ECサイトで商品を購入する際、多くの人が事前に公式サイトをチェックしてレビューを読んだり、ほかの商品と比較したりしています。そのため、商品を知ってから購入に至るまでの顧客行動や心理を理解するのは、ECサイトの集客や売り上げを改善するために不可欠です。
しかし、複数の段階があるカスタマージャーニーを理解するのは簡単ではありません。そこで重要となるのが、ECファネルという概念です。
この記事では、ECファネルとは何かをわかりやすく解説し、各段階で効果的なファネルを構築する方法を紹介します。ECサイトのコンバージョン率を高めたい方に役立つ内容になっていますので、ぜひ参考にしてください。
ECのファネルとは?

ECファネルとは、ECサイトで顧客が購入に至るまでの過程をファネル(漏斗)の形に置き換えて段階的に捉える考え方です。各段階での顧客の行動や心理を分析するために活用されます。一般的には認知、興味関心、検討、購入完了といった段階に分けられますが、事業の形態やECサイトの特性によって定義や段階数は異なる場合があります。
「ファネル」という表現が使われるのは、段階が進むにつれて顧客数が減っていく様子をイメージしやすいためです。たとえば100万人がブランドを認知しても、購入に至るのは一部に絞られます。さらに、その中でレビュー投稿やリピート購入まで行う人はさらに少数です。このように、各段階で人数が減少する様子を漏斗に例えて表現します。
ECファネルはただの概念ではなく、マーケティング戦略の策定や改善に役立ちます。各段階での離脱率やコンバージョン率を把握することで、「どこで顧客が離脱しているのか」や「どの段階で購買意欲が高まっているのか」を明確にできます。その結果を踏まえて適切な施策を講じれば、売上アップや顧客体験の改善につなげられます。
ECファネルの4つの段階

ECファネルは、一般的に下記の4段階に分かれます。
1. 認知段階
認知段階は、人々がブランドや商品について初めて知る段階です。この段階では、人々に商品やサービスを認識してもらうためのマーケティングが求められます。認知を目的としたマーケティングの例としては、Facebook(フェイスブック)広告やInstagram(インスタグラム)広告といったSNS広告、検索キーワードに基づくGoogle(グーグル)広告などの検索エンジン広告、アフィリエイト施策、拡散を狙ったSNS投稿などが挙げられます。
認知度を効果的に高めるために、マーケティングを実施する際は次の2点を意識しましょう。
- 購買意欲を持つ可能性がある人々にリーチすること
- 思わず行動したくなるような理由を提示し、広告クリックやコンテンツ共有といった次の行動を促すこと
これらの行動が起きれば、その時点で見込み顧客は商品やサービスに興味関心を持ち、ECファネルの次の段階へ移ったといえるでしょう。
2. 興味関心段階
興味関心段階では、人々は商品説明を読み込むといった購買に向けた行動を取り始めます。その際、見込み顧客は次のような疑問を持っています。
- この商品は自分に必要なのか
- このブランドは自分に合っているのか
- この商品は自分に適しているのか
興味関心段階で重要なのは、顧客の抱える悩みを理解し、自社商品がそれを解決できると伝えることです。そのためには、商品をさらに詳しく調べてもらえるように見込み客に働きかける必要があります。
具体的には、商品ページに高画質な写真を追加する、既存顧客にレビューを依頼して信頼性(ソーシャルプルーフ)を高める、比較記事などのコンテンツマーケティングを行うといった施策があります。ほかにも、ECサイトの訪問者を対象にしたリターゲティング広告や既存購読者へのニュースレター配信、インフルエンサーに商品を送ってレビューしてもらうキャンペーンなどが有効です。
3. 検討段階
検討段階では、見込み顧客は購入すべきかどうかを迷っています。この段階の目標は、悩むのをやめさせて今すぐ購入してもらうことです。顧客が購入に進めない懸念には、以下のようなものがあります。
- 今、この商品が必要なのか
- 価格が高すぎる
- 送料が高すぎる
- 配送日が遅すぎる
- 品質が期待どおりではない可能性がある
これらを解消できるマーケティング施策には、期間限定セールや送料無料キャンペーン、カゴ落ちメールの配信、見込み顧客がすぐ相談できるチャットサポート、返品ポリシーの明示、数量限定販売などがあります。
4. 購入完了段階
購入完了段階は、顧客が決済を完了させ、商品を受け取ることで購買行動が完結した段階です。この段階では、顧客がリピート購入や商品のレビュー投稿、知り合いへの紹介といった行動を起こしたくなるように働きかけます。
多くの人は「購入されたらファネルは終わり」と考えがちですが、購入した顧客への働きかけはマーケティング活動の中でも特に投資利益率(ROI)が高い施策となる可能性があるため、注力する価値があります。
具体的なアプローチは、目的ごとに分けられます。
- リピート購入:SNSやディスプレイ広告でのリターゲティング、クロスセルを狙ったメール配信、サンクスページでのアップセル、ロイヤルティプログラムなどが有効です。
- レビュー投稿:フォローアップメールの配信や、商品パッケージに同梱するカード、コンテストなどのSNS上のキャンペーンを通じてレビュー投稿を促進できます。
- 知り合いへの紹介:知り合いに紹介すると、次回利用できるクーポンを獲得できるなどのリファラル制度を活用する方法があります。また、SNSに投稿しやすい仕組みを設ける手法もあります。たとえば購入後の画面に「SNSでシェアすると次回10%OFF」などのシェアボタンを設置したり、パッケージデザインをおしゃれにして開封体験をシェアしたくなるようにしたりといった工夫が考えられます。
ECサイトファネルの測定方法:3つの代表的アプローチ

