2025年に注目すべきファッションECサイト10選

ファッションECの変化は目まぐるしく、新興ブランドが次々に既存勢に挑みます。新トレンドとともに販売チャネル、販売方法、イノベーションも絶えず進化しています。

2030年までにファッションブランドのグローバルEC売上は1.6兆ドル超に達すると予測されます。2025年は、パーソナライズされた統合カスタマージャーニー、リセール、ポップアップによるコミュニティづくり、ビジネスモデルの多角化といったトレンドが成長を後押しするでしょう。これは既存勢にも新興勢にも当てはまります。変化が常態のファッション小売ですが、その変化に積極的に向き合うブランドには大きなチャンスがあります。

この記事では、オンライン販売を巧みに実践するブランドを取り上げ、その手法を具体的に分解します。オンライン販売の“お手本”を知りたい方に最適です。

1. Rainbow Shops

Rainbow Shopsは、1935年に手頃な価格のアパレル市場で存在感を確立して以来、多くの変化を経験してきたバリュー志向のファッション小売企業です。米国本土、プエルトリコ、米領バージン諸島に1,000以上の実店舗を構え、同時に大きなECプレゼンスも築いています。レガシー小売がブランドアイデンティティを守りながら優れたEC戦略を築いた好例です。

商品動画でPDPに生命感を

Rainbow ShopsはAmazon、Walmart、Sheinといった巨大企業と競合しますが、目指すのは倉庫で品物を漁るような体験ではなく、「宝探しのような買い物」「エンターテインメントとしての小売」だとデジタルコマース担当VPのDavid Cost氏は話します。

その体験を実店舗からECに移植するには周到な設計が必要です。ShopifyエコシステムのパートナーとともにWebストアとアプリを展開し、創業から100年に迫る老舗ながら現代のショッパーに適応してきました。

その一例が、商品詳細ページ（PDP）に商品動画を載せることです。

「静止画像でドレスを見るのと、実際にモデルが歩いたり回転したりする動画を見るのとでは印象が違います。スチール撮影の最後に10～15秒の動画を撮るのが私たちのフローです」とDavid氏。これらの動画はShopify上にホストされ、週に100万回超の再生を生み出していますが追加コストはかかっていません。

フリクションのないチェックアウトで勝負

Rainbow Shopsにとってチェックアウトの摩擦を減らすことは最優先事項です。「チェックアウトはゲームで、フリクションは敵です。これを取り除けるあらゆることが勝利につながります」とDavid氏。店頭では行列を作らせない運用を徹底し、オンラインでは世界最高水準のコンバージョンを誇るShopify Checkoutと、加速チェックアウトであるShop Payを採用しています。

顧客の9割がモバイルからアクセスするため、1回の入力削減が重要です。「電話番号かメールアドレスで6桁コードを受け取り、それで終了——Amazonレベルのチェックアウトです」とDavid氏。

実店舗のギフトカードやFedExの「Hold at location」のような配送オプションなど、伝統的小売の強みもチェックアウトに取り込みました。広い店舗ネットワークとデジタルを統合し、同価格帯の競合にはないオムニチャネル体験を実現しています。

2. Psycho Bunny

Psycho Bunnyは2005年のネクタイブランドから、2016年の再創業を経てプレミアムアパレルのグローバル・ライフスタイルブランドへ。ホールセール中心からD2Cへ舵を切り、上質なペルー産コットンのポロを核に急成長し、従業員約1,000人、世界90超の店舗に拡大しました。

統合基盤が生むシームレスなオムニ体験

急成長の最中でもECと店舗の体験には“成長痛”が見られません。D2C単体から実店舗へ領域を広げる中で、常に継ぎ目のないオムニ体験づくりに集中してきたからです。IT・データ・アナリティクス・PMO担当VPのJean-Aymeri de Magistris氏は「市場環境に素早くピボットし、成長目標に向け前進し続けるには、コマーススタックの統合が極めて重要だった」と語ります。

そのシームレスさが最もわかりやすく現れるのが、店頭・オンライン双方のチェックアウトとフルフィルメントです。店頭ではShopify POSを採用し、レシート不要の返品やBOPISなど代替受取・配送にも対応。店舗をフルフィルメント拠点としても活用しています。オンラインではShop Payによる加速チェックアウトが「非常にうまく機能している」（同氏）とのこと。Shop Payネットワークとの連携で顧客理解とマーケティングが進み、出店先や次の一手の判断を後押ししています。Shopifyを活用したローカライズにより、国際市場への拡大も加速しました。

