世界的なSNSであるFacebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)では、ユーザーのきめ細かなターゲティングが可能なMeta(メタ)広告を利用することができます。このプラットフォームでは特に、すでに接点のあるユーザーへアプローチを行うリターゲティング広告が大きな効果を発揮すると言われています。
こうした既存顧客のコンバージョン率を高める取り組みは、成果につながりやすく有料広告の運用にかかる手間とコストの最適化にも有効です。この記事では、Meta広告のリターゲティングの概要とともに、仕組みやメリット、設定方法や最適化のポイントを解説してますので、ぜひ参考にしてみてください。
Meta広告のリターゲティングとは?

Web広告のリターゲティングは、過去に自社のウェブサイトや商品ページを閲覧したことのあるユーザーに対して、再度広告を配信する手法です。関心や購買意欲を持っている層に絞って広告を届けられるため、新規ユーザーへのアプローチと比較して広告費対効果(ROAS)の向上が期待できます。
Meta広告(旧名称:Facebook広告)では、行動履歴や興味関心に基づいて配信先のユーザーを絞り込めるため、このリターゲティングが効果を発揮しやすいと言われています。ユーザーの属性情報(年齢、性別、地域など)だけではなく、「どのような関心を持っているか」「マーケティングファネルのどの段階にいるか」なども踏まえてピンポイントで広告を配信することができるのです。
Meta広告のリターゲティングの仕組み

Meta広告のリターゲティングでは、SNS上での「いいね」や「シェア」などのほか、ウェブサイト上での閲覧・購入などの行動データも活用し、配信精度を向上させることができます。ウェブサイトでの行動データ収集は、JavaScript(ジャバスクリプト)コードであるMetaピクセルを設置することで実施できます。
Metaピクセルを設置することで得られる顧客情報には、以下のようなものがあります:
- ユーザーがページを訪れた回数
- 商品をカートに追加した動作
- 購入
- スクロールの深さ(ページ上をどの程度下までスクロールしたか)
- ページに滞在した時間
- その他のカスタマイズ可能なイベント
Meta広告のリターゲティングを利用するメリット

高いコンバージョン率が期待できる
自社のウェブサイトに訪問したユーザーは、ある程度の関心を持っている見込み顧客である可能性が高いと考えられます。こうしたユーザー層へ再度アプローチすることで、コンバージョン率の向上を期待することができます。
広告にかかるコストを削減できる
Meta広告は、自社の商品・サービスへの関心が見込めるユーザーに絞って広告を出せるため、より費用対効果が高い運用を実現できます。
ユーザー層に応じて広告を配信できる
Metaピクセルを通じて、商品をカートに追加した動作や購入の有無などのユーザー行動を追跡し、ランディングページ(LP)や広告クリエイティブをパーソナライズして配信することができます。例えば、以下のようなアイデアがあります。
- 購入完了したユーザー:関連商品や新着商品、上位商品などの広告を表示することで、アップセルやクロスセルにつなげることができます。
- サイトに訪問したユーザー:割引クーポンの広告を配信して購入を促すことができる
- カートに追加したが未購入のユーザー:購入完了を促す広告を表示することでカゴ落ち率の低下が期待できる
ブランド価値の定着につながる
Meta広告では、日常的に利用するSNSに広告を配信できるため、自社商品・サービスに触れる機会を増やすことができます。また、FacebookやInstagramのフィード、ストーリーズ、リールなどのコンテンツ形式に合わせた自然な形で表示できることで、広告に対する心理的抵抗を抑えてブランド価値の定着が狙えます。
Meta広告のリターゲティングの設定方法

