ECショップで発行するギフトカードは、新規顧客の獲得や既存顧客の維持、キャンペーンや特別対応など、販促から顧客満足度の向上まで幅広く役立つ強力なツールです。Shopify(ショッピファイ)で構築したECサイトなら、標準機能としてギフトカードを簡単に発行でき、運用や管理もスムーズに行えます。本記事では、Shopifyにおけるギフトカードの具体的な発行手順から、活用方法、管理のポイント、便利な関連アプリまでをわかりやすくご紹介します。
Shopifyのギフトカードとは

Shopifyのギフトカードは、オンラインストアで現金と同じように利用できるデジタル形式のプリペイドカードです。発行時に付与されるコードをチェックアウト画面で入力するだけで決済に利用でき、残高は次回以降の購入に繰り越せます。利用はオンラインストアだけでなく、ほかのサイトに貼り付けた購入ボタンや、Facebookショップ、Messenger(メッセンジャー)、そして実店舗のShopify POSでも可能です。
ギフトカードの用途は幅広く、贈答用に利用したい顧客に商品として販売することも、キャンペーンやお詫び対応として店舗から顧客に無償配布することも可能です。導入によって新規顧客の獲得、リピーター育成、返金処理の柔軟化など、EC運営にさまざまなメリットをもたらします。
なお、割引クーポンとの違いとして、ギフトカードは「金券」として販売できる点や、原則的に利用条件を細かく制御できない点が挙げられます。クーポンは販売不可ですが、適用商品や購入金額に応じた条件を設定できます。それぞれの特徴を理解して使い分けることが、プロモーションと収益向上に効果を発揮します。
Shopifyギフトカードの作成方法

Shopifyでギフトカードを提供する方法には、商品としての販売と無料配布の2つがあります。ここではそれぞれの作成手順を紹介します。
商品として作成する場合
Shopifyでは、通常の商品と同じようにギフトカードを販売用の商品として追加できます。管理画面から設定するだけで、ストアの商品ページにギフトカードを表示し、顧客が購入できるようになります。
ギフトカード商品を追加する手順
- 管理画面にログインする
- 左側メニューの「商品管理」から「ギフトカード」を選択
- 画面上部の「ギフトカード商品を追加」をクリックし、作成画面に進む
- 各項目を入力する
タイトル:商品名(例:「ホリデーギフトカード」「誕生日ギフトカード」)
説明:ストアに表示するギフトカードの商品説明文
メディア:ギフトカードの画像(券面デザインなどをアップロード可能)
金額:額面金額を設定。固定額に加えて「金額を追加」から自由設定も可能
検索結果の表示:検索エンジンに表示されるタイトル・概要・URLを設定
ステータス:有効/下書きを選択
公開設定:オンラインストアやSNS、POSなど販売チャネルを指定し、公開日時も予約可能
商品整理:商品タイプ・コレクション・タグなどを設定
テンプレート:商品ページのテーマテンプレート、顧客向けのギフトカードテンプレートを選択 - 入力が完了したら、画面右上の [ギフトカード商品を保存する] をクリック
- 作成されたギフトカード商品は、通常の商品と同じように「商品管理」から確認・編集可能
- 公開する場合は、商品ページで [販売チャネル] を選択し、利用可能にしたいチャネルを指定して保存
サードパーティーアプリで作成する方法
標準機能に加えて、Shopify App Storeで提供されているサードパーティーアプリを利用すると、より柔軟なギフトカード販売が可能になります。たとえば、オリジナルデザインのテンプレートや多様な額面設定、購入後の自動メール送信、ブランドに合わせたカスタマイズ機能などを追加できます。標準機能では対応しきれないデザインや運用面を強化したい場合に役立ちます。
無料で配布する場合
Shopifyでは、販売用の商品として登録するだけでなく、特定の顧客にギフトカードを無料で発行して配布することもできます。お詫びやキャンペーン、VIP顧客への特別対応などに活用できます。
無料配布するギフトカードの作成手順
- 管理画面にログインする
