決済プロバイダーを介さずに顧客からクレジットカード決済を受け付けたい場合は、決済アカウントが必要です。決済アカウントは、あなたのビジネスアカウントと顧客のカード発行会社の間で取引を仲介し、決済処理を行って売上金を振り込む役割を担います。
コロナ禍をきっかけに、小売業界ではキャッシュレス化やオンライン化が急速に進みました。そのため、顧客がスムーズにカードで支払いできるようにするための決済サービスへ投資することは、非常に理にかなっています。
この記事では、決済アカウントの基本知識、アカウント手数料、そして最適な決済銀行の選び方について解説します。
決済アカウントとは?
決済アカウントは、クレジットカード決済を受け付けるための事業者専用の銀行口座です。
顧客がクレジットカードやその他の電子決済手段で商品を購入すると、決済アカウントがカード発行会社と通信し、顧客の口座から資金を引き落として、事業者の口座に振り込みます。この仕組みにより、支払いの遅延を防ぎ、スムーズな取引が可能になります。
開業届を出している場合は、決済銀行で決済アカウントを開設することで、カード決済の受け付けが可能になります。
決済アカウントの仕組み
1. 取引が暗号化された決済ゲートウェイを通過
顧客がクレジットカードで商品を購入すると、あなたの決済ゲートウェイがクレジットカード発行会社に連絡し、カード保有者の口座に取引に必要な資金があるかを確認します。(通常、決済アカウントを開設する際に決済ゲートウェイの設定も行えます。)
2. 決済アカウントが顧客のカード発行者と通信
決済アカウントは顧客のカード発行会社と通信し、取引内容を確認します。承認されると、決済アカウントが顧客のクレジットカードから取引金額を引き落とします。
3. 決済アカウントが資金を受け取り、あなたの銀行口座に振り込む
決済アカウントプロバイダーは取引を決済し、あなたの会社の銀行口座に資金を振り込みます。通常は取引金額の3%から5%の手数料がかかります。
入金は取引完了直後ではなく、営業日の終わりや週末にまとめて処理されます。
決済アカウントの利点
Shopify ペイメントのような統合型ソリューションを利用しない場合、クレジットカード決済を受け付けるには決済アカウントが必要です。
ただし、決済アカウントと決済ゲートウェイを導入することで、次のような利点も得られます。
売上の増加
データが示す通り、カード決済は増加傾向にあり、現金での購入は減少しています。アメリカでは、日常の支払いに現金を使う人はわずか9%にとどまります。カード決済に対応していない場合は、売上機会を逃す可能性があります。
コロナ禍の影響でキャッシュレス決済が広がり、さらにEコマースの売上が伸び続けていることが、キャッシュレス経済への移行を後押ししています。サンフランシスコ連邦準備銀行の調査によると、2022年のアメリカにおける現金利用の割合はわずか18%で、5年前の31%から大きく減少しました。
キャッシュフローの改善
決済アカウントを利用することで支払い承認が迅速化され、資金をより早く受け取ることができます。顧客に請求書を送って翌月の支払いを待つといったことはなく、通常の場合、売上は1〜2営業日以内に入金されます。
簡単な資金管理
取引の多くがデビットカードやクレジットカードで行われるため、現金を追跡したり、数えたり、管理したりする手間が減ります。すべての支払いをPOSシステムで処理し、完全にキャッシュレス化することで、資金管理がよりスムーズになります。
より良い顧客体験
顧客は、自分の好みの支払い方法を選んで買い物や決済ができるため、ストレスのないスムーズなショッピング体験を得られます。これにより顧客満足度が向上し、再来店にもつながります。
💡 ヒント:顧客が電子決済を利用した際には、メールで領収書を送信しましょう。デジタル領収書は顧客にとって便利であり、チェックアウト時に連絡先情報を収集するきっかけにもなります。
安全な決済処理
決済ゲートウェイは、オンラインでのカード処理機能とあなたの事業運営をつなぐ橋渡しの役割を果たし、詐欺や不正利用のリスクを軽減します。これにより、あなたと顧客の双方にとって、より安全なチェックアウト体験が実現します。
決済アカウントの種類
事業のニーズに応じて、さまざまな種類の決済アカウントがあります。自社の業態に最も適したアカウントを選びましょう。
小売
小売店を運営するビジネスには、設定費用と取引コストが最も低い小売決済アカウントが適しています。これらのアカウントは、主に店舗での支払いを処理する固定店舗向けに設計されています。
モバイル
移動しながら営業するビジネス(フードトラックなど)には、モバイル決済アカウントが必要です。これらのアカウントは、携帯型の決済端末やスマートフォンアプリと連携して、クレジットカード決済を処理します。
Eコマース