1.Metaピクセルの設定
第一に、ウェブサイトにMetaピクセルを設定する必要があります。なお、Shopify(ショッピファイ)のストアは、データをリンクさせるための「パートナー連携」機能を利用できるため、画面上の指示に従って簡単に設定を完了させることができます。
連携方法は以下のとおりです。
- Metaビジネスマネージャからイベントマネージャを開く
- 「+データをリンク」から「ウェブ」を選択し、「次へ」をクリックする
- ピクセル名を入力し、「作成」をクリックする
- ウェブサイトの有無に応じて画面の指示に従って設定する
※ウェブサイトがある場合は、URLを入力すると簡単に設定できる「パートナー連携」機能を利用できるかどうか確認できる
- データをMetaにリンクする方法として、「ガイドをチェック」(推奨)または「自分でやる」を選択する
- 【「ガイドをチェック」を選択した場合】イベントマネージャで画面の指示に従って設定を完了させる
- 【「自分でやる」を選択した場合】設定オプションの「コンバージョンAPIとMetaピクセル」または「Metaピクセルのみ」を選択する
- 【「コンバージョンAPIとMetaピクセル」を選択した場合】「パートナー連携を使って設定」、「コンバージョンAPIゲートウェイを使って設定」、「手動で設定」のいずれかを選択し、画面の指示に従って、ピクセル、コンバージョンAPI、イベントを設定する
- 【「Metaピクセルのみ」を選択した場合】作成されたピクセルコードをウェブサイトに追加する方法を選択する
2. リターゲティングオーディエンスの作成
Metaピクセルをウェブサイトに追加した後は、Meta広告マネージャーでリターゲティングするユーザーの条件を、属性や行動履歴に基づいて絞り込んだ「オーディエンス」という形で設定します。設定方法は以下のとおりです。
- 広告マネージャから「オーディエンス」を開く
- 「カスタムオーディエンスを作成」をクリックする
- カスタムオーディエンスのソースは「ウェブサイト」を選択し、「次へ」をクリックする
- 指定された条件のいずれかまたはすべてを満たすアカウントセンターのアカウントを含める
- ドロップダウンメニューからピクセルを選択
- アクセスした利用者の種類を選択
- 「オーディエンスリテンション」で、ウェブサイトにアクセスした後にビジターがオーディエンスとして維持される日数を指定
- オーディエンスに名前を付け、「オーディエンスを作成」をクリックします。
広告マネージャーのオーディエンス設定では、例えば以下の条件に基づいてオーディエンスを作成することもできます。
- FacebookやInstagramであなたのブランドに関心を持ったユーザー
- あなたのウェブサイトを訪れたユーザー
- あなたのウェブサイトで一定の時間を過ごしたユーザー
- あなたのウェブサイトの特定のページを訪れたユーザー
- コンテンツを閲覧したユーザー
- 製品をカートに追加したユーザー
- チェックアウトを開始したユーザー
3. リターゲティング広告の作成
リターゲティングするユーザーを分類できたら、リターゲティング広告を作成します。広告の設定手順は次の3つの階層に分かれており、それぞれを順に設定する必要があります。
- キャンペーン:広告の目的や予算、全体の方向性を設定する
- 広告セット:配信先のオーディエンスや配信頻度を設定する
- 広告:広告のコンテンツやデザインを設定する
キャンペーンの設定
- 広告マネージャから「キャンペーン」を開く
- 「+作成」をクリックして「購入タイプ」と「キャンペーンの目的」を選択の上、「次へ」をクリックする
- 「キャンペーン名」のテキストボックスにわかりやすい名前を入力する
- 「キャンペーン予算」やA/Bテストなどの設定を確認し、「次へ」をクリックすると、広告セットの設定へ進む
広告セットの設定
- 「広告セット名」のテキストボックスにわかりやすい名前を入力する
- ターゲットフリークエンシー(広告表示頻度)、予算と掲載期間、オーディエンスに関する項目などを設定する
- 「次へ」をクリックする
広告の設定
- 「広告名」のテキストボックスにわかりやすい名前を入力する
- 「広告設定」で「シングル画像または動画」「カルーセル」「コレクション」のいずれかを選択する
- 各項目が入力できたら「閉じる」をクリックして広告を保存するか、「公開する」をクリックする
Meta広告のリターゲティングの効果を最適化する方法

