15〜30分ほど時間を取って、やるべきタスクや予定を書き出し、優先順位をつけておくと、ムダな時間を減らせます。
ここで重要なのは、やることを増やしすぎないことです。忙しいと感じている人ほど、ToDoリストが膨大になりやすいものですが、本当にやるべき仕事は限られています。例えば、対面での打ち合わせやネットワーキング、会議などは、自分が直接関わる必要がある業務です。一方で、買い物や雑務、家事などは、外部サービスを使って代替できる場合もあります。
2. タスクを分解する
やることが多すぎて「何から手をつければいいかわからない」と感じたときは、タスクをできるだけ小さく分解するのが効果的です。
タスク管理ツールで知られるTrello(トレロ)は、この「マイクロプロダクティビティ(英語)」を推奨しており、大きな仕事を無理なく進めるテクニックとして提唱しています。まずは、抱えているもっとも大きなタスクを一つ選び、それを小さな作業に分解してみましょう。例えば、新しいECサイトを作る場合、次のように作業を分解できます。
- レンタルサーバーやホスティングサービスを調べる
- トップページのコピーライティング
- デザイン制作を外部に依頼する
- 商品情報を登録する
このように分けてみると、「ウェブサイトを一から作る」という大きな仕事が、取り組み可能な作業の集合体であることがわかります。タスクを細かくすることで、作業をスケジュールの中に組み込みやすくなり、長時間の連続した作業を避けられます。
3. 作業効率を高めるツールを活用する
仕事と私生活のバランスを整えるためには、作業効率を高める業務効率化ツールを活用するのが効果的です。例えば、以下のようなものが挙げられます。
- Focus To-Do(フォーカス・トゥ・ドゥ):作業時間と休憩を短時間で区切ることで集中力を保ちやすくするポモドーロタイマーです。長時間作業による疲労を防ぎ、安定したパフォーマンスを維持しやすくなります。
- TimeCrowd(タイムクラウド):どの作業にどれだけ時間を使っているかを自動で記録・可視化できます。時間の使い方を見直すことで、ムダな作業や改善ポイントが明確になります。
- Trello:タスクをカード形式で整理し、進捗や優先順位を一目で把握できるツールです。タスクの進捗が可視化できるため、次にやるべき仕事に集中しやすくなります。
- BlockSite(ブロックサイト):集中したい時間帯だけ、業務に必要のないWebサイトへのアクセスを遮断できます。集中力を阻害しやすいSNSやYouTubeなどのサイトのアクセスを制限できます。
4. 働く時間を決める
1日に作業する時間をあらかじめ決めて、枠の中で仕事を完結させる意識を持つことが重要です。この手法は、タイムブロッキングやタイムボクシングと呼ばれます。
例えば、メールやSNSを確認するだけの時間を30分程度確保して、それ以外の時間の通知をオフにしておくと、作業が中断されにくくなります。重要な仕事には、あらかじめまとまった時間枠を割り当て、その時間内で終わらせる意識で取り組むと作業時間を短縮できるでしょう。
その場の気分で作業したり、通知に反応していたりすると、作業の切り替えが頻発し、生産性が下がってしまいます。作業時間を割り当てておくことで、マルチタスクを防ぎ、生産性を向上できます。
5. 休暇を取る
休暇を取ると、頭がリセットされて物事を新しい視点で捉えられるようになります。何週間も悩んでいた問題に対する明白な解決策が見つかるかもしれません。
忙しいスケジュールの中でも、休む時間を意識的に確保した方が成果を出しやすくなります。なお、休暇は必ずしも長期間の旅行だけを指すものではありません。例えば、スマートフォンを持たずに散歩に出かけることや、家族と過ごす時間にパソコンをしまうなど、仕事から短時間離れることも効果的です。
6. マインドフルネスを実践する
マインドフルネスを実践すると、今この瞬間に意識を集中する習慣が身につきます。例えば、下記のような方法で実践できます。
- 仕事を始める前に、5分間目を閉じて深呼吸する
- 仕事を終えたときに、気になっていることを紙に書き出す
- 足裏の感覚に注意を向けて歩く
仕事の合間にマインドフルネスを実践することで、短い休憩でも回復でき、集中力を高めやすくなります。
7. パレートの法則を活用する
パレートの法則(80/20の法則)とは、成果の大半は限られた一部の行動から生まれているという経験則です。日常生活だけでなく、ビジネスの場でも応用されています。
実際に、「売上の8割は2割の顧客がもたらす」「ウェブサイトの8割のアクセスは2割のページに集中する」といった傾向があり、効率的なリソースの配分や業務改善のヒントになります。例えば、下記のような方法でパレートの法則を活用できます。
- 複数の販売チャネルの運用を1つか2つに絞る
- 顧客や商品の構成分布を分析して上位層を特定する
- 上位の商品や顧客を対象としたキャンペーンを実施する
パレートの法則を意識すると、重要な少数の仕事に集中できるようになります。影響の小さい業務を減らすことで、仕事の質を保ちながら、時間と精神的な余裕を確保しやすくなります。
まとめ
ワークライフバランスは、単なる理想論ではなく、生産性を高め、ビジネスを成功へと導く実践的な考え方です。要点は以下の通りです。
- 休息や私生活の充実は、集中力や判断力を高める
- 働き方を工夫することで、限られた時間でも成果を出せる
- 無理なく持続可能なビジネスの運営につながる
仕事と私生活のバランスを整えることが、長期的な成功への近道です。本記事で紹介した7つのコツを取り入れながら、自分に合った働き方を見直してみましょう。
ワークライフバランスに関するよくある質問
ワークライフバランスはどこが定義していますか?
日本では、内閣府が「仕事と生活の調和」として定義し、厚生労働省をはじめとする関係省庁が推進しています。
ワークライフバランスを保つために企業はどんな取り組みをしていますか?
下記のようなものが挙げられます。
- フレックスタイム制
- 短時間勤務制度
- 長時間労働の削減
- 有給休暇取得の促進
- リモートワークの導入
- 出産・育児や介護の支援
- 福利厚生の充実
ワークライフバランスは古い考え方ですか?
いいえ、古い考え方ではありません。働き方の多様化や副業、リモートワークの普及により、重要性が高まっています。近年では、成果を出すための働き方として再評価されています。
ワークライフバランスは個人でも改善できますか?
はい、可能です。時間管理の見直しや、成果に直結しない作業を減らすなど、個人レベルの取り組みは改善につながります。
文:Haruhiko Kagawa