3. Spanx

Spanxは革新的なシェイプウェアからスタートし、快適さと自信を称えるファッションブランドへ進化。アクティブウェアやデイリーウェアへと拡張し、機能性とスタイルを両立しています。

ターゲットに合ったサイト体験

Spanxのサイトは、製品と同じく、安心して自信を持って選べる購買体験を提供します。詳細なサイズガイド、素材の解説、スタイリング提案を揃え、直販（DTC）プラットフォームとしてプレミアムなサービスを体現。購入時の不安を解消し、確信を持った意思決定を後押しします。

ボディポジティブと女性のエンパワーメントへのコミットメントは、ブランディングとデジタルのあらゆる接点に一貫して表れています。マーケティング画像は多様な体型を祝福し、コンテンツ戦略には教育リソースやスタイリングのヒントを含め、ユーザーが自分の選択に自信を持てるよう支援します。

深掘りするインタラクティブなPDP

商品ページはスペックや素材説明にとどまらず、各アイテムの開発背景と得られるベネフィットを“物語”として伝える設計です。詳細なフィット情報とサイズガイド、スタイリングの推奨、実際のカスタマーレビューを組み合わせ、ユーザーが「自分の体型やワードローブにどう馴染むか」を具体的にイメージできるよう支援します。AIチャット「Spanx Assistant」はFAQに即応し、「レビューでは効果があると評価されているか？」「着心地についての声は？」といった疑問もその場で解消できます。

インフルエンサーと育てるコミュニティ

インフルエンサープログラム「Spanx Society」では、アフィリエイト報酬、コンテンツ制作向け提供品（ギフティング）、先行アクセス、限定プロモーションなどの特典を用意。フォロワー500人程度から応募でき、マイクロからメガまで幅広いインフルエンサーと関係を築く設計です。すべてのファンを大切にする姿勢が制度に反映されています。

こうした“等身大で自信を後押しする”アプローチが、レギンスからラウンジウェアまで頼れる選択肢として支持されるロイヤル顧客層を育てています。

4. Tecovas

Tecovasは男女向けの美しいハンドメイドのウエスタンブーツとアクセサリーを提供します。品質・履き心地・フィット・スタイルのすべてに高い基準を設け、1足を手作業で仕上げるのに200以上の工程を費やします。

テキサス州内および全米各地に30店舗超を構え、無料ドリンクやブーツ磨きの無料サービスなど、店舗ならではの体験で来店客を迎えます。CTOのKevin Harwood氏は、店舗のホスピタリティをそのままECに移植することがデジタルジャーニーの要だと語ります。「ブランドのモットーのひとつは“ラディカル・ホスピタリティ（徹底したおもてなし）”。それをデジタルにどう持ち込むかが鍵です」。

視覚的に惹き込むスクロール体験

サイトは視覚的に心地よく、誰にとっても使いやすい設計です。ライフスタイル写真をふんだんに用い、Tecovasのメッセージ、審美性、価値観を余すところなく映し出します。配色、画像、テキストの一つひとつが「ここはカウボーイのライフスタイルを祝福する場所だ」と感じさせます。ホームページや商品ページはもちろん、ブーツのスタイリングや手入れを紹介するブログにも同じ世界観が息づいています。

Tecovasの世界に触れた人なら、どこで見てもそれとわかるはずです。顧客がブランドを愛する理由と、市場で際立つために必要なことをチームが深く理解しています。

POSが生む店舗とECのブレンド

店舗とオンラインの双方でShopify POSを活用し、体験をシームレスにブレンドしています。特にShopifyと共同で実装したSplitCart機能が鍵で、1回の会計内で購入品ごとに受け取り方法を選択できます。たとえばブーツ1足は店舗で持ち帰り、もう1足は自宅へ配送するといった具合です。

また、Shopify POSによりオンライン購入・店舗受取（BOPIS）も提供し、顧客の選択肢を最大化しつつバックエンドの運用効率も維持。店頭スタッフはPOSのUI拡張で割引コードや在庫データに容易にアクセスでき、リアルタイム在庫更新によりオンラインカタログも常に最新。視覚的に魅力的で高機能なデジタル店頭として、オンラインと実店舗の両方で“シームレスで顧客中心”の体験を補完しています。

