メールマーケティングで成果を出すためには、配信数や感覚的な手応えだけで判断するのではなく、適切な数値で設定されたKPIをもとに施策を評価・改善していくことが欠かせません。一方で、近年はプライバシー保護強化や配信環境の変化により、従来の数値だけでは実態を正しく把握しにくくなっていることにも注意が必要です。
そこで本記事では、2025年の最新動向を踏まえ、メールマーケティングで押さえておくべき重要指標を10種に厳選して解説します。目安となる数値も紹介しますので、各KPIの効果的な達成に役立ててください。
メールマーケティングのKPIとは?

メールマーケティングのKPI(重要業績評価指標)とは、配信したメール施策がどの程度成果につながっているかを数値で把握するための指標です。例えば開封率やクリック率、コンバージョン率などがあり、あらかじめ目標を設定しておくことで、メールの内容や配信方法が適切か、改善するべきポイントはどこにあるかを客観的に判断できます。感覚や経験に頼るのではなく、KPIをもとに各指標の達成度を明確にすることで、売上や顧客関係の強化といった成果に直結するメールマーケティングを実現できます。
メールマーケティングでKPIを設定することの重要性
メールマーケティングの各指標にKPIを設定しておく最大の理由は、施策の「良し悪し」を明確にできる点にあります。
例えば開封率が目標を達成できていなければ件名や配信タイミングに課題がある可能性があり、クリック率が伸びない場合はコンテンツやCTAの見直しが必要だと判断できます。KPIを定期的に確認することで、問題点を早期に発見し、仮説検証を繰り返しながら改善を進めることが可能です。その結果、無駄な配信を減らし、顧客にとって価値のあるコミュニケーションを継続的に提供できるようになります。
メールマーケティングの重要KPI10選

1. 到達率
到達率(配信率)は、送信したメールのうち、ユーザーの受信ボックスへ正常に配信された割合を示す指標です。
メールが届かない原因としては、入力ミスやアカウント削除による無効なメールアドレスの存在、または受信サーバー側でスパムと判定されることなどが考えられます。到達率が低い場合は、エラーとなっているメールアドレスを削除し、配信リストを定期的に整理するとともに、送信元の正当性を証明する送信ドメイン認証(SPF・DKIM・DMARC)の設定を見直すことが重要です。
到達率の計算方法は、以下のとおりです。
到達率(%)=(配信成功メール数 ÷ 送信総数)× 100
到達率の目安
理想的には100%ですが、大量に送信することが前提のメールマーケティングでは現実的にエラーをゼロにすることは難しいと言えます。実務的なKPIとしては、以下を目安に目指すと良いでしょう。
- 95%以上:非常に良好(理想的な状態)
- 90〜95%:要注意(リスト品質の見直しを推奨)
- 90%未満:スパムと判定されている可能性あり(メール認証設定や送信頻度の最適化を実施)
2. 開封率
開封率とは、メールを開封した受信者の割合を示す指標です。開封率が高い場合は、件名が興味を引くものであったり、顧客がブランドのメールを信頼していることを示します。なお開封率は一般的に、メールをHTML形式で送信し、そこに埋め込まれた画像ファイルがユーザーによって表示されたかどうかで計測されます。
開封率の計算方法は、以下のとおりです。
開封率(%)=(開封されたメール数 ÷ 受信者に届いたメール数)× 100
開封率の目安
eコマースメールマーケティングにおける健全な開封率の目安は、20〜22%です。これよりも低い場合は、件名の最適化やパーソナライズ、送信頻度の調整などの対応が必要です。
- 20%以上:良好(適切なエンゲージメントが得られている)
- 15〜19%:改善の余地あり(件名や送信時間のA/Bテストなどを行って調整)
- 15%未満:要改善(配信設定を見直す)
3. クリック・トゥ・オープン率(CTOR)
クリック・トゥ・オープン率(CTOR:Click-To-Open Rate)は、メールを開封した後にリンクをクリックした受信者の割合を示す指標です。開封率とクリック率という2つの要素を評価するため、コンテンツの有効性を総合的に測るのに最適です。CTORが高いほど、メール本文の内容・デザイン・リンク誘導などが受信者の興味を引いているといえます。
CTORの計算方法は、以下のとおりです。
CTOR(%)=(クリックした人数 ÷ メールを開封した人数)× 100
CTORの目安
