数千ものSKU(最小在庫管理単位)を抱える大規模なECサイトにとって、カテゴリーやコレクションといった分類だけで、顧客が求める特定の商品を的確に見つけ出してもらうことは至難の業です。ここで重要な役割を果たすのが「サイト内検索」です。
サイト内検索は、顧客が入力したクエリ(検索語句)に最も関連性の高い商品や情報ページをサイト内から探し出す、いわばECサイトに内蔵された検索エンジンです。ある調査によれば、オンライン売上の約40%がこのサイト内検索を経由して発生しており、スムーズで直感的な検索体験の提供は、顧客満足度の向上、売上の増加、そして離脱率の低下に直接的な影響を与えます。
この記事では、あなたのECサイトのパフォーマンスを最大化するため、サイト内検索を最適化するための15のベストプラクティスと、それを実現するための最新ツールを詳しく解説していきます。
ECサイトのサイト内検索とは?
ECサイトのサイト内検索ソリューションは、顧客の検索クエリを、商品のタイトル、バリエーション、説明文、画像、SKUといった様々な情報と同期させるための仕組みです。
ユーザーが検索ボックスにキーワードやフレーズを入力すると、検索アルゴリズムがそのクエリとサイト内の商品ページを照合します。これにより、ECサイトのバックエンドでラベリングされた商品やページと検索語句が結びつき、パーソナライズされた商品推薦が大規模かつオンデマンドで提供されるのです。
サイト内検索を最適化する15のベストプラクティス
ここでは、サイト内検索を最適化する15のベストプラクティスを紹介します。
1. 商品名とタグを正確に設定する
検索エンジンを最適化する以前に、まずECサイトのバックエンドが正確な結果を表示できるよう設定されている必要があります。商品タグは正確な検索結果の鍵であり、すべての商品に検索されやすい関連用語がタグ付けされているかを確認しましょう。
ジュエリーブランドのLaCkore Couture社は、タグ付け戦略を再構築した結果、サイト内検索経由のコンバージョンが15%増加したと報告しています。この事例は、基本的な改善がいかに大きな成果を生むかを示しています。
2. 検索ボックスを分かりやすく目立つ場所に設置する
ある調査では、消費者の69%がオンラインストアにアクセスするとすぐに検索ボックスに向かうとされています。デスクトップとモバイルの両方で、サイトの目立つ場所に検索ボックスを配置し、ユーザー体験を簡素化しましょう。
3. オートコンプリート機能で人気の検索語句や商品を提案する
ユーザーが検索語句を入力し始めると、関連性の高い語句や商品を予測して表示するオートコンプリート(入力補完)機能は非常に有効です。これにより、ユーザーは入力の手間を省けるだけでなく、自分が探しているもの以外の新たな商品を発見するきっかけにもなります。
鏡ブランドのInyouths社は、機械学習を活用したオートコンプリート機能を導入したことで、コンバージョン率が17%、直帰率が23%改善したと報告しています。
4. 自然言語処理(NLP)でユーザーの意図を理解する
自然言語処理(NLP)は、ユーザーが探しているものをうまく言葉で説明できない場合でも、正確な結果を導き出します。NLPアルゴリズムは、キーワードの有無だけでなく、文脈や関連性に基づいて検索結果を表示するため、「乾燥肌をなんとかしたい」「カーペットのシミ抜き」といった症状ベースの検索にも対応できます。
5. タイプミスや同義語に対応する
スペルミスがあった場合に「もしかして:〇〇」と正しい候補を提示したり、「ジャンパー」と検索された時に「セーター」や「プルオーバー」も結果に含めたりするなど、柔軟な検索機能は必須です。わずかな入力ミスで「商品が見つかりません」と表示することは、大きな機会損失につながります。
6. ファセット検索(絞り込み機能)を導入する
ファセット検索(スマートフィルターとも呼ばれる)は、顧客が検索結果をさらに絞り込むのに役立ちます。商品タイプ、色、サイズ、価格帯といったフィルターを用意することで、顧客は膨大な選択肢の中から、より速く目的の商品を見つけることができます。
7. 豊富なマーチャンダイジング機能を検索結果に加える
マーチャンダイジング機能が不足していると、検索結果の表示順を変更したり、ユーザー生成コンテンツ(UGC)を掲載したりすることができません。50%以上の顧客がレビューや実際の使用画像といったUGCを参考に購入を決めるというデータもあり、これは大きなデメリットです。サムネイル画像、レビュー、セール価格などを検索結果に表示させましょう。