- 左側メニューの「商品管理」から「ギフトカード」を選択
- 「ギフトカード」ページ右上の [ギフトカードを作成] をクリック
- 金額を入力し、配布したいギフトカードの額面を設定
- お客様を選択する(名前・電話番号・メールアドレスで検索または新規登録)
- ギフトカードコードはメールまたはSMSで送信可能
- 両方の連絡先が登録済みの場合は、メールが優先される
- 必要に応じて 有効期限を設定する
- 内部メモを入力する(管理画面で参照用に表示されるが、顧客には非表示)
- メールをプレビューして送信内容を確認
- 保存をクリックするとギフトカードが発行される
ギフトカードの配布は、保存と同時に顧客へメール送信する方法と、いったん保存した後にコードをコピーしてSNSやメールなどで手動送信する方法があります。発行済みのギフトカードは「詳細画面」から確認でき、過去に商品を購入した顧客を選んで再度配布することも可能です。
Shopifyギフトカードの管理

発行したギフトカードは、管理画面から残高や有効期限を確認したり、再発行・キャンセルを行ったりすることができます。さらにレポート機能を活用することで、販売状況や未使用残高を把握できます。
残高確認の方法
管理画面の [商品管理] > [ギフトカード] に移動すると、発行済みのギフトカード一覧が表示されます。ここから顧客情報、残高、発行日などを確認できます。有効なギフトカードは、今後ストアに新しく追加される商品に対しても利用可能です。
有効期限の設定
ギフトカードには有効期限を設定することができます。ただし、ギフトカードや金券には有効期限に関する規制が設けられている場合もあるため、利用者の利便性を考慮するのはもちろん、販売先の国や地域を確認した上で設定する必要があります。詳しくは、後述の有効期限に関する注意点もご覧ください。
再発行・キャンセル対応
過去に発行したギフトカードは、一覧画面から再送信や無効化が可能です。
- 再送信:対象のギフトカードを選び「ギフトカードを送る」をクリックすると、顧客に再送信できます。
- 無効化:キャンペーン終了などで利用を止めたい場合、対象カードを選んで「選択したギフトカードを無効化する」をクリックします。無効化は、誤送信や不正利用への対応にも役立ちます。
レポートや分析機能
Shopifyにはギフトカード専用のレポートが用意されています。
- 販売レポート:販売日、注文番号、顧客名、額面、適用ディスカウント、販売合計などを確認可能。無料配布分は対象外です。
- 未使用残高レポート:開始残高、発行・販売・無効化された金額、返金処理、調整額、終了残高を日ごとに確認できます。
これらのレポートを活用することで、発行済みカードの残高総額や販売状況を把握でき、資金管理やマーケティングの判断に役立ちます。
Shopifyギフトカードの活用方法

季節イベントやセールでの販売促進
ホリデーシーズンやバレンタイン、ホワイトデーといったギフト需要が高まる時期には、ギフトカードを商品ラインナップに加えることで売上の底上げにつながります。セールや限定キャンペーンと組み合わせれば、より多くの顧客に利用してもらえます。
新規顧客の獲得ツールとして利用
ギフトカードは、既存顧客が友人や家族に贈ることで、ブランドを知らなかった層にアプローチできる有効な手段です。特に誕生日や記念日などのタイミングで利用されやすく、新しい顧客を獲得するきっかけになります。さらに、初回購入特典や送料無料などを合わせることで、購入ハードルを下げ、定着につなげることもできます。
ロイヤルティプログラムの一環
特別な顧客へのギフトや、継続購入へのインセンティブとしてギフトカードを配布することで、リピーター育成を促進できます。顧客満足度を高め、ブランドへのロイヤルティ強化に役立ちます。
法人向け利用
企業が従業員向けの福利厚生や販促用のノベルティとしてギフトカードを配布する活用法も広がっています。デジタルギフトカードは現物のカードよりも取扱いが容易なためプレゼントに適しています。
Shopifyギフトカードの注意点

ギフトカードを導入する際には、いくつかの運用上の注意点も理解しておく必要があります。
使用方法に関する注意
