2024年時点で、オンラインストアのショッピングカートのうち、実に70.19%が購入に至らずに放棄されていることをご存知でしょうか。これは独立調査会社のBaymard Instituteが算出したデータであり、カゴ落ちが事業者規模の大小を問わず、Eコマース全体にとって深刻な課題であることを示しています。
この課題の深刻さは、具体的な数字に置き換えるとより鮮明になります。例えば、あなたのサイトに月間12.5万人の訪問者があり、平均注文額が100ドル、コンバージョン率が0.92%だとします。もしコンバージョン率をわずか0.5%改善できたなら、月間で62,500ドル、年間では69万ドルもの追加収益が生まれる計算になります。
これほどのインパクトがあるからこそ、コンバージョン率の最適化は重要な経営課題なのです。問題は、どこから手をつけるべきか、ということです。
この記事では、まずカゴ落ちが発生する主な原因を分析し、その後、すぐに実践できる12の具体的な改善戦略を徹底解説していきます。
カゴ落ちとは? なぜ発生するのか?
カゴ落ちとは、顧客がEコマースストアで商品をショッピングカートに追加したにもかかわらず、最終的に購入を完了せずにサイトを離脱してしまう現象を指します。
Baymard Instituteの調査によると、カゴ落ちの主な原因は以下の通りです。
- 追加費用(48%): 送料や税金など、想定外の追加費用が表示されること。
- アカウント作成の必須化(26%): 購入のためにアカウント作成が強制されること。
- クレジットカードのセキュリティ懸念(25%): 決済情報の入力に不安を感じること。
- 配送の遅さ(23%): 配送スピードが顧客の期待に満たないこと。
- 複雑なチェックアウト(22%): 購入手続きが煩雑であること。Shop Payのようなツールは、ゲストチェックアウトに比べて最大50%高いコンバージョン率を示すことがあります。
- 支払総額の不透明性(21%): 最終的な支払総額がチェックアウトの最後まで分からないこと。
- 不満足な返品ポリシー(18%): 返品条件が分かりにくい、あるいは顧客にとって不利であること。
カゴ落ち率を減らすための12の戦略
カゴ落ちの平均レートは約70%にものぼりますが、その多くはチェックアウトフローの改善によって取り戻すことが可能です。ここでは、具体的な12の戦略を紹介します。
1. ファーストパーティデータを活用し、購買体験をパーソナライズする
サードパーティCookieの廃止に伴い、小売業者は顧客から直接収集したファーストパーティデータに注目しています。このデータを活用することで、顧客一人ひとりに最も関連性の高い情報を提供し、チェックアウトプロセスを合理化できます。Shopifyのプラットフォームは、あらゆるデバイスやチャネルからの顧客情報を単一のプロフィールに統合し、再訪問した顧客を即座に認識して、過去の行動に基づいた商品提案や割引などを提供します。
2. カゴ落ちメールを送信する
カゴ落ちした顧客を呼び戻すEメールは、非常に効果的な施策です。Klaviyo社のデータによると、カゴ落ちメールの開封率は41.18%、クリック率は9.50%にものぼり、1通あたりの収益は5.81ドルという高いパフォーマンスを記録しています。ShopifyアプリのKlaviyoなどを活用すれば、効果的なカゴ落ちメールの自動化が可能です。
3. ロイヤルティプログラムを導入する
ロイヤルティプログラムは、通常顧客を優良顧客へと育成する強力なツールです。ポイントの獲得や交換といった仕組みを通じて、競合他社ではなく自社での再購入を促します。ShopifyアプリのSmileやLoyaltyLionを使えば、専門知識がなくても簡単に独自のロイヤルティプログラムを構築できます。
4. ライブチャットを活用する
ライブチャットは、顧客が商品について疑問を持ったその瞬間に、リアルタイムで回答することで離脱を防ぎます。Shopify Inboxは、オンラインストアのチャットやSNSからの問い合わせを一元管理できる無料のメッセージングツールです。特筆すべきは、Shopify Inboxでの会話の70%が、購入手続き中の顧客とのものであるという点です。
