ウェブサイトを利用したキャンペーンやECサイトのKPIを評価する場合、コンバージョン率は非常に重要な指標です。コンバージョン率を理解して活用することで、ウェブサイトの効果を数値で把握でき、課題の発見や改善に役立ちます。本記事では、コンバージョン率の意味や計算方法、および改善するための方法やツールを紹介します。
コンバージョン率(CVR)とは?

コンバージョン率(CVR:Conversion Rate)とは、サイトに訪れたユーザーのうち、資料請求や商品購入など、運営側が「達成してほしい行動(コンバージョン)」を完了した人の割合を示す指標です。
コンバージョンには、購入・問い合わせ・セミナー申込みなど、ビジネス目標に合わせてさまざまな種類があります。どの行動をコンバージョンとするかは、事業やKPIに合わせて設定します。
コンバージョン数は、一般的に「アクセス数 × コンバージョン率」で把握できます。この2つに分解することで、流入拡大とサイト改善のどちらに注力すべきかが判断しやすくなるため、コンバージョン率はウェブマーケティングで特に重要な指標とされています。
コンバージョン率の計算式

コンバージョン率は、一定期間内に発生したコンバージョン数をウェブサイトの訪問数で割り、その結果をパーセンテージで表したものです。基本の計算式は次のとおりです。
コンバージョン率(%)= コンバージョン数 ÷ ウェブサイトへの訪問数 × 100
コンバージョン数
コンバージョン数とは、訪問者が一定期間内に完了した目標アクションの総数です。購入、問い合わせ、セミナー申込みなど、サイト上で定義した「コンバージョン」を合計して算出します。
また、ページ単位・施策単位のコンバージョンを計測したい場合は、該当するコンバージョンのみをカウントし、部分的なコンバージョン率を算出することもできます。これは実務でもよく使われるアプローチです。
ウェブサイトへの訪問数
訪問数とは、一定期間内にウェブサイトへアクセスが発生した回数です。同じユーザーであっても、別のタイミングでサイトにアクセスすれば、それぞれ1回として計測されます。
サイト全体のコンバージョン率を求める場合は、対象期間内の全訪問をカウントします。特定ページや特定施策のコンバージョン率を求める場合には、該当する流入やページへの訪問数のみを用います。
コンバージョン率に影響を与える要因

コンバージョン率はウェブサイトの質を示す重要な指標ですが、サイトの出来栄えだけで決まるわけではありません。ビジネスモデルや集客方法など、さまざまな外部要因の影響を受けます。コンバージョン率を総合的に捉えるためには、次のような要素を考慮することが重要です。
チャネルミックス
企業が利用する販売チャネルは、メール、SNS、DM、広告、展示会など多岐にわたります。たとえば、広く認知を獲得したい企業では新規層の流入が多くなる一方、既存顧客の利便性向上を目的とした企業では、購入意欲の高いユーザーが中心になります。マルチチャネル販売の構成が異なると流入層の性質も変わり、それに伴って必然的にコンバージョン率にも差が生まれます。
ファネルの特徴
ユーザーが購入に至るまでには、一般的に 認知 → 興味 → 検討 → 購入 という段階をたどります。この流れをファネルと呼び、どの段階に注力するかによってコンバージョン率は大きく変わります。
たとえば、コラム記事やハウツー記事を多く掲載しているサイトは、「認知」や「興味」段階のユーザーの訪問が増えます。こうしたユーザーは購入意欲が高くないため、結果として訪問数(分母)が膨らみ、コンバージョン率が下がることがあります。ただし、これは悪いことではなく、ターゲット層の母数が広がってコンバージョン数が増えているのであれば、ファネル上流の施策は成功していると考えられます。
商品価格
購入をコンバージョンとする場合、価格帯はコンバージョン率に大きく影響します。高価格帯の商品ほど検討期間が長くなり、一度の訪問で購入に至る割合は低くなりがちです。一方で、1件あたりの平均注文額が高いため、全体のROIとしては十分に採算が合うことも多く、コンバージョン率だけでは評価できません。