フリークエンシーキャップを設定する
Meta広告のフリークエンシーキャップとは、ユーザーに広告を表示する上限回数を設定する機能です。同じユーザーに対して広告配信頻度が高すぎた場合は、購買意欲が低下するケースがあり、かえってコンバージョン率を下げる要因になってしまいます。1週間の平均配信頻度を設定できるターゲットフリークエンシーとフリークエンシーキャップを上手く組み合わせながら、最適化しましょう。
コンバージョンユーザーを除外する
購入やウェブサイトへのアクセスといったコンバージョンを達成しているユーザーに対して、広告配信を除外する設定も欠かせません。Meta広告のリターゲティングの場合、対象のユーザーに繰り返し配信されます。購入完了したユーザーが購入後にも高い頻度で広告を目にすることで不信感が募り、信頼や購買意欲が低下してしまう懸念があります。
カスタムオーディエンスで設定したリターゲティングリストは、広告配信の対象にしないように紐づけることができるため、コンバージョンユーザーに対する施策も欠かさないようにしましょう。
複数のオーディエンスリストで比較検証を行う
オーディエンスリストを一つに絞らず、複数で比較しながら検証することが重要です。Meta広告の費用対効果を上げるためには、最も成果が出ているリストや、期待より成果が出ていないリストなどを明確化することが欠かせません。さまざまな条件でオーディエンスを変化させながら、PDCAサイクルを繰り返してMeta広告のリターゲティングにおける確度を高めていきましょう。
クリエイティブな広告・ランディングページの改善に努める
ユーザーに配信する広告やランディングページも、常にユーザーが興味を持ってもらうために常に改善に努めましょう。毎度同じ広告を見せると、閲覧したユーザーが自社の商品・サービスを見飽きてしまったり、それぞれの効果を検証する機会が限定的になってしまったりするためです。
クリエイティブの鮮度を保つうえで、少なくとも2週間ごとの広告入れ替えが推奨されています。Meta広告ライブラリで自社ビジネスに関連する広告カテゴリーで情報収集したり、Meta広告マネージャで効果測定を行ったりして、最適化に努めましょう。ランディングページについては、タイトルやCTAボタン、そして購入済みユーザーの口コミ、実績などがわかりやすく盛り込まれているかを確認してみてください。
クリエイティブな写真や動画を使用する
リターゲティングに最適な広告のクリエイティブでは、ウェブサイトに掲載している商品写真だけでなく、以下のようなクリエイティブな写真・動画を制作・使用することも効果的です。
- ユーザーやインフルエンサーが製品を使用している写真・動画
- 商品の外観や機能を示す動画
- 印象的な開封体験の動画
- ユーザーからのよくある質問に答える動画
- ユーザーの口コミをまとめた動画
iOS14.5以降のMeta広告のリターゲティングを理解する
AppleのiOS14アップデート以降、Meta広告のリターゲティングの仕組みが変化したため、理解と対策が必要です。具体的には、iOS14.5以降、アプリがユーザーの行動をトラッキングする際に「他社のアプリやWebサイトをまたいで追跡してよいか?」をユーザーに確認する仕組みであるApp Tracking Transparency(ATT)が導入されました。多くのユーザーが「追跡を許可しない」を選択するため、Meta側でユーザー行動を正確に把握しにくくなったという問題が発生しています。
上記の事象の対策としては、以下のようなものがあります。
- コンバージョンAPI(CAPI)の活用:Metaピクセルだけでは取得できないデータを、CAPI(サーバー経由の計測)で補完する
- ファーストパーティデータの活用:自社で保有する顧客リストを安全に統合し、ユーザーに合わせたリターティングを行う
自動化機能を活用する
Meta広告では、素材やコピーを組み合わせて広告のバリエーションを自動生成する「ダイナミッククリエイティブ(旧名称:Facebookダイナミック広告)」や、AIがユーザーの興味関心に基づいて広告を自動で配信する「Meta Advantage+」などの機能も用意されています。オーディエンス設定や広告作成、予算管理など、どこまで自動化するかを選ぶこともできるため、広告運用のノウハウが少ない場合には特に便利な機能といえるでしょう。
まとめ
Meta広告のリターゲティングを活用すれば、商品やブランドに興味を持ったことのある見込み顧客や既存顧客に対して効果的なアプローチができるため、コンバージョン率・広告の費用対効果向上が期待できます。より精度を高めていくためには、顧客の行動を踏まえて様々なオーディエンスリストを作成し、効果測定や比較を継続的に行うことが重要です。フリークエンシーキャップやコンバージョンユーザーを除外する機能を上手く活用し、オーディエンスリストを最適化してみてください。
iOS14.5以降によりユーザー行動の情報収集に変化が生じたものの、コンバージョンAPIなどの活用で補完することが可能です。配信管理や広告バリエーションの拡大を自動化してくれる機能も活用すれば、手間を抑えながらリターゲティングを洗練させていくこともできます。
Meta広告のリターゲティングに関するよくある質問
Meta広告のリターゲティングとは?
Meta広告のリターゲティングとは、自社のウェブサイトや商品ページを閲覧したユーザーに対して、Meta社が提供するプラットフォーム上で広告を表示する手法です。
Meta広告のリターゲティングのメリットは?
- 高いコンバージョン率が期待できる
- 広告にかかるコストを削減できる
- ユーザー層に応じて広告を配信できる
- ブランド価値の定着につながる
Meta広告のリターゲティングの主な設定方法は?
- Metaピクセルの設定
- リターゲティングオーディエンスの作成
- リターゲティング広告の作成
Meta広告のリターゲティングの効果を最適化する方法は?
- フリークエンシーキャップを設定する
- コンバージョンユーザーを除外する
- 複数のオーディエンスリストで比較検証を行う
- クリエイティブな広告・ランディングページの改善に努める
Meta広告のリターゲティングを行う際のポイントは?
- iOS14.5以降のMeta広告のリターゲティングを理解する
- 自動化機能を活用する
- クリエイティブな写真や動画を使用する
文:Ryutaro Yamauchi