- ギフトカードを利用するには、チェックアウト時にコードを入力する必要があります。
- 残高が購入金額を下回る場合は、差額を別の決済方法で支払う必要があります。
- サブスクリプション商品への利用は制限があり、初回購入時には利用できても定期課金には対応していないケースがあります。
購入した本人にメールが届く
ギフトカードをプレゼント目的で購入しても、デフォルトでは購入者本人にメールが届きます。受取人を直接指定したい場合は、テーマのカスタマイズや専用アプリの導入が必要です。
有効期限や返金規制への対応
国や地域によってギフトカードの有効期限や返金に関する規制が異なります。「ギフトカードの有効期限を設けてはならない」などの規制が設けられている場合があるため、特に越境ECでは注意が必要です。
日本では現状、ギフトカードの有効期限設定に関する規制はありませんが、有効期限が6カ月を超える場合、「資金決済に関する法律」が適用され、期限切れの場合の払い戻し義務が発生します。法令を確認した上で、利用者の利便性を考慮して有効期限を設定しましょう。
転売・不正利用リスク
コードの転売や流出といった不正利用リスクがあります。必要に応じてギフトカードを無効化できる運用体制を整えておくと安心です。
会計処理・税務上の注意点
ギフトカードは販売時点で収益が得られるため資金の調達方法としても活用できますが、税務処理上では売上分と同額の負債を計上するといった処理が行われます。一方、消費税は原則として「商品と引き換えられた時点」で発生するため、口座に収入が入ってくるタイミングよりもかなり遅れて消費税の支払いが発生するかもしれない点などに、注意が必要です。
ギフトカード関連アプリの紹介
Shopifyのギフトカード機能を補強したり、顧客体験を向上させたりできるアプリを紹介します。いずれも日本語対応しており、国内の事業者でも安心して利用できます。
Givy: ギフトとギフトカード
特徴
ストアで販売されている商品を、顧客が自由にプレゼントとして他の人へ贈れるようになるアプリです。ギフトカードでは、金額を選択肢から選ぶだけではなく、顧客が「カスタム金額」として任意の金額を指定することもできます。
機能概要
- ギフトカードに限定せず、あらゆる製品をギフト化
- 顧客がカスタム金額でギフトカードの額面を指定可能
- バルクギフトカード機能で多数のカードを一括作成
- 多通貨、多言語対応
- ECストアのブランドにマッチしたブランディングとスタイリング
費用
- スターター:月額 $14、手数料2%
- グロウス:月額 $99、手数料1%
All in Gift(eギフト・熨斗・ラッピング対応)
特徴
お届け先を指定する「通常ギフト」のほか、住所がわからない人にも贈れる「eギフト」に対応したアプリです。ギフトカードと組み合わせることで、受け取った相手が新たな顧客になる効果も見込むことができます。
機能概要
- 住所を知らない相手にギフトが贈れるeギフト(SNSギフト)の受取り URL の発行が可能
- 有名人やインフルエンサーにもギフトを贈れる、お届け先住所の匿名化
費用
- 通常ギフト/eギフト:月額 $9.90
- eギフトPRO:月額 $49
Gift Card Pro
特徴
ギフトカードに多彩な演出を加えられる拡張アプリです。ギフトカードを購入した顧客が、書面や動画によるギフトメッセージやデザインテンプレートを選択して受け取る相手へ送信できるようになります。
機能概要
- ギフトカード受領者へのあいさつメッセージとビデオメッセージの録画のオプション付き
- ギフトカードはメールまたはテキストメッセージで送信。送信日時の指定も可能
- 複数オーダー、残高確認、在庫切れ対応、多通貨/多言語対応、金額指定など
費用
- 月額 $9.99〜 $499.99(4段階の価格設定)
Gift Cards Suite + AI
特徴
AIを活用してギフトカード商品のデザインをカスタマイズできるようになるアプリです。店舗管理者だけでなく、顧客も個別にデザインをカスタマイズできます。また、ギフトカードのプロモーションや残高確認が可能となるウィジェット機能も提供されます。
機能概要
