おいしそうな料理写真には、見る人の食欲を刺激する魅せ方の工夫が詰まっています。食品をネット販売する際やレストランのメニューに写真をのせる場合はもちろんのこと、SNSやブログに料理写真を投稿する場合でも、料理をただ撮るだけではもったいありません。ライトの当て方や構図、カメラ設定を少し意識するだけで、プロのような一枚に仕上げることができます。
この記事では、初心者でも実践できる料理撮影のコツを分かりやすく紹介します。ぜひ参考にして、スマホやカメラで手軽においしさが伝わる料理写真を撮影してください。
料理の撮影方法

1. 料理に合う背景を選ぶ
料理の撮影では、背景選びが写真の印象を大きく左右します。
料理の色や質感を引き立てるためには、シンプルで落ち着いた背景がおすすめです。例えば、白やベージュ、木目などのナチュラルなトーンは、どんな料理とも相性が良く、清潔感を演出できます。和食なら木のテーブルや和紙風の背景、洋食ならリネン布や大理石柄など、料理のテイストに合わせるとより統一感が生まれます。
また、背景が主張しすぎると料理が埋もれてしまうため、主役はあくまで料理であることを意識することが大切です。
2. 明るさと光の向きを工夫する
料理撮影では、明るさと光の向きを工夫することで写真の仕上がりが大きく変わります。
自然光を使って撮影するのが理想で、特に窓から入る柔らかい光は料理の質感や立体感を美しく引き出します。光は真上からではなく、横や斜めから当てることで陰影が生まれ、立体感と温かみが増します。逆光気味に撮ると、飲み物の透明感や湯気などが際立ち、より臨場感のある写真になります。
暗すぎる場合はレフ板や白い紙で光を反射させ、明るさを調整しましょう。人工照明を使う場合も、光が強すぎたり黄色くなりすぎたりしないよう注意が必要です。
3. おいしさが伝わる構図を意識する
おいしさを伝えるには、構図の工夫が欠かせません。
まず、主役となる料理の魅力をどこに置くかを意識しましょう。写真の中央ではなく「三分割法」を意識して少しずらすことで、自然でバランスの取れた印象になります。上から撮る「俯瞰ショット」は全体を見せたいワンプレート料理に、斜め45度の角度は立体感を出したいパスタやデザートに適しています。
また、箸やフォークを添えたり、一口分を持ち上げるカットを入れたりすると今すぐ食べたいという臨場感が生まれます。料理以外の余白や小物を上手に使い、ストーリーを感じさせる構図を意識しましょう。
調理する人や食事をする風景のような日常写真も、その料理が提供されるストーリーや場面をイメージしやすくなるためおすすめです。
4. カメラを安定させる
料理などの商品撮影では、カメラを安定させることが写真のクオリティを大きく左右します。
手ブレがあると、せっかくの料理の質感や細部の美しさが失われてしまいます。特に室内や夜間など光量が少ない環境では、わずかなブレも目立ちやすいため注意が必要です。三脚を使用するのが最も効果的ですが、スマートフォンならテーブルや台の上に固定したり、肘を体に添えたりして撮るだけでも安定性が増します。
シャッターを押すときの振動を防ぐために、タイマー機能やリモートシャッターを使うのもおすすめです。安定したカメラワークで、料理の色や質感をより鮮明に、魅力的に伝えましょう。
料理撮影のコツ5選

1. レンズを変えて表現の幅を広げる
レンズを変えるだけで、料理の印象は大きく変わります。
マクロレンズは被写体を大きく写せるため、食材の質感や細部の美しさを際立たせたいときに最適です。反対に標準レンズは、テーブル全体を自然なバランスで表現できます。
さらに、LAOWA 24mm F14 2X MACRO PROBEのような特殊なマクロプローブレンズを使えば、ドーナツの穴やグラスの中など、通常は撮れない角度からの撮影も可能です。撮りたい雰囲気に合わせてレンズを使い分けることで、写真表現の幅がぐっと広がります。