この詳細な設定がもたらす効果は絶大です。ミリタリー関連の収集品を販売するInternational Military Antiques社は、7,500以上の商品に対して詳細な検索ルールを作成した結果、サイト内検索を利用した訪問者のコンバージョン率が600%も向上しました。
8. 関連性と人気度に基づいて検索結果を優先表示する
機械学習を活用すれば、個々のユーザー行動に基づいて検索結果をパーソナライズできます。例えば、あるユーザーが紳士服を閲覧した後で「ショーツ」と検索した場合、紳士用のショーツが優先的に表示されるようになります。
9. 分析ツールでユーザー行動と検索トレンドのインサイトを得る
サイト内検索の分析データは、人気商品や検索トレンドを特定するための宝の山です。検索回数は多いのにコンバージョンが低い語句は、在庫の問題や新たな商品開発のヒントを示唆している可能性があります。
10. モバイルデバイス向けに検索結果を最適化する
2025年までに、モバイル経由の売上はオンライン販売全体の44.2%を占めると予測されています。モバイルでは、メニューベースのナビゲーションよりも検索が主要な導線となることを意識し、検索バーを常にヘッダーに表示するといった工夫がコンバージョン率の向上につながります。
11. A/Bテストで継続的に検索パフォーマンスを改善する
検索機能の新しいバージョンと既存のバージョンを比較するA/Bテストを継続的に行いましょう。検索結果にレビューを表示させる、ゼロ件ヒットの場合の代替商品を増やすなど、一度に一つの要素だけを変更してテストすることで、どの変更が効果的かを正確に測定できます。
12. 商品以外の検索にも対応する
サイト内検索を利用するユーザーの3分の1以上は、商品ではなく、送料、返品ポリシー、サイズガイドといった情報を探しています。これらの非商品情報に関する検索にも対応することは、顧客を手助けするだけでなく、競合との差別化にもつながります。
13. 検索体験をローカライズする
海外の顧客を持つストアの場合、多言語での検索に対応し、地域ごとの文脈に合わせて結果をローカライズすることが重要です。「スニーカー」と「トレーナー」のような地域による名称の違いを吸収し、その地域固有の配送オプションを提示するといった対応が考えられます。
14. 検索のアクセシビリティを高める
アメリカでは成人の4人に1人が何らかの障がいを抱えているとされています。スクリーンリーダーが正しく読み上げられるようにラベルを付けたり、テキストと背景のコントラスト比を確保したりするなど、すべてのユーザーにとって使いやすい検索インターフェースを目指しましょう。
15. 検索をビジュアル化する
人間の脳は視覚的な情報を処理するようにできています。オートコンプリートのドロップダウンに商品のサムネイル画像、価格、評価などを表示させることで、顧客は一目で商品の関連性を判断し、商品発見のスピードが向上します。
おすすめのECサイト内検索ソリューション
優れた検索テクノロジーは、顧客が適切な商品を迅速かつ簡単に見つけるのを助けます。ここでは、代表的なソリューションをいくつか紹介します。
- Shopify Search & Discovery: Shopifyが提供する無料アプリ。カスタムフィルターの設定、同義語グループの作成、特定商品の検索結果上位表示、関連商品の推薦といった豊富な機能を提供します。
- Klevu: 高度なAIを搭載した検索・商品発見プラットフォーム。パーソナライズされた検索結果と商品推薦でコンバージョン率と平均注文額の向上を支援します。
- Algolia: 顧客が様々な言葉で検索しても意図を理解し、最適な商品を迅速に表示します。個々の顧客の好みに合わせて検索結果を動的に変更することも可能です。
- Findify: スマートテクノロジーを用いて顧客の探しているものを理解し、パーソナライズされた結果を表示します。自動化と手動での表示制御を両立できます。
まとめ
多くの事業者にとって、サイト内検索は新しいデザイン要素の陰で見過ごされがちな機能かもしれません。しかし、顧客にとっては、商品発見の旅をスピードアップさせるための最も重要なツールの一つです。
この記事で紹介したベストプラクティスを実践し、顧客が積極的に探している商品と彼らを効果的につなぐこと。それが、あなたのサイトのコンバージョン率を向上させるための一番の近道となるでしょう。





