「ECサイト用に高品質な商品画像を撮影したいけど、撮影機材をそろえるのは難しい」と悩んでいる事業者の方もいるのではないでしょうか。魅力的な写真の制作には、高価な機材が必ずしも必要なわけではありません。自然光をうまく活用するだけで、十分に魅力的な写真を撮影できます。自然光での撮影なら、商品本来の色や質感を美しく引き出せます。照明機材などにかかるコストを大幅に削減できる点も大きなメリットです。
この記事では、自然光を活用した商品撮影のメリットや撮影方法を解説します。ECサイトに掲載する商品写真のクオリティを高めたい方は、ぜひ参考にしてください。
自然光で商品撮影するメリット

- 商品本来の色味や質感を正確に表現できる
- 自然光の当たり方によって陰影が変化し、商品写真の雰囲気を自在に変えることができる
- 撮影する時間帯や場所によって色温度が変わるため、撮影意図に合わせた商品撮影ができる
- 高価な照明機材が不要なため、撮影場所に縛られず、コストも抑えられる
- 複雑な照明機材の設置が必要ないため、撮影時間を短縮できる
自然光を活用した写真撮影の最大のメリットは、被写体のありのままの魅力を最大限に引き出せることでしょう。ノイズの少ないクリアな写真を制作するには、照明は欠かせない要素です。とはいえ人工照明の場合、適切に設定できないと不自然な仕上がりになるケースもあります。EC事業では商品を正確に伝えることが重要なポイントとなるため、自然光をうまく活用して、商品本来の素材を正確かつ魅力的に伝えることができれば、販売数の増加や返品率の改善を図れます。
自然光での写真の撮り方

自然光を活用した製品撮影では、撮影のタイミングや角度などにこだわることが重要です。プロフェッショナルな商品撮影をするためのいくつかのポイントを紹介します。
適切なロケーションを選ぶ
自然光で撮影する場合、最も重要なのはロケーション選びです。室外で撮影する場合は、木や建物の影などを上手に利用して、光の強さや方向を調整しましょう。室外は光のバリエーションが豊富で、室内よりも柔軟に撮影条件を変えやすいのが特徴です。
室内で自然光を利用して撮影する場合は、大きな窓から数メートル離れた位置に撮影スペースを設けるのが理想的です。また、光の方角によっても仕上がりが変わります。北向きの場合は柔らかく均一な光を得やすく、南向きの場合はより明るく直接的な光になります。東向きと西向きは、時間帯によって光の強さが変化しやすいため、撮影時間を選ぶか、場合によっては避けるほうが無難です。
写真の雰囲気に合わせて時間帯を選ぶ
撮りたい雰囲気の写真に合わせて、撮影の時間を調整しましょう。自然光は時間帯によって光の色味や強さが大きく変わるため、目的に合ったタイミングを選ぶことが大切です。
- 午前:太陽光の色味の偏りが少なく、明るく柔らかな光。自然でクリーンな印象の写真など幅広い商品撮影に最適
- 昼間:光が強くコントラストがはっきりする時間帯。ただし、太陽が真上にくる正午は影が強く出やすいため注意が必要
- 夕方:あたたかみのあるオレンジ色の光が特徴。太陽が低い位置にあるため、長い影を活かした印象的な写真を撮りたい場合に最適
日差しが強すぎると感じた場合は、遮光カーテンや薄手のカーテンを活用して、調整しましょう。
商品を引き立てる背景を選ぶ
商品を引き立てるためには、魅力的で調和の取れた背景を選ぶことが大切です。背景の素材や色合いが商品の雰囲気やカラーとマッチしているかを意識しましょう。また、背景に加えて小物を組み合わせることで、商品の世界観をより自然に表現できます。商品に関連のある小物や、シーズン感のあるアイテムを取り入れると効果的です。
背景や小物選びに迷ったときは、次の3点を基準にすると良いでしょう。
- 商品のイメージに合っているか
- 魅力や特徴がしっかり伝わるか
- 購買意欲を駆り立てる演出になっているか
これらを意識することで、商品の魅力を最大限に引き出す写真に仕上げることができます。
カメラ設定を調整する
カメラの設定は、使用する機材によって調整方法が異なります。スマートフォンで物撮りする場合、一眼レフほどの高品質な撮影は難しいものの、機能をうまく活用することで十分に魅力的な写真を撮ることができます。例えば、ポートレートモードを使えば背景をぼかして被写体を際立たせることができ、露出補正を上げることで暗い環境でも明るく撮影できます。
一方で、より本格的な撮影を目指すなら、DSLR(デジタル一眼レフ)やミラーレスカメラの使用がおすすめです。このようなカメラなら、よりプロフェッショナルな写真を撮影できます。
DSLRカメラでおすすめの設定は次のとおりです。
- マニュアルモード:自分で露出や光加減をすべて調整できる機能。絞り値(F値)を調整することで被写界深度をコントロールし、背景をぼかすなど表現の幅を広げられる
- フォーカス設定:より精密なピント合わせが可能で、商品の細部や質感を表現するのに最適
- ISO感度:センサーの光に対する感度を調整する
- シャッタースピード:動きのある被写体を撮影する場合は速く設定し、ブレを防止する
商品やシーンに合わせて設定を柔軟に調整することで、商品の魅力をより鮮明に伝えることができます。
