例えば、ビジネスが国際展開戦略に向けた準備が整い、明るい前途に胸が高鳴っているとします。ローカリゼーションや通貨の問題など、ほんの些細なことです。
「店舗が1つ増えるだけだから、問題ないよ」と、eコマースマネージャーの1人が言います。
すると、プロダクトマネージャーが口を開きます。「どうやって、今後2倍または3倍の商品情報を管理し、すべてを管理すればいいのですか?サードパーティのロジスティクスを使わずにどうやってやるつもりですか?」
もしかしたら、そのビジネスは限界を越えてしまったのかもしれません。
商品情報の手動管理は気が遠くなるような作業です。そこで、自動化システムの導入を決めました。国際展開を開始し、実装から1年が経過した頃、ついに問題が表面化しています。このような問題を実際に抱えているビジネスも多く存在しているでしょうし、今後おおいに起こり得ます。ですので、今こそ自社の商品情報管理の実施方法を評価する時です。
これはすべてのビジネスに共通する話です。
商品情報管理(PIM)システムとは?
商品情報管理(PIM)とは、さまざまなチャネルでマーケティングや販売を行うために商品データを管理するシステムです。すべての流通チャネルからの商品データを1か所に集約させます。
PIMシステムのインターフェースでは、一度にすべての商品情報を編集・管理できます(例:アイテム番号、参照、カタログ、SKUデータ、画像や動画、翻訳、ローカリゼーション、文書など)。
PIMソリューションは、内部のビジネスオペレーションからサプライヤー、製造業者、卸売業者、顧客に至るまで、さまざまな利害関係者に商品情報を提供できます。
多くの企業は、管理すべき商品が数千点ある場合にPIMを検討しますが、商品数が限られている店舗でもPIMシステムを使用することがあります。
一見、商品数が限られているように見えても、高い変数やカスタマイズがある場合や、国際展開時のローカリゼーションプロセスの一環として複数の店舗を設ける場合が考えられます。
目次
- 重要なPIM機能
- おすすめのPIMソフトウェア
- PIMソリューションを導入するメリット
- PIMとCRMの違いは何ですか?
- ShopifyはPIMシステムですか?
- ShopifyのPIMに関するFAQ
重要なPIM機能
ビジネスに合ったPIMを選ぶ際に注意すべき点がいくつかあります。
少なくともこれらの機能のいくつか(またはすべて)を備えているようなPIMシステムを選びましょう。
- 手動および自動の商品情報収集
- 複数のSKUを扱う能力
- アイテム情報のカスタマイズ可能なフィールド:商品説明、商品属性、サイズなど
- 代替品、交換部品、アクセサリーの管理能力
- ワークフローの自動化
- 各商品のコンテンツおよびマーケティング資料の管理
- CMS、IMS、ERP、3PLプロバイダー、およびeコマースエコシステムの他の部分との統合
- 異なる部門やサプライチェーンの各部分に対するカスタマイズ可能なワークフロー
基本的に、広範な商品ラインや複雑な商品タイプがある場合、PIMを利用することは間違いなく良いアイデアです。手動データ入力の手間を大幅に減らし、忙しい時に異なるSKUの混乱を防ぐことができます。
おすすめのPIMソフトウェア
Jasper PIM

Jasper PIM(日本語未対応)は、商品に関する重要な情報をすべて一つの強力なシステムに集約します。顧客向けには、各商品の画像、動画、マーケティング資料を保存し、裏側ではサプライヤー、在庫、カテゴリーデータを管理します。
Shopifyアプリであるため、Jasperはプラットフォームにうまく統合され、Shopifyストアに対して強化された検索機能や自動的な商品配信を提供します。
Jasperなら、以下のことが可能です。
- 異なる言語で複数のブランドや店舗を通じて同じ商品を提供
- eコマースプラットフォームに商品を自動的に配信
- 商品コンテンツの更新やプロモーション価格のスケジュール設定
- 商品を豊富なメディアコンテンツとともに整理
価格:月額99ドルから(約1.5万円)
Akeneo

Akeneo(日本語未対応)は、商品カタログ全体を整理し、充実させることを約束する広範な商品情報管理システムです。直接消費者向け、クリック&コレクト、または店舗からの出荷など、さまざまなビジネスニーズや戦略に対応するように設計されています。