Campaign Monitorの2022年版ベンチマークレポート(英語)によると、全業種平均のCTORは約10.5%です。業界ごとに見ると、教育業界は約15〜16%と平均に比べて高く、受信者が情報への関心を持ちやすい傾向が見られます。不動産や建設などの業界も約17%前後と高く、ビジュアル重視のコンテンツが反応を得やすい分野であることが要因と考えられます。
一方で小売業は約6%前後と低く、競合の多い購買促進型メールではクリック誘導の難易度が高いことがわかります。このほか、IT・ソフトウェア関連はおよそ10%前後、飲食・旅行業界では8〜10%程度と、平均的な範囲に収まります。
4. コンバージョン率
メールのコンバージョン率(CVR:Conversion Rate)とは、特定のアクション(例:購入、申込み、登録など)を実際に行った受信者の割合を示す指標です。メールマーケティングの最終的な成果を測る上で最も重要な指標のひとつであり、マーケティング活動全体の目標が集約された指標と言えます。
コンバージョン率の計算方法は、以下のとおりです。
コンバージョン率(%)=(期待するアクションを取った人数 ÷ 配信されたメール数)× 100
コンバージョン率の目安
全業界の平均コンバージョン率は約1.82%ですが、業界によって大きな差があります。以下に、その例をご紹介します。
- EC・オンラインショッピング:5%
- 美容・アパレル:3%前後
- 旅行業界:2〜3%
- 自動車やB2B(企業向け取引)など高額商材:1%未満
全体的な基準値とされる2%に満たない場合には、「このメールからの注文で〇%オフ」などの割引キャンペーンと組み合わせるといった施策が考えられます。
5. 登録解除率
登録解除率(または解約率・退会率)とは、メールを受け取った後に購読を停止したユーザーの割合を示す指標です。
メルマガやキャンペーンの内容が受信者にとって有益でない場合や、配信頻度が多すぎる場合にこの数値が上昇します。登録解除率を継続的に把握することで、コンテンツの満足度やターゲット設定の適切さを評価できます。
登録解除率の計算方法は、以下のとおりです。
登録解除率(%)=(解除した人数 ÷ 配信されたメール数)× 100
登録解除率の目安
メルマガの平均登録解除率は0.25%〜1%程度とされています。業界や配信内容によってばらつきはあるものの、一般的には以下のような基準でKPIを設定します。
- 0.5%以下:理想的(良好なエンゲージメント)
- 0.5〜1%:許容範囲だが改善余地あり
- 1%以上:要注意(コンテンツや頻度の見直しが必要)
継続的に増加傾向が見られる場合は、会員向けクーポンなどの「受信するメリット」を提供したり、未読メールが溜まらないよう必要な情報の発信に絞ったりといった対策を講じることが重要です。
6. バウンス率
バウンス率(Bounce Rate)は、送信したメールが受信者の受信トレイに届かず、差し戻された割合を示す指標です。原因としては、一時的なエラーによる「ソフトバウンス」(受信トレイがいっぱい、サーバーの一時停止、メールサイズが大きすぎるなど)と、恒久的なエラーとなる「ハードバウンス」(存在しないメールアドレス、削除されたドメインなど)があります。
バウンス率の計算方法は、以下のとおりです。
バウンス率(%)=(配信エラーとなったメール数 ÷ 送信メール総数)× 100
バウンス率の目安
バウンス率の一般的な範囲は0.2%〜3.3%です。KPIとしては約1.3%以下を維持するのが理想的とされています。
- 1%以下:非常に良好(健全にリストが管理されている状態)
- 1〜2%:おおむね良好(リスト更新の検討が必要)
- 3%以上:要注意(メールアドレスの精査や配信設定の見直しが必要)
頻繁に配信を行っている企業ほど、バウンス率が低い傾向があります。これは、送信ごとに無効アドレスが検知・除外され、リストが継続的に改善されているためです。
7. メールリスト成長率
メールリスト成長率は、メール購読者リストが一定期間でどれだけ増加しているかを示す指標です。 新しい購読者が増えるほど、潜在的な顧客接点や販売機会が広がります。一方で、登録解除や配信停止が増えると成長が鈍化するため、継続的なモニタリングが重要です。
リスト成長率の計算方法は、以下のとおりです。
リスト成長率(%)=(新規購読者数 − 登録解除者数)÷ 既存リスト人数 × 100
メールリスト成長率の目安
Campaign Monitorの分析(英語)によると、 月間の健全なリスト成長率はおおよそ2〜3%が目安とされています。 成長率が1%未満の場合は、登録フォームやコンテンツ誘導の見直しを検討しましょう。