照明を補正する
自然光を活用して商品撮影する際は、反射と拡散の2つの方法で光の当たり方を調整すると、より美しい仕上がりになります。
反射
反射を活用して商品の暗くなっている部分に光を当てると、全体を明るく見せることができます。白い発泡スチロール、厚紙、または銀・金の反射板を利用するのが一般的です。
- 白色や金属製の素材:より多くの光を反射し、明るく自然な印象に
- 黒や濃い色の素材:光を吸収し、コントラストを強調したい場合に有効
反射板は光源(太陽や窓)の反対側に設置し、製品が均一に照らされるよう角度を変えて調整しましょう。
拡散
拡散は、直射日光など強い光をやわらげ、柔らかい印象に仕上げるための方法です。例えば、晴れた日の撮影では、光が強すぎて影がくっきり出ることがあります。その場合、窓の前に薄い白い布やトレーシングペーパーをかけることで光をやわらげ、全体を均一に照らすことができます。
例えばジュエリーなどの光沢のある商品は、宝石部分や金属部分に不要な反射や映り込みが発生しがちです。商品の魅力を正確に伝え、プロフェッショナルな仕上がりにするには、反射と拡散を上手に使い分けることが鍵となります。
異なる角度で試す
商品の魅力を最大に引き出せる角度を見つけることで、商品の印象をより際立たせることができます。商品のサイズや形状に応じてさまざまな角度で撮影しましょう。
例えば、靴のような高さがあまりない商品は、低い角度から撮影することで存在感を演出できます。低い角度のアングルは、力強さや高級感を表現したいブランドにもおすすめです。一方、高い角度のアングルは背の高い商品をコンパクトに見せたい場合や、テーブル上の商品をまとめて撮影する際に効果的です。
自然光で撮影する際は、角度によって影の出方が大きく変化する点にも注意しましょう。光の方向を意識しながら、角度や撮影位置を微調整して魅力的に見えるバランスを探ることが大切です。
異なるセッティングを試す
商品撮影では、まずシンプルなセッティングから始めましょう。平らな面と白い背景を用意できれば十分で、白い紙を敷いたテーブルや、白い壁を背景として利用するだけでもきれいに撮影できます。
基本的な写真が撮れたら、背景の色や小物を変えて演出を工夫してみましょう。さまざまな組み合わせを試すことで、自社ブランドに合ったスタイルを見つけることができます。例えば、香水を商品として取り扱っている場合、それぞれの香りに合わせた花や素材を背景に加えると、香りのイメージを視覚的に表現できます。こうした演出を取り入れることで、商品やブランドの世界観がより豊かに伝わり、見る人の印象にも残りやすくなります。
後処理で仕上げる
どれほど撮影がうまくいっても、SNSやウェブサイトに投稿する前の調整(後処理)は欠かせません。後処理では画像編集ソフトを活用して、トリミングや色補正、不要なホコリや光の反射、背景のノイズなどを取り除き、より完成度の高い画像に整えましょう。Adobe Lightroom(アドビライトルーム)などの有料ツールでは高性能な機能が充実していますが、無料の写真編集アプリでも十分に高品質な補正が可能です。
後処理は、コントラスト、露出、明るさのスライダーなどの簡単な調整から始めましょう。光のバランスや影の強さを整える調整は最後に行います。撮影時に気づかなかった小さなゴミや汚れも、ツールを利用して丁寧に修正することで、よりプロフェッショナルな仕上がりになります。
まとめ
自然光を活用した商品撮影には、人工照明では再現できない、その瞬間ならではの美しさがあります。撮影の際は、白い背景や商品の世界観に合う小物・素材を準備し、光のバランスがちょうど良くなる時間帯を選びましょう。また、光の強さや角度によって影の印象が変わるため、撮影場所となる窓際の位置を確認し、光を調整できるレースカーテンや遮光カーテンなども用意しておくと安心です。撮影した写真を掲載する際は、魅力的な商品コピーや丁寧な商品説明と組み合わせることで、顧客の関心を引きつけ、購入意欲の向上につなげることができます。
自然光での撮影に関するよくある質問
自然光で商品写真を撮影するコツは?
- よく晴れた日に、室内の窓際で撮影する
- 商品が引き立つ背景を選び、商品イメージに合う小物と組み合わせる
- 日光が強すぎる場合はカーテンやトレーシングペーパーを活用して光をやわらげる
- 商品が影で暗くなってしまう場合は、白い発泡スチロールなどを使って光を反射させる
- さまざまな角度で撮影し、商品の魅力が引き立つ角度を探る
- 画像編集ソフトを使って、不要なホコリや背景のノイズを取り除くなど、後処理を行う
自然光での商品撮影に必要なアイテムは?
- カメラ
- 三脚
- 撮影用テーブル
- 背景
これに加えて、レフ板またはその代わりとなるもの、白い布やトレーシングペーパーなどがあると光を自在に調整でき、より美しい写真に仕上げることができます。
自然光を利用した商品撮影に最適な時間帯はいつ?
自然光を利用した商品撮影に最適な時間帯は午前中です。色味に偏りが少なく、光が明るく柔らかいため、より自然な仕上がりの写真を撮影できます。
文:Momo Hidaka