リピーターの割合
過去に購入経験のある顧客は、すでに商品理解や信頼が形成されているため、再度購入に至る可能性が高くなります。そのため、リピーターが多い商材(食品・日用品・定期購入商材など)では、自然とコンバージョン率が高くなる傾向があります。
コンバージョン率を改善する方法

コンバージョンの可能性を持つユーザーが「申し込み」や「購入」といった行動に進むか、それとも途中で離脱してしまうかは、サイト設計によって大きく左右されます。ここでは、コンバージョン率を高めるために効果のある代表的な改善方法を紹介します。
1. ウェブサイトの導線(UX)を改善する
ユーザーがストレスなく目的のページに到達できる設計は、コンバージョン改善の基本です。
ランディングページ(LP)の掴みを強化する
検索意図に合ったキャッチコピーや、メリットが一目でわかる見出しを配置し、「このページには自分の求める情報がある」と直感的に理解してもらうことが重要です。
CTA(Call To Action)をわかりやすくする
ボタンの文言・色・配置を調整し、次に何をすべきか迷わせない導線をつくります。たとえば、購入ボタンや申込みボタンをファーストビューに置く、スクロール後に再表示するなどの工夫が有効です。
迷いを生む要素を減らす
リンクが多すぎる、不要な情報が挟まっている、画面遷移が複雑といった要素は離脱の原因になります。必要最小限の導線に整理し、目的のアクションまでスムーズに移動できる状態を整えます。
2. 提案の「価値」を明確に伝える
ユーザーは、提案の価値を理解できなければアクションに進みません。他社との違いや、具体的に得られるメリットを明確に示すことが重要です。
競合との差別化ポイントを示す
料金、機能、サポート内容、利便性など、競争力のあるポイントを整理し言語化します。「なぜ他社ではなく自社を選ぶべきなのか」が伝わると、行動意欲が高まります。
申し込み後に得られる内容を具体化する
商品の特徴や使用シーン、サービスなら価格・支払い条件を明確にします。資料請求であれば「どんな情報が得られるか」「何分で読めるか」なども具体的に示すと効果的です。
3. 信頼性を補強する
訪問者が購入や申込みを躊躇する大きな理由は「本当に大丈夫だろうか?」という不安です。社会的証明や実績の明示はCVR向上に直結します。
口コミ・レビュー・導入事例を掲載する
第三者の声は非常に効果的で、実績の紹介は大きな安心材料になります。
企業情報を整備する
会社概要、住所、問い合わせ窓口、返品・キャンセル規定など、基本情報がきちんと記載されているだけで信頼度が高まります。
セキュリティ対策を明示する
ECであれば決済の安全性、フォームならSSL対応など、安心感を与える材料は必須です。
4. アクションを促す仕組みを整える
ユーザーが行動を起こしやすい環境を用意することも重要です。
緊急性・限定性を適切に示す
期間限定の割引、数量限定、キャンペーンの締切などは意思決定を後押しします。ただし、過度な煽りは逆効果となるため、事実に基づいた表現が望まれます。
入力フォームを簡素化する
申し込みフォームの項目が多すぎると、離脱が発生しやすくなります。 必須項目を見直し、入力補助機能(自動入力・選択式)を活用するなど、負担を最小限に抑えることがポイントです。
技術的な離脱要因を取り除く
ページの読み込み速度が遅い、スマートフォンで見づらい、エラーが出やすいといった問題は大きな機会損失につながります。定期的な動作テストは欠かせません。
コンバージョン率を追跡するツールとソフトウェア
コンバージョン率(CVR)の計測には、アクセス解析ツールや行動分析ツールが欠かせません。ここでは、日本国内でも利用しやすく、コンバージョン改善に役立つ代表的なツールを紹介します。
1. Google Analytics
Google Analytics(GA) は、世界中で最も広く利用されているアクセス解析ツールです。無料でありながら高機能で、ウェブマーケティングに関するナレッジも豊富なことから、企業規模を問わず広く採用されています。