2. フィルターやレフ板で光をコントロールする
料理撮影では、光の扱い方ひとつで印象が大きく変わります。
光をやわらげたいときは、光源と被写体の間に拡散素材を挟むのが効果的です。プロは光を拡散したりやわらげたりするフィルターなどの専用機材を使いますが、自宅では白いシーツでも代用できます。また、カクテルグラスやキャンドルなどを印象的に見せたいときは、クロスフィルターやソフトフィルターなどを使って光をきらめかせるのもおすすめです。
さらに、レフ板で光を反射させたり、黒い布で不要なライトを遮ったりすることで、陰影を自在にコントロールできます。光を意識的に操ることで、料理の立体感や質感がより鮮やかに伝わります。
グラスやガラス製の食器など光沢物のある撮影の場合は、映り込みにも気を配り、トレーシングペーパーやフォームボードで反射具合も調整するようにしましょう。
3. ピント合わせのテクニックを磨く
料理撮影では、ピントの合わせ方が写真の印象を大きく左右します。
特に料理の一部に焦点を合わせることで、見る人の視線を自然に誘導し、主役を際立たせることができます。ピントを浅く設定して背景をぼかすと、奥行きと温かみが生まれます。
一方、全体をくっきり見せたい場合は、フォーカススタッキングという手法が効果的です。これは、ピント位置を少しずつ変えながら複数枚撮影し、それらを画像編集ソフトなどで合成して全体にピントを合わせる方法です。スマホの場合は、「Multifocus camera(マルチフォーカスカメラ)」のようなアプリを使うことで手軽に料理全体にピントが合った写真が撮れます。
4. カラーチャートを使う
料理写真では、色の再現性が印象を大きく左右します。
実際の料理の色味に近づけるために役立つのが、カラーチェッカーパスポートフォト2のようなカラーチャートです。撮影時に被写体の横にカラーチェッカー(色が並んだツール)を置いて一枚撮影しておくことで、編集時に正しいホワイトバランスや色補正がしやすくなります。これにより、照明の影響で料理が黄ばんだり青っぽくなったりするのを防ぎ、自然でおいしそうな色合いを再現できます。
特に、SNSや有料広告に料理の写真を掲載する場合、色の正確さはサイトの信頼感にもつながります。カラーチェッカーを使って、見た目どおりの“おいしさ”を表現できるようにしましょう。
5. 撮影中はこまめに画像をチェックする
撮影中は必ず画像を丁寧に確認しましょう。料理の撮影はやり直しがしにくいため、撮影後の画像編集で修正しきれない問題が発生しないようにする必要があります。
まず100%拡大でピントや手ブレ、油のテカり・指紋・ほこりなどを確認してください。ヒストグラム(明るさの分布)で白飛びや黒つぶれの確認、ホワイトバランスで色被りの補正を行いましょう。構図の余白やトリミングの余地、シリーズ内の明るさ・皿の向き・小物配置の一貫性も確認するようにします。必要なら角度や光を変えてリテイクを追加しましょう。
最後に、使用する写真の候補をわかりやすく仕分けるためにフラグを付けておくほか、ファイル名の整理やバックアップを行うと、その後の画像編集や商品ページ作成が効率的に進みます。
料理撮影時の設定

絞り
絞りは、レンズ内の開口部をどの程度開くかによって、カメラに入る光の量を調整する機能です。
開口部を広くすると多くの光が入り、写真は明るくなりますが、F値(焦点距離とレンズの有効口径の比率)が低くなります。このとき被写界深度が浅くなるため、背景をぼかした印象的な写真が撮れます。反対にF値を大きくすると光の量が減り、前景から背景までピントが合いやすくなりますが、細部のシャープさが少し落ちることもあります。