AkeneoはオープンソースのSaaS PIMであり、スケールに応じたさまざまな価格オプションがあり、技術的なノウハウと手動のオンサイトインストールを必要とする無料オプションもあります。また、管理されたクラウド版のソフトウェアにサブスクリプションすることもできます。
Akeneoの無料PIMシステムには、期待される標準機能が含まれていますが、有料の成長版およびエンタープライズ版には以下の機能が含まれます。
- クラウドホスティング
- 自動化とガバナンス
- データ品質の向上
- 異なる場所に対するローカライズされた翻訳と測定
- サプライヤー管理ツール
価格:自分でオンサイトにインストールする場合は無料、または管理されたサブスクリプションで年間25,000ドル(約37万円)から。
Plytix

Plytix(英語サイト)は、チームのコラボレーションを念頭に置いて設計されており、誰もが適切な商品情報に適切なタイミングでアクセスできます。サプライから物流、販売、マーケティングまで、Plytixを使用することで商品の状態や仕様について混乱することはありません。
Plytixチームは、優れたUXとデザインを自負しています。このソフトウェアは、見た目も使いやすさも抜群です。eコマースビジネスシステムのバックエンドとしては稀有な存在かもしれません。
主な機能には以下が含まれます。
- 無制限のユーザー
- フィルターと強力な検索機能
- デジタル資産管理
- カスタム統合用のAPI
- 柔軟なバリエーション管理
価格:無料プランあり;スタンダードは月額330ドル(約5万円)、プロは月額1,200ドル(約18万円)。
Sales Layer

Sales Layer(日本語未対応)は、商品マーケター向けのクラウドベースの商品情報管理システムです。
特にユーザーフレンドリーなPIMプラットフォームで、正確なコンテンツとデータを提供することで顧客体験を向上できます。
Sales LayerのPIMは、分析に特に重点を置いています。商品情報の品質を分析して、カタログに欠落や不正確なデータがないことを確認できます。これは、複雑な商品ラインにとって非常に役立ちます。
機能には以下が含まれます、
- リアルタイムデータ更新
- カタログ状況レポート
- デジタル資産管理
- ワークフローの設計と管理
価格:カスタム価格はリクエストに応じて提供。
Catsy

Catsy(英語サイト)は、カタログ作成を支援する使いやすい商品データ管理プラットフォームです。深くカスタマイズ可能なデータベース機能を使用して、フライヤー、価格表、仕様シート、カタログなどを作成できます。インポートウィザードにより、新しい商品やコンテンツを不必要な手動入力なしで追加することが簡単です。
主に実店舗や通信販売業者向けに設計されていますが、多くの商品の集約管理を求めているなら、検討する価値があります。機能には以下が含まれます。
- 自動カタログ作成
- 事前設計されたテンプレート
- カタログスタイルのカスタマイズ
- さまざまなマーケティング資料にデータを供給可能
- 多くのフォーマットやデータタイプをサポート
- 優れたカスタマーサポート
価格:カスタム価格はリクエストに応じて提供。
Salsify

Salsify(英語サイト)は、商品データを「デジタルシェルフ」全体に供給するPIMです。これは、消費者が購入に至るまでに経由するさまざまな接点です。
Salsifyによれば、「商品情報は新しいブランドである」とのことで、情報の質を非常に重視しています。
Salsifyは、商品体験管理(ProductXM)としてPIMをブランド化しています。なぜなら、提供されるデータが最終顧客体験にとって非常に重要だからです。これは、より広範なオプションの一つであり、大手ブランドメーカー、小売業者、流通業者を対象としています。
機能には以下が含まれます。
- カスタムテンプレートによるコンテンツ生成の強化
- データインポートの簡素化
- 自動データ管理ワークフロー
- システム全体でデータ品質の基準を維持
- 定期的な更新を行う安全なSaaSベースのアーキテクチャ
価格:カスタム価格はリクエストに応じて提供。
PIMソリューションを導入するメリット
手動データ入力の削減による時間効率