UA(ユニバーサル アナリティクス)から GA4 への変更点
2023年以降、Google Analytics は GA4に完全移行し、コンバージョン率に影響する計測の考え方にも変化がありました。
- セッション中心からイベント中心のモデルへ変更
コンバージョンもイベントとして扱われるようになり、より柔軟な定義が可能になりました。 - CVRの分母となる指標が選択可能に
GA4ではCVRの分母となるアクセス数として「セッション数」だけでなく「ユーザー数」も用途に応じて使い分けられます。 - 同一セッション中の複数コンバージョンをカウント可能
GA4では1セッション中に複数回コンバージョンが発生した場合も、すべて計測可能です。
2. Matomo
Matomo は、Google Analytics の主要な代替ツールとして世界的に利用されています。アクセス解析の機能面では GA と同等レベルを備えつつ、特にデータの所有権やプライバシー保護を重視する企業に支持されています。
主な特徴
- オンプレミス運用が可能(自社サーバーに設置できる)
社内データを外部に渡せない自治体・金融機関・公共団体などでも採用されています。 - Cookieレス解析に対応
法規制が厳しい欧州や官公庁でも採用例が多い理由です。 - GAと似たインターフェイスで乗り換えやすい
セッション、イベント、コンバージョンなど、基本概念はGAとほぼ共通で、違和感なく利用を開始できます。
3. Ptengine
Ptengine は、アクセス解析とヒートマップを一体化したツールで、ユーザー行動の可視化に強みがあります。ページビュー、CVR、離脱率などの数値データに加え、ユーザーがどこで迷い、どこをクリックし、どこまでスクロールしたかを視覚的に把握できます。主な特徴は以下のとおりです。
- ヒートマップ分析が標準搭載
「ページのどこが見られているか」を直感的に分析できます。 - CVR改善に直結する改善箇所の発見が得意
CTAボタンがクリックされていない、フォームが長すぎて離脱しているなど、問題点を視覚的に把握できます。 -
ABテスト機能
ボタンの文言や配置など、UI改善の効果をスピーディーに検証できます。
4. Shopifyストア分析
Shopify ストアを運営している場合、標準で提供されるShopify Analyticsを活用することで、ストア全体の売上・流入・行動データを統合的に把握できます。特に分析に役立つのは「行動レポート」です。
オンラインストアコンバージョン率の内訳レポート
Shopifyのレポートでは、カート追加、チェックアウト到達、購入完了という EC特有の3段階ファネル を自動で計測できます。これにより、どの段階で離脱が多いかを一目で確認できます。
- カートに追加したユーザー
- チェックアウトまで進んだユーザー
- 実際に購入したユーザー
外部ツールとの相性がよい
ShopifyとGA4を併用することで、「ストア内行動」×「サイト全体の流入・計測」を統合的に把握でき、より詳細なコンバージョン分析が可能になります。
業界別のコンバージョン率の平均

業界ごとに、一般的なコンバージョン率(CVR)の傾向には違いがあります。ここでは、WordStream が公開した Google 広告のランディングページにおける業界別平均 CVR(米国データ)を紹介します。広告からの流入は検索意図が明確で、関連性の高いランディングページが表示されるため、一般的に「サイト全体の平均CVR」より高い数値が得られる点に注意が必要です。
WordStream による業界別平均 CVR(Google Ads・米国)
- 自動車修理:14.67%
- 動物・ペット:13.07%
- 病院・外科医:11.62%
- 教育・指導:11.38%
- 個人サービス:9.74%
- 歯科:9.08%
- 美容:7.82%
- 自動車販売:7.76%
- スポーツ・趣味:7.62%
- 家・大工:7.33%
- 工業・商業:7.17%
- レストラン:7.09%
- フィットネス:6.80%
- 旅行:5.75%