料理を掲載するEC撮影では、料理全体の立体感や質感を保ちつつ被写体を際立たせるために、F8〜F11程度の中間の絞り値を選ぶのがおすすめです。一方、メイン具材など料理の一部に焦点をあてたい場合は、F2.8からF4程度の絞り値にすると奥行きを感じる印象的な写真を撮影できます。
シャッタースピード
シャッタースピードは、カメラのセンサーが光を取り込む時間の長さを示す設定です。
時間を長くすると、より多くの光を取り込めて写真は明るくなりますが、被写体の動きがブレやすくなります。反対に短くすると、動きを止めてくっきりとした写真に仕上がります。
飲み物をグラスに注ぐ瞬間や、炭酸の泡が弾ける場面など、動きを表現したいシーンでは短いシャッタースピードが効果的です。自然光で撮影する場合は、光を多く取り込むために少し長めの設定にするとよいでしょう。
フラッシュを使うときは、光の向きや強さを調整できるよう、周囲の照明を抑えるのがポイントです。一般的なフラッシュの同期速度は1/200秒前後なので、撮影前に設定を確認しておきましょう。
ISO
ISOは、カメラのセンサーが光をどれだけ強く感じ取るかを決める設定です。
数値を低くすると取り込む光は少なくなりますが、画像のノイズが抑えられて滑らかで高品質な仕上がりになります。明るい場所やフラッシュを使う撮影では、ISO100〜200のような低い設定が理想的です。
一方、暗い環境ではISOを上げることで明るさを補うことができますが、数値が高くなるほど画像にザラつきが生じやすくなります。特に料理写真では、食材の質感や色の再現性を損なわないためにも、できるだけ低いISOで撮影するのがポイントです。カメラのマニュアルを確認し、最もノイズが少ない「ネイティブISO」を把握しておくと安心です。
ホワイトバランス
ホワイトバランスは、ライトの色温度を調整して写真の色合いを自然に見せるための設定です。
光の色温度はケルビンという単位で表され、白熱灯は約2700ケルビンで温かみのあるオレンジ色、曇りの日の自然光は約6000ケルビンでやや青みを帯びた光になります。撮影する環境に合わせてホワイトバランスを設定することで、料理の色味を正確に再現できます。
撮影時は、温かいライトと冷たいライトを同時に使うことは避けましょう。異なる光が混ざると、写真全体の色が不自然になり、編集でも修正が難しくなります。日光やフラッシュを使うときは、室内の照明を消すなど、光源をできるだけ統一するのが理想です。
まとめ
料理撮影で大切なのは、特別な機材のような撮影アイテムよりも観察力と工夫です。光の向きや質感、背景や構図のわずかな違いで、同じ料理でも印象はまったく変わります。この記事で紹介したコツを意識すれば、スマホでも十分にプロのような一枚を撮ることができます。
まずは、いつもの食卓やカフェの一皿で練習してみましょう。カメラ越しに料理を見つめる時間は自身の感性を磨く時間にもなり、料理の撮影技術向上につながります。光や構図を味方につけて、見る人の心を動かす料理の写真を撮影し、フードビジネスを成功させましょう。
よくある質問
料理の写真を撮影するコツは?
美しい料理写真を撮るには、まず盛り付けを整え、自然光の下で撮影し、カメラを三脚で安定させることが大切です。そのうえで、ライティングの向きや構図、レンズやフィルターを工夫することで、写真の完成度がぐっと高まります。
影を作らずに料理を撮影するには?
影を防ぐには、直射日光を避けて柔らかい光を使いましょう。レースのカーテン越しや日陰など、光が拡散する場所が理想です。自然な明るさで、料理の色と質感がより際立ちます。
料理を撮影する際のカメラ設定は?
ISOは低めに、絞りはF8〜F11程度が目安です。光の量に応じてシャッタースピードを調整し、RAW形式で撮影すると編集がしやすくなります。シンプルな設定で、より鮮明な仕上がりを目指しましょう。
文:Takumi Kitajima