PIMの利点として、時間の節約があります。手動データ入力や、時間のかかる検索作業をもどかしく感じているチームは多いでしょう。
アブラハム・ジョルジ著の『商品情報管理:理論と実践(Product Information Management: Theory and Practice)』 によれば、「SKUごとに年間25分が手動でのアイテムデータクリーニングに費やされている。しかし、自動同期することで4分に短縮できる。これは、10,000SKUあたり20人月分に相当する」
また、ジョルジは次のようにも述べています。「PIMシステム導入前、製造業の従業員の17%未満が商品を探すのに週に2時間未満を費やしていた。導入後、この割合は36%に増加した。小売業者では、47%から58%への増加を実現した」
一貫性があり、正確な情報
運用面および利益面から見ても、PIMの利点は大きいです。
「Aberdeenの調査によれば、労働コストが67%減少している。同様に、Yankee Groupは従業員の生産性が20%向上したと報告している」と同氏は述べています。
さらにこう続けています。「しかし、私たちのケーススタディでは、コスト削減が実現されているとは見ていない。上記のコスト削減は有効だが、実際にはPIMシステムの導入が運用コストを削減することは稀である。コスト削減は通常、より良い、より完全な商品情報の作成や、ロングテール戦略の支援に直接投資される」
これは、ほとんどの企業が多くの不正確なデータを抱えているためです。River Sand Solutionsの推定では、製薬メーカー、流通業者、提供者のデータの不正確率は30%としています。
さらに、厄介な事実があります。
ジョルジは、この不正確さがすべてのデータに当てはまると指摘しています。AT Kearneyの推定によると、「卸売業者や製造業者からのすべての商品データの30%には少なくとも1つの誤りが含まれいる。修正のコストは商品ごとに60ユーロ(約9600円)から80ユーロ(約1.2万円)の間と推定されている」とされています。
Jasper Studiosの創設者兼CEOジョン・マルセラは、不正確なデータについて次のように述べています。「ほとんどの場合、データは整理されていない。複雑で、統制もとれていなければ、一貫性も欠如している」
チームはデータ入力の時間を節約できるかもしれませんが、その時間は情報のクリーニングに再投資されるだけです。PIMを集約管理することで、あとはデータをできるだけ正確に保つことに専念すればいいのです。
改善された物流によるコスト削減
情報の正確性が向上すると、投資収益率が得られ、コスト削減につながります。ジョルジによると、PIMに投資している企業は、商品の返品が最大23%減少するとされています。
Yankee Groupのシニアアナリスト、コシン・ファンはこの発見をさらに裏付けます。「PIMを導入した企業では、年間の平均25%のビジネス改善を実現している。…サプライヤーもPIMの影響を認識し、サプライチェーンの成功を明確に示すために、小売業者に対して自社のPIM IT戦略を使用している」
PIMとCRMの違いは何ですか?
PIMと顧客関係管理(CRM)システムの違いは、管理するデータにあります。
CRMは顧客情報を管理します。ここではすべての顧客関連のデータを収集・整理します。
リード情報から、購入を経て、忠実なリピートバイヤーになるまでのプロセスなどの情報を含みます。CRMの目的は、あなたから購入する人々との関係を理解し、強化することです。
PIMは商品情報を扱います。PIMは、商品自体に関するすべてを、広範で接続されたデータベースに保存し、管理するために設計されています。商品の技術仕様、カテゴリ情報、コンテンツやメタデータ、その他の関連データのバリエーションが含まれます。
全体的な意図は、各個別商品に関する真実の唯一の情報源となることであり、他のシステムが情報を受け取ることができるようにすることです。たとえば、eコマースサイトの商品ページなどです。
CRMとPIMは、共存することができます。両者は、ビジネス全体のデータを整理することを指すマスターデータ管理(MDM)のサブセットです。
データを交換し、効率的な店舗管理システムを提供するために協力することができます。
ShopifyはPIMシステムですか?