- AIを活用したデザインでユニークなギフトカードを作成
- ギフトカード管理機能でギフトカードの編集、追跡、分析を簡単に実行
- CSVアップロードまたはUIを通じて複数のギフトカードを一括生成
- 未使用または期限切れ間近のギフトカードに関する顧客アラートを自動化
- ギフトカードの注文を自動処理し、払い戻しを管理
費用
- 月額 $6.99〜$123.99(4段階の価格設定)
BOGOS: Free Gift Bundle Upsell
特徴
「一定金額以上でおまけをプレゼント」「バンドル割引」など、アップセルやクロスセル、販促を強化する機能を備えています。プレゼントやバンドルの対象商品としてギフトカードを設定することで、リピーターの獲得やお試し購入といった施策につなげることができます。
機能概要
- BOGO、購入特典、バンドル、ミックス&マッチ、アップセルに対応
- 簡単特典:自動追加、ギフトスライダー、バンドル、アップセル
- 直感的&自由にカスタム可能なUI:特典、バンドル、割引、追加販売
費用
- 無料プランあり
- 有料プランは、月額$29.99〜$99.99(3段階の価格設定)
まとめ
Shopifyのギフトカードは、顧客がオンラインストアや実店舗で現金と同じように利用できる便利な機能です。販売用の商品として登録して顧客に購入してもらう方法と、特定の顧客に無料で配布する方法の2つがあり、いずれも管理画面から簡単に作成できます。発行後は残高や有効期限を管理し、必要に応じて再送信や無効化を行うことができ、専用レポートを使えば販売状況や未使用残高の把握も可能です。
また、ギフトカードは季節イベントやセールでのデジタルマーケティング、新規顧客の獲得、リピーター育成、法人向けの福利厚生や景品など幅広い場面で活用できます。ただし、使用条件やメール送信仕様、有効期限や不正利用への対応、会計処理といった注意点を理解したうえで導入することが大切です。
さらに、アプリを活用することで標準機能を超えた柔軟な運用が可能になります。ギフトカードのデザインカスタムや多様な販売方法、残高通知やバンドル施策など、それぞれのアプリが提供する機能を組み合わせることで、自社のニーズに合ったギフトカード戦略を構築できます。まずは標準機能を利用し、必要に応じてアプリを追加することで、効率的かつ効果的にギフトカードを運用できるでしょう。
デジタルギフトカードは、売り上げ、顧客ロイヤルティ、ブランド認知度を高めるための効果的なツールです。Shopifyを使えば、デジタルギフトカードの作成と販売はとても簡単です。
Shopifyギフトカードのよくある質問
Shopifyでギフトカードを作る手順は?
Shopifyでは、商品として販売する方法と、特定の顧客に無料で配布する方法のいずれかでギフトカードを提供することができます。どちらも管理画面の「ギフトカード」メニューから操作しますが、商品として作成する場合は新しい商品を追加する手順に近く、無料配布する場合は顧客を指定してギフトカードを発行する手順になります。
Shopifyギフトカードの活用方法は?
ギフトカードは通常の商品と同じように販売でき、売上や利益を高める手段となります。また、季節イベントやセールでの販促、新規顧客の獲得やリピーターの育成にも効果的です。さらに、無料配布で活用すれば、キャンペーンやお詫び対応、VIP顧客への特別な対応にも役立ちます。
Shopifyギフトカード対応のアプリで何ができる?
アプリを利用することで、標準機能だけでは難しい柔軟な運用が可能になります。例えば、ギフトカードのデザインを自由にカスタマイズしたり、メッセージや動画を添えて送信したり、残高確認や通知を自動化することができます。また、購入特典やバンドル販売など、販促施策と組み合わせて活用することも可能です。
Shopifyのギフトカードとクーポンの違いは?
ギフトカードは金券として販売でき、現金と同じように利用されます。一方、クーポンは割引を提供するもので、販売することはできません。また、クーポンには特定商品や購入金額など条件を設定できますが、ギフトカードにはそのような制限は原則ありません。
文:Norio Aoki