5. 多様な決済方法を提供する
決済方法の選択肢が少ないことも、カゴ落ちの大きな原因の一つです。Shopify ペイメントを利用すれば、Shop Pay、PayPal、Google Payといったエクスプレスチェックアウトや、クレジットカード、さらには暗号資産など、多様な決済方法をワンクリックで導入できます。
6. チェックアウトのプロセスを簡素化する
迅速で簡単なチェックアウト体験は、カゴ落ち率を劇的に改善します。ある調査によると、消費者の3分の2は4分以内にチェックアウトが完了することを期待しています。Shop Payを有効にすれば、顧客は保存された情報を使ってわずか数秒で支払いを完了でき、プロセスを大幅に簡素化できます。
7. 離脱防止ポップアップを使用する
サイトから離脱しようとする訪問者の動きを検知し、割引クーポンや送料無料といったインセンティブをポップアップで表示するのも効果的です。OptiMonk社のデータでは、カゴ落ち対策のポップアップは平均17.12%のコンバージョン率を示しています。ShopifyアプリのPrivyなどを使えば、このようなポップアップを簡単に設定できます。
8. リターゲティング広告を配信する
多くの顧客は、最初の訪問で購入を決めることはありません。一度サイトを訪れて商品をカートに追加したものの購入しなかった、という最も見込みの高い顧客層に対し、リターゲティング広告を配信して再訪を促しましょう。Shopify Plusで利用可能なShopify Audiencesは、数百万の購買データを活用して最も購入意欲の高い顧客リストを作成し、広告費用対効果を最大化します。
9. チェックアウト時の信頼性を高める
信頼性の構築は、セキュリティロゴの表示だけではありません。例えば、配送方法の選択画面で「通常配送」と表示するだけでなく、「5〜7営業日でお届け」のように具体的な日数を明記することで、顧客は安心して意思決定を下せます。Shopifyと連携する多くの3PL(サードパーティーロジスティクス)事業者は、配送予定日の自動表示に対応しています。
10. ソーシャルプルーフ(社会的証明)を活用する
商品ページに顧客のレビューや評価を掲載することは、信頼性を高める上で非常に有効です。自分と同じような他の顧客が高く評価しているという事実は、購入の後押しとなります。Partake Foods社は、顧客の具体的な推薦文をハイライト表示することで、この効果を巧みに利用しています。
11. 返品を簡単にする
複雑な返品プロセスは、購入前の顧客を躊躇させる原因となります。「費やしたお金を簡単に取り戻せる」と顧客が確信できれば、より安心して購入し、結果的により多くのお金を使ってくれるようになります。Shopifyに無料で組み込まれている自己返品管理ソリューションを使えば、返品受付から返金、在庫補充までを一元的に管理できます。
12. プッシュ通知を送信する
プッシュ通知は、メールアドレスなどの個人情報を必要とせずに、匿名のサイト訪問者を購読者に変えることができます。顧客がカートを放棄した場合、プッシュ通知で再訪を促すことが可能です。Shopアプリは、新商品の発売や限定コレクションの通知をリアルタイムで送信し、顧客の関心を再び喚起します。
まとめ
カゴ落ち対策の鍵は、顧客を深く理解し、一人ひとりに合わせた体験を提供することにあります。顧客が何を閲覧し、何を購入し、何を後で買おうと保存したかを明確に把握することで、極めて関連性の高いキャンペーンを展開できます。
Shopifyは、データを具体的なアクションに変え、カゴ落ちを減らすための強力なツール群を提供しています。
- Shopify Audiences: 優良顧客と共通の特性を持つ新規顧客を見つけ、購入意欲の高い見込み客へのリターゲティングを強化します。
- Shop Pay: 既存ユーザーを認識し、情報を自動入力することで、チェックアウトを高速化します。
- セグメンテーション: 閲覧履歴や購買行動に基づき、ターゲットグループを作成し、的確なメッセージを届けます。
これらのツールを活用し、カゴ落ちを過去のものとしましょう。