5. BYLT

BYLTは現代のライフスタイルに溶け込む“使えるベーシック”を磨き抜いてきたブランドです。まずメンズで存在感を確立し、その後すべての顧客層へ拡大。上質な素材と日常使いのしやすさを両立させた、カッティングの美しい定番アイテムで評価を築いてきました。

シームレスで統合されたオムニ体験

クリーンなUIと直感的なナビゲーションは「ベーシックは“普通”である必要はない」というブランド哲学を体現。各商品の見せ方は、顧客にとって最も重要なポイント——完璧なフィット、上質な素材、汎用性の高いスタイリング——に焦点を合わせています。写真表現は品質と“日常でどう映えるか”の両方を強調し、ワードローブ全体を引き上げるイメージを具体的に示します。

全米の実店舗ではShopify POSを導入し、オンラインではShop PayとShop Appで高速チェックアウトと注文追跡を提供。BOPISなど代替ショッピング体験も試験導入し、利便性を最優先しています。さらに、TapCartで構築した自社モバイルアプリがモバイル戦略とシームレスに連動し、コンバージョンの10％超をアプリが占めています。

使いやすい割引とリワード

ロイヤルティ（Inveterate）はShopify Checkoutに統合され、POSでもポイント利用が可能です。

6. Mejuri

Mejuriは三代目ジュエラーのNoura Sakkijha氏が2013年に創業したブランドで、「特別な日だけでなく日常に寄り添うファインジュエリー」を掲げます。伝統的なクラフトマンシップとモダンなデザイン感覚を融合させ、オンライン専業のD2Cとして出発してから米・英・加・豪で39店舗へ拡大し、今も成長を続けています。

どこにいてもユーザーを映すEC体験

ミニマルで洗練されたデザインにより、プロダクト自体が主役に。オンラインの雰囲気は実店舗としっかり同期しており、両者の統合が高い完成度で実現されています。直近ではオーストラリア・シドニー店を来店客とオンライン顧客の双方を支える「APACのフルフィルメントノード」と位置づけ、国際配送のスピードとコストを大幅に改善。これはShopifyのネイティブな「店舗出荷（Ship-from-store）」で可能になったもので、以前のコマース基盤で足かせになっていたカスタム開発を排し、迅速な展開を実現しました。

店舗を地域のフルフィルメント拠点へ転換したことで在庫回転が改善し、越境顧客への配送時間とコストも劇的に削減。トラフィックや取引が増えてもShopifyのクラウド基盤により高い信頼性とパフォーマンスを維持し、Mejuriが掲げる上質な顧客体験を守り抜いています。

「店頭在庫を持つ“フリート”全体を想像してください。オンライン注文の充足にその在庫を最大限活用できるよう、オーダー・ルーティングを拡張することが極めて重要です。トップラインにもボトムラインにも大きなインパクトがあります」
——Rohit Nathany氏（Chief Digital Officer）

「Shopifyは、当社の急速な国際展開を解き放ってくれています。まさにウィンウィンです」

7. Skims

SKIMSは幅広いサイズ・スキントーンのシェイプウェア、ラウンジウェア、アンダーウェアで知られるブランド。2019年にKim Kardashian氏らが共同創業し、4年で評価額40億ドルに成長しました。

アプリが拓く道

Shopifyのネイティブ機能に加え、エコシステムのアプリを幅広く活用し、開発パートナーBy Radiantの支援で実装。多彩なサイズ・バリエーションを持つ商品ページは、セットで揃える関連商品の提案まで最適化。分割払いオプション、サイズや配送・返品情報の明示、そしてOkendoによる豊富なレビューで購入判断を後押しします。Rise.aiはストアクレジットや紹介・リワードを担い、Back-in-Stockアプリは“お気に入りを逃さない”体験を提供。Narvarによるスムーズな返品・交換は透明性と容易さで信頼を高めます。

コミュニケーションではKlaviyo（メール/SMS自動化）とAttentive（SMS/MMSマーケティング）を併用し、ドロップ告知や更新をタイムリーに配信。ZendeskがCSを支え、Dynamic Yieldはパーソナライズされた推薦・オファーを、Criteoはリターゲティングと広告運用を担います。