Shopify自体はPIMシステムではありませんが、PIMの統合の相性は抜群です。
Shopifyは、繁栄するeコマースストアを運営するためのプラットフォームとツールのセットです。しかし、商品ライン全体の中央リポジトリとして機能するわけではありません。代わりに、PIMを使用する場合、Shopifyはそのデータを活用し、店舗に持ち込むことができます。
Shopifyは、コンテンツ管理ソリューションとして設計されていません。よって、オムニチャネルアプローチがさまざまな流通チャネルを通じて多くの異なる写真、動画、メタデータを必要とする場合、PIM導入を検討しましょう。
Shopifyを利用中で、PIMを使用する価値があると思うなら、上記にリストされたシステムを試してみることをお勧めします。
しかし、本当の問題は… PIMが過度に単純化されていること
この記事を書き始めた時、尊敬する同僚の一人が警告しました。「ほとんどの人はPIMに対して過度に単純化された世界観を持っている。私たちは陳腐な記事を書いて、問題を単純化すべきではない」
その通りです。
Jasperのジョン・マルセラは言います。「企業が自分たちでPIMを実装しようとするとき、商品のリーチがどれほど深く広がっているか、どれだけの手動プロセスを使用しているかを正しく理解できていない」
「そして、これらの要素との統合にどれだけの作業が必要かを措定していない。私たちが出会うクライアントや見込み客のほとんどは、商品があちこちに散らばっている。時には十箇所以上の場所に散乱していて、管理部門もばらばらである」
これはすべての規模の組織に当てはまります。同氏は続けます。「小規模な組織でも、いくつかのことを過小評価するかもしれません。たとえば、PIMを効果的にするために必要な接点の数、PIMを運営の中心にするために必要な接点の数を理解することだ。これは、私たちの見解では、アーキテクチャの観点からは最良の方法である」
具体的には、商品の分類、商品のマッピング、商品の親子関係の複雑さ、商品のバンドル、割引など、さまざま挙げられます。そして、eBayやAmazonなどのオンラインマーケットプレイスの販売チャネルでの制約も考えられます。
同氏は言います。「企業が自分たちのPIMを実装しようとするとき、接点やコネクタの実装方法も考慮しなければならない」
さらに、PIMは、単なる組織の問題への技術的な解決策ではありません。成功するPIMの実装には、企業が情報の流れを管理する方法を再考する必要があり、チームのコミュニケーションワークフローを試すことになります。
アーンスト・アンド・ヤングのプリンシパル、カン・A・ドガンは、『Supply Chain Quarterly』において、企業が在庫管理の目標を達成に向けて取り組む際、技術の役割を過大評価する傾向があることについて書いています。
「業界には、プロセス、ポリシー、人的スキル、組織設計、データの信頼性、メトリクス、分析、報告などの重要な要素を軽視し、主に技術の有効性に焦点を当てた企業があふれています。これらの企業は、最良の場合でも、システムが完全に活用されることはなく、最悪の場合には時間とともに単に放棄されることになります」
あなたの企業が同じ運命を辿ることを避けられるようにしてください。
PIMをビジネスパフォーマンスの推進力として
PIMにかかるコストを最小限に抑えたいと考える企業が大半です。そして、情報の精度に伴う驚異的なコスト削減を考えると、それは不合理な提案ではありません。
しかし、PIMは供給チェーン機能としてだけでなく、ビジネスパフォーマンスを推進する資産として使用されると、その潜在能力を最大限に発揮します。
マルセラが前述したように、その利点には、以前はアクセスできなかった市場やスペースの拡大、商品を市場に迅速に投入すること(平均して4倍の速さ)、またはチーム全体や他の関係者に文書や出版物への簡単なアクセスを提供すること、デジタルマーケティングやソーシャルキャンペーンを自動化することによるマーケティングの支援などがあります。
ShopifyにおけるPIMに関するFAQ
eコマースPIMとは何ですか?
eコマースPIM、商品情報管理とは、商品カタログを保存し作成するアプリケーションで、店舗の販売チャネル全体に配布できます。
PIMはeコマースストアに何をすべきですか?
PIMはCMS、ERP、3PLと統合し、商品のコンテンツを管理し、自動ワークフローを作成し、多くのSKUを扱い、商品カスタマイズ用の多くのフィールドを持つべきです。
最良のPIMソフトウェアは何ですか?
例えば、以下のようなPIMソフトウェアがあります。
- Jasper
- Akeneo
- Plytix
- Sales Layer
- Catsy
- Salsify
それぞれのニーズや、ソフトウェアが提供するユニークな機能を考慮し、ぴったりのPIMを選択してください。