ファネルの図を見ると、顧客が上から下へ直線的に進む単純なイメージを持ちがちです。しかし、実際のカスタマージャーニーは、購入前に何十回も商品やブランドと接点を持つ顧客もいれば、友人の紹介をきっかけに即座に購入に至る顧客もいるなど複雑です。
そのため、さまざまなファネル分析方法がありますが、大きく分けると3つの代表的アプローチがあります。
1. KPIを基にした測定
この方法では、ファネルの各段階にKPI(重要業績評価指標)を設定し、その数値をどれだけ改善できたかでマーケティング施策を評価します。ECサイトのKPIの具体例としては、次のようなものが挙げられます。
- 認知:セッション数、新規ユーザー数、商品ページ閲覧数
- 興味関心:リピーター数、顧客レビュー数、比較ページへの訪問数
- 検討・購入:カート追加数、コンバージョン率、カゴ落ちからの回復件数
- 購入後:リピーターからの売り上げ、顧客紹介による売り上げ
KPIを基にした測定では、最終的なゴールは総売上です。たとえば、新規ユーザー数が増えれば、購入につながる人も増えて売り上げがアップします。こうした各段階のKPIはすべて、最終的には売り上げに影響する指標として位置づけられます。最もシンプルな方法ですが、個別の施策ごとの効果を把握しづらいという課題もあります。
2. キャンペーンを活用した測定
キャンペーンを活用した測定では、個々のキャンペーンをファネルの段階ごとに分類し、それぞれのキャンペーンに応じた指標で分析します。たとえば、ある広告やメールキャンペーンを認知段階としてラベル付けし、その効果をリーチ数、カート追加数、売り上げなどで評価します。一方で、別の広告やメールキャンペーンを興味関心段階とし、同様に指標を設定して測定するといった具合です。
この方法の利点は、個々のマーケティング施策を相互に比較・追跡しやすい点にあります。ただし、施策ごとに異なる指標が用いられるため、ファネルの各段階で最も重視すべき指標(北極星指標)を定めづらいという課題もあります。
3. アトリビューションを基準にした測定
この方法では、キャンペーンを段階ごとに分類する点は同じですが、複数のKPIを追う代わりにアトリビューション(売り上げへの貢献度)だけを測定します。具体的には、顧客がどのように広告やメールなどに触れたかなどの記録を確認し、それぞれの接点が売り上げにどれだけ貢献したのかを判断します。
たとえば、ある顧客のカスタマージャーニーが次のように示されたとします。
- 広告を閲覧した
- その後、ECサイトを訪問した
- 商品をカートに入れたが離脱した
- その後、カゴ落ちメールを受け取って開封した
- 最終的に購入に至った
この場合、購入には広告とカゴ落ちメールの両方が影響しています。仮に売り上げが6,000円であれば、それぞれが売り上げに3,000円ずつ貢献したとみなして分配する(アトリビューション)のが一般的です。
この測定方法を実現するには、ECサイトや広告媒体、メール配信ツールなど複数のデータを統合する必要があるため、多くの場合データエンジニアやテクニカルマーケターの関与が必要になります。手間はかかるものの、一度構築すればファネル全体のパフォーマンスを最も包括的に把握できる方法となるでしょう。
まとめ
ECサイトのマーケティング戦略やコンテンツを計画する際、ECファネルは有効なフレームワークになります。EC事業者にとって、顧客理解ほど重要なことはありません。ECファネルを活用し、顧客が何を考えているのか、そしてどのようにアプローチすべきかを把握しましょう。
Shopify(ショッピファイ)には、ECサイトを訪れた人数や各チャネルからの流入数・売り上げといったデータを把握できるレポート機能があり、ECファイネルの測定に役立てられます。無料体験も実施していますので、ECファネルを活用してマーケティング戦略を策定したい方は、ぜひ活用してください。
ECファネルに関するよくある質問
ECファネルとは?
ECファネルとは、ECサイトで顧客が購入に至るまでの過程をファネル(漏斗)の形に置き換えて説明した考え方のことです。一般的には、認知、興味関心、検討、購入の段階で構成されます。ECファネルの目的は、人々に商品を知ってもらい、信頼関係を築きながら、最終的に購入につなげることです。
ECファネルの4つの主な要素は?
- 認知:ファネルの最上部で、見込み顧客が商品やサービスの存在を知り、理解を深める段階
- 興味関心:ファネルの中間で、顧客が商品やサービスに関心を持ち、行動を起こし始める段階
- 検討:ファネルの下部で、購入を具体的に検討し、意思決定を行う段階
- 購入:ファネルの最下部で、実際に商品やサービスを購入する段階
セースルファネルとは?
セールスファネルとは、顧客がブランドを認知してから購入を完了するまでの流れを図式化したものです。ECサイトのセースルファネルを最適化することで、売り上げや収益を増加させるだけでなく、リピート顧客の獲得にも役立ちます。
効果的なECファネルを作成するためには?
効果的なECファネルを作成するには、離脱率が最も高い段階を特定し、課題に応じた施策を行うことが必要です。代表的な施策には、顧客を惹きつけるパーソナライズされたコンテンツの作成や顧客体験の改善、リターゲティング広告による離脱顧客の呼び戻しなどがあります。これらを実行することで、平均コンバージョン率の改善や売り上げの増加につなげられます。
文:Yukihiro Kawata