オンラインで商品やサービスを販売する場合は、Eコマース決済アカウントが顧客のオンラインチェックアウトをサポートします。Eコマース向けの決済アカウントは、実店舗用のアカウントに比べて取引手数料が高くなる場合があります。
決済アカウントの開設方法
1. 必要な書類を整理する
事業情報、会社名、連絡先、営業年数、銀行口座情報、財務諸表を提供する必要があります。
💡 ヒント:すでにクレジットカード決済ツールを利用している場合は、その情報を決済アカウントプロバイダーと共有することで、承認手続きをスムーズに進められます。
2. 決済アカウントに申し込む
会社に関する必要な情報をすべて提出したら、申し込みを送信します。決済プロセッサーは、事業が財務的に健全であることを確認するために、個人および事業の信用履歴を確認する場合があります。
この時点で、決済アカウントプロバイダーに申請手数料を支払う必要がある場合もあります。
💡 ヒント:申請書には、事業の概要と決済アカウントが必要な理由を記載した手紙を添付しましょう。
3. 承認を得てアカウントを設定する
決済アカウントプロバイダーは、申請を承認する前にリスクレベルを確認します。以下の基準が考慮されます。
- 事業の運営年数
- 個人および事業の信用履歴(未払いがあるか、破産歴があるかなど)
- 過去に決済アカウントを保有していたかどうか
- 事業の種類
決済プロセッサーは、対面での取引をオンラインや電話での取引よりもリスクが低いと判断します。オンライン取引は詐欺のリスクが高いためです。
リスクを軽減するために、決済アカウントプロバイダーが住所確認を求める場合もあります。リスクが低いと判断された場合は申請が承認され、リスクが高い場合でも承認されることがありますが、その際は手数料が高くなる可能性があります。

決済アカウントの手数料
決済サービスは、ビジネスを支えるものであり、過剰な手数料で負担をかけるものであってはなりません。クレジットカード決済にどのような費用が含まれているのか、そして発生するコストの種類を理解することが重要です。
一般的に、決済サービスプロバイダーは次の3つの価格モデルのいずれかを採用しています。
フラットレート価格
フラットレート価格は、最も一般的な決済アカウントの価格モデルのひとつです。決済銀行は、顧客が使用するカードの種類に関係なく、すべてのクレジットカードおよびデビットカード決済に対して固定料金を請求します。売上高が比較的少ない場合に適しており、通常は次のように構成されます。
フラット料金 = パーセンテージ + 取引手数料
フラット料金は、取引金額の0.5%〜5%に加え、取引ごとに20¢(約30円)〜30¢(約45円)が加算されます。
インターチェンジプラス価格
透明性を高めるために、インターチェンジプラス価格モデルではコストを複数の要素に分けて表示します。主に「インターチェンジ手数料」と「プラスマークアップ(上乗せ分)」の2つで構成されます。
- インターチェンジ手数料は、クレジットカード会社によって請求され、そのコストがビジネス側に転嫁されます。
- プラスレートは、決済プロセッサーのマークアップ、つまり利益分を指します。
たとえば、インターチェンジプラス価格モデルは「取引ごとに2.4%+10¢(約15円)」のように表示されることがあります。
ティアード価格
この価格モデルでは、決済サービスプロバイダーが、取引に使用されるカードの種類や、ビジネスが処理する取引の総量に応じて料金を請求します。
この価格構造では、取引を「適格」「中適格」「非適格」の3つに分類します。適格取引には最も低いレートが、非適格取引には最も高いレートが適用されます。
その他の決済アカウント手数料
基本的な価格モデルに加えて、決済アカウントサービスには追加手数料が発生することがあります。
設定手数料
一度限りの手数料で、新しい決済アカウントを設定する際にプロバイダーが請求します。
ゲートウェイ手数料
オンライン取引のために決済ゲートウェイを利用する場合、この手数料が発生します。
PCIコンプライアンス手数料
決済アカウントがPayment Card Industry(PCI)規制に準拠していることを確認するための手数料です。アカウントを不正利用や詐欺から守るために支払われます。
チャージバック手数料
顧客が取引をキャンセルした場合や、購入した商品を返品した場合に、決済アカウントプロバイダーが返金処理ごとに請求する手数料です。
月間最低手数料ほとんどのプロバイダーは月額手数料を設定しています。一部では、月間の最低取引額を設けており、その金額に達しない場合に差額分が請求されます。たとえば、月間最低手数料が7,000円で、5,000円の売上しかなかった場合、差額の2,000円が請求されます。
また、他のプロバイダーでは、信用リスクの補填や取引資金の決済に関連して追加手数料を請求する場合があります。これらの手数料は、提供されるサービス内容に応じて5ドル〜99ドル(約750円~14,850円)の範囲です。
決済アカウントの選び方