- ビジネスサービス:5.14%
- 弁護士:5.09%
- 美術・エンタメ:4.84%
- 求人・雇用:4.33%
- ファッション:3.99%
- 買い物・ギフト:3.83%
- 不動産:3.28%
- 家具:2.73%
- 金融:2.55%
(出典:WordStream「2025 Google Ads Benchmarks」:英語)
データの読み方
これらの数値は、「Google広告 → ランディングページ」の条件での平均値です。広告は指定した検索ワードに基づいて表示されるため、クリックしたユーザーはサイトの目的と合致した課題を持っている割合が高くなります。そのため、サイト全体のCVRに比べて高い値が出やすい点に注意してください。
また、コンバージョンの種類によっても CVR は左右されます。資料請求・クーポン取得などの中間指標を多用する業種でCVR は高くなり、最終成果(購入・成約)を設定する業種ではCVRが低くなる傾向があります。
業界比較としての活用ポイント
こうした前提を踏まえたうえで、WordStream のデータは「どの業界が比較的行動につながりやすいか」 を知る参考として有用です。たとえば、上位に位置する自動車修理、動物・ペット、医療(病院・外科)などは、ユーザーが緊急性の高い課題を抱えて検索するケースが多く、クリックからコンバージョンに至りやすいという特徴があります。
このことから、ユーザーの検索意図を正確に捉え、適切なランディングページを準備することが、コンバージョン率の改善に役立つことがわかります。
まとめ
コンバージョン率(CVR)は、サイトに訪れたユーザーのうち、目標とする行動を完了した割合を示す重要な指標です。CVRは、「コンバージョン数 ÷ 訪問数 × 100」で算出され、サイト全体だけでなく、特定ページや特定アクションごとの部分的なCVRを把握することで、改善すべきポイントが明確になります。
CVRに影響を与える要因は、チャネル構成、ファネル上の位置、商品価格、リピーターの割合など多岐にわたります。特に、検索意図に合ったページ設計、サイト内導線、価値提案の明確さ、入力フォームの負荷軽減などは実務上の改善効果が大きく、ユーザーが迷わず行動できる環境を整えることが欠かせません。
CVRの計測には、GA4、Matomo、Ptengineなどのアクセス解析・行動分析ツールが活用できます。Shopifyを利用している場合は、カート追加から購入完了までのファネルを把握できる行動レポートも有効です。計測方法や定義がツールによって異なるため、自社の目標や計測ルールとの整合性を確認する必要があります。
自社のビジネスモデルやユーザーの検索意図を踏まえて、コンバージョン率の計測と改善を継続することで、より成果につながるサイト運営を実現できます。
コンバージョン率の計算に関するよくある質問
良いコンバージョン率とは?
ECサイトでは、一般的に 3%前後が良いコンバージョン率とされています。業界や商材、コンバージョンの定義によって大きく変動するため、あくまで目安としつつ、自社のビジネス特性に合わせて判断することが重要です。
商品購入におけるコンバージョン率の計算方法は?
コンバージョン率は「購入件数 ÷ 訪問数」で算出します。1回の購入に複数商品が含まれていても、通常は1コンバージョンとして計測されます。ECでは同一ユーザーが続けて決済した場合も、別取引として計測されることが一般的です。
コンバージョン率を改善するには?
検索意図に合ったページ設計や、分かりやすい導線、申し込みフォームの簡素化などが効果的です。コンバージョンに至るまでの障害を減らし、ユーザーが迷わず行動できる環境を整えることが改善の鍵になります。
コンバージョン率の改善に使用できるツールは?
Google Analytics(GA4)や Matomo による計測、Ptengine のヒートマップ分析などが有効です。Shopify の行動レポートも、ECのファネル把握に役立ちます。数値計測と行動分析を組み合わせることで改善点を見つけやすくなります。
文:Norio Aoki