8. メール共有または転送率
メール共有または転送率は、受信者がメールを他の人に共有または転送した割合を示す指標です。 これは、ブランドの信頼性やコンテンツの魅力度を測る上で重要なデータです。この行動は単なるクリックではなく、「内容に共感し、他者に勧めたい」という肯定的な意思表示であり、オーガニック(自然)な拡散を促す貴重な指標といえます。
計算方法は以下のとおりです。
メール共有/転送率(%)=(「共有する」「転送する」ボタンのクリック数 ÷ 配信されたメール数)× 100
メール共有または転送率の目安
Growth Onomicsの調査(英語)によると、健全な転送率は0.5%〜2%の範囲に収まることが多いとされています。 業界別では以下の傾向があります。
- eコマース:0.1〜0.3%
- テクノロジー関連:0.2〜0.5%
- 金融業界:0.1〜0.2%
0.5%以上であれば、コンテンツが強く共感を生み、拡散されていると評価できます。 一方で、0.1%未満の場合は内容が共有されにくい可能性があるため、テーマや訴求方法の見直しを検討しましょう。
9. ROI
ROIは、投資によってどれだけの利益を得られたかを示す指標です。
メールマーケティングでは、送信されたメールから生まれた収益を、その実施に要したコストと比較することで投資効果を数値化します。ROIが高いほど、少ない投資で大きな成果を上げていることを意味します。
ROIの計算方法は、以下のとおりです。
ROI(%)=(利益 ÷ 投資コスト)× 100
ROIの目安
Litmus Softwareのデータ(英語)によると、メールマーケティングは1ドルの投資に対して平均36ドルのリターンを生み出しているとあります。また、DMA(Direct Marketing Association)の調査(英語)でもROIは4200%に達しているうえ、前回調査の3200%からさらに上昇していることがわかっています。
10. 迷惑メール報告率
迷惑メール報告率は、配信したメールを「迷惑メール」として報告した受信者の割合を示す指標です。この数値が高いと、受信者個人から不快に思われているというだけでなく、メール配信全体の到達率やドメイン評価にまで及ぶ悪影響があるかもしれません。
多くのメールサービスプロバイダ(Gmail、Yahoo!メールなど)は、スパム報告の多い送信元を自動的にスパム扱いと判断する傾向があります。そのため、迷惑メール報告率は「リストの健全性」と「コンテンツの信頼性」を測る重要な指標といえます。
迷惑メール報告率の計算方法は、以下のとおりです。
迷惑メール報告率(%)=(迷惑メールとして報告された件数 ÷ 送信したメール総数)× 100
迷惑メール報告率の目安
理想的には0%です。現実的にはすべての受信者を満足させることは難しいものの、0.1%(1,000通に1件)を超えると要注意ラインと考えられています。
報告率が高くなると、メールサービス提供者の「送信元評価」が下がり、その後のメールが自動的にスパムフォルダへ振り分けられるリスクが高まります。
まとめ
メールマーケティングで安定した成果を出すためには、開封率やクリック率といった一部の数値だけで判断するのではなく、到達率やバウンス率、迷惑メール報告率などの指標で総合的にKPIを達成していくことが重要です。
特に近年は、プライバシー保護の強化や配信環境の変化により、KPIとして設定するべき数値も変化しています。本記事で紹介した10の重要指標を定期的に追跡し、課題に対処するためのKPIを更新していくことで、メールマーケティングの効果を継続的に高めることができます。
よくある質問
メールマーケティングで最低限設定すべきKPIは?
最低限押さえておきたいのは、到達率、開封率、CTOR、コンバージョン率、登録解除率の5つです。これらのKPIを達成していくことで、「届いているか」「読まれているか」「行動につながっているか」「嫌われていないか」を一通り改善できます。
開封率は2025年でも重視すべき指標ですか?
開封率は引き続き参考指標にはなりますが、単体での評価は推奨されません。プライバシー保護強化の影響により、実際に読まれていなくても開封として計測されるケースがあるため、CTORやコンバージョン率と組み合わせて判断することが重要です。
開封率が高いのにコンバージョン率が低いのはなぜ?
件名や配信タイミングは適切でも、メール本文の内容やCTA、リンク先ページに課題がある可能性があります。CTORやクリック後の導線もあわせて確認し、メール全体の設計を見直しましょう。
文:Takumi Kitajima