決済アカウントプロバイダーを探す際は、以下の基準を考慮しましょう。
コストと手数料
クレジットカード処理料金は、取引の種類や使用されるカードの種類、店舗の月間処理量によって異なります。正確な手数料体系を把握し、フラット料金なのか、取引金額のパーセンテージなのかを確認することが重要です。
また、プロバイダーによっては「隠れた手数料」が発生する場合があります。たとえば、以下のようなものがあります。
- キャンセル手数料
- 早期解約手数料
- PCI非準拠手数料
- チャージバック手数料
- アカウント変更手数料
- 機器レンタル料
これらの手数料は、通常の処理手数料とは別に請求されることがあり、積み重なるとコストが大きく膨らむ可能性があります。
決済アカウントを開設する前に、複数のプロバイダーを比較し、自社の平均的な売上や取引量を見積もって最適な条件を選びましょう。
ハードウェア
モバイルアプリとシンプルなカードリーダーで運用できるのか、あるいはフル機能のPOSシステムが必要なのかを検討しましょう。必要なハードウェアを手頃な価格で提供してくれるプロバイダーを選ぶことが大切です。
カスタマーサービス
決済アカウントはビジネスオペレーションの中核を担うため、一度プロバイダーを選んでサービスを設定すると、しばらくの間そのサービスを利用することになります。そのため、発生し得るあらゆる問題に迅速かつ的確に対応できるプロバイダーを選びましょう。
ピーク時に実際にプロバイダーへ電話をかけ、応答までの時間や問題解決までの対応時間を確認することで、サポート体制の質を見極めることができます。
統合
決済アカウントがどのような統合に対応しているかを確認し、自社の店舗運営や顧客にとって柔軟な選択肢を提供できるかを見極めましょう。たとえば、ShopifyとStripeを利用すれば、決済ゲートウェイと決済アカウントの機能を組み合わせたエンドツーエンドの決済ソリューションをすぐに導入できます。
取引量
事業の成長に伴い、取引量は増加していきます。取引数や金額に制限がなく、追加手数料が発生しないプロバイダーを選ぶことが重要です。
一部のプロバイダーでは、取引量が多いビジネス向けに処理手数料の割引を提供しています。

決済アカウント(またはShopify ペイメント)でカード決済を処理
実店舗を運営している場合でも、ECサイトを運営している場合でも、顧客がカードで支払いできる方法を用意することが重要です。
従来の方法では、決済アカウントがあなたの銀行口座と顧客のカード発行会社の間を仲介し、顧客がクレジットカードの請求書を支払うのを待つ必要がなくなります。
すべての決済銀行は、決済アカウントの運用に対して取引手数料を請求します。自社の店舗に最適なアカウントタイプと料金体系を見つけるために、事前にリサーチを行いましょう。
また、Shopify ペイメントのような統合型の決済ソリューションを利用するのも効果的です。追加の申請手続きや第三者手数料を気にすることなく、スムーズにカード決済を受け付けられます。
決済アカウントに関するよくある質問
決済アカウントとはどのようなものですか?
決済アカウントは、事業者が顧客からクレジットカード、デビットカード、またはその他の支払い方法で代金を受け取るための銀行口座の一種です。通常、決済アカウントは決済銀行や決済プロセッサーによって開設され、支払い処理を行います。代表的な決済アカウントには、PayPal、Stripe、Square、Authorize.netなどがあります。
決済アカウントとビジネスアカウントの違いは何ですか?
決済アカウントは、クレジットカードやその他の電子決済を処理するために特化したビジネスアカウントの一種です。銀行やクレジットカードプロバイダーなどの決済プロセッサーを通じて開設され、顧客からの支払いを受け付けるために利用されます。
ビジネスアカウントは、ビジネス全体の財務を管理するための一般的な銀行口座であり、オンラインバンキングや小切手の発行などの機能を備えていますが、クレジットカード決済を処理する機能は含まれていません。
決済アカウントと決済プロセッサーの違いは何ですか?
決済アカウントと決済プロセッサーはどちらも、顧客からのクレジットカード取引を受け付けるために必要な仕組みですが、役割が異なります。決済アカウントは、顧客からの支払い資金を一時的に受け取るための銀行口座です。決済プロセッサーは、クレジットカード情報の送信・承認・決済といった取引処理を技術的に行うサービスです。
決済アカウントを取得するにはどうすればよいですか?
決済アカウントを取得するには、決済サービスを提供する決済プロセッサーまたは銀行を見つける必要があります。申請書に記入し、税務識別番号や事業用銀行口座情報などの必要書類を提出して承認を得ます。場合によっては、設定手数料の支払いが求められることや、事業を証明する書類を提出する必要があることもあります。