8. Kulani Kinis

Kulani Kinisは、2015年創業のDTCブランド。手頃で高品質なスイムウェアから始まり、APAC、EMEA、北米に広がる国際チームがスタイリッシュなビーチエッセンシャルを届けています。

B2BでもD2C級の体験を

Shopify PlusのB2B機能で卸サイトを構築し、少量発注のセルフサービス購入にも対応。D2Cで磨いた“買いやすさ”をそのままB2Bに移植しました。カスタムのコレクションページではページ遷移なしで複数サイズや大量数量を一括追加でき、800点規模の成長カタログでも選択が容易になりました。

ユーザー体験のパーソナライズも簡単です。マネージングディレクター兼共同創業者のAlex Babich氏は「ブランディング、訴求力、美学を何より重視しています。Shopify Plusを使えば卸サイトでも“私たちらしさ”を表現できました。B2B機能は求めていた統一感のある体験と、パートナーのニーズに合うカスタマイズを両立させてくれます」と話します。

結果として受注は短期間で急増し、世界中から新規ホールセール顧客を獲得しています。

9. Larroudé

Larroudéはタイムレスなエレガンスとモダンな洗練を融合したフットウェア・アクセサリーブランド。クラフトマンシップと細部へのこだわりで、デザイン・フィット・品質に妥協しないプレミアムアイテムを届けています。

“フルルック”をつくるコラボレーション

立ち上げから3年、Larroudéは顧客基盤とAOVを拡大するため、選定パートナーの複数のラグジュアリーカテゴリを統合するショッピング体験を計画しました。顧客がLarroudéのエコシステム内でフルルックを組めるようにし、卓越したデザインとフィット、品質へのこだわりを維持しながら顧客ニーズに応える狙いです。

そこで採用したのが商品コラボとクロスセルを支えるShopify Collective。Larroudéは1か月足らずで17ブランド、6カテゴリ（アパレル、アクセサリー、ホームデコール、ラグジュアリージュエリー等）を追加できました。

導入は想定以上に簡単で、新機能や新しいマーケティングキャンペーンの道を開きました。「Shopify Collectiveを知ってすぐ、1か月でパートナーをオンボードできる十分な機能が揃っているとわかりました」とビジネスソリューションスペシャリストのBianca Inocencio氏は語ります。

ファッションディレクター兼共同創業者のMarina Larroudé氏がRetrouvaiやFurbishなど新旧デザイナーとのパートナー構築に注力する一方、社内チームはコラボ先の商品や価格表を迅速に追加。説明文やバリアント、在庫などの商品データも容易に同期できました。

Collectiveローンチ後1か月で売上は21％増、AOVは5％増。Collective経由の売上の82％が初回顧客によるもので、新規オーディエンスへのリーチ拡大を示しています。Colléctは現在もサイトで提供され、顧客に愛される新たなマーケティング施策にもつながりました。

10. Little Sleepies

創業者Maradith Frenkel氏は、新生児の息子が湿疹に悩まされた経験から、敏感肌に優しい可愛いスリープウェアを求めてLunaluxe Bamboo™を開発し、Little Sleepiesを立ち上げました。いまではパジャマからデイウェアまで竹繊維ブレンドのアイテムを展開し、快適さとスタイルを重視する親やケアギバーに支持されています。

インセンティブが生む継続的な成長

2018年のローンチ以来、Little Sleepiesは急成長しています。成長を支えた大きな要因のひとつが、Shop Cashオファーを活用した新規獲得です。Shopアプリ上のShop Campaignsで新規・休眠顧客をインセンティブし、購入を促進しています。

Shopアプリと自社サイトでの購入には1％のShop Cashが還元されます。さらに毎週火曜に限定プリントを発売し、1時間以内に完売することも。約50万人のVIPコミュニティを持つ同ブランドにとって、プッシュ通知は重要で、100万のShopアプリユーザーに送った通知でクリック率6.55％を記録。Shopアプリ経由の売上は前28日平均比で303.6％増となりました。

ファッションECをレベルアップする

ここまで紹介した10ブランドは、老舗からデジタルネイティブまで幅広いものの、いずれもオンライン販売の一角を確立しています。共通点は、ShopifyのECプラットフォームを選び、強力な機能・連携・信頼性の高いテクノロジーを活用していることです。自社でも同じ成果を体験したいなら、Shopifyが何を提供できるか確かめてみてください。

出典: 10 Best Fashion Ecommerce Sites To Watch in 2025