時間に縛られずに、少額の資金で取り組めるため、はじめやすいビジネスモデルとして知られる転売ビジネスの中でも、高い利益を狙うことができる古着販売は注目を集めています。しかし古着販売に魅力を感じているものの、具体的な起業の方法や販売方法が分からない方もいるのではないでしょうか。
この記事では、古着を販売する方法を12のステップに分けて紹介しています。仕入れ方法や販売方法に加え、古着を販売するうえで必要な許認可についても触れているため、ぜひ参考にしてみてください。
古着をオンラインで販売するための12のステップ
1. 販売する古着のジャンルを決める
まずは、どのような古着を販売していくかを検討しましょう。古着販売においては、需要がある商品を安く仕入れることが非常に重要です。古着の価値は、主に下記4つの要素によって決まると言われています。
- 希少性:生産数が少ない古着
- ブランド:有名なデザイナーがデザインした古着や、ヴィンテージブランドの古着
- 年代:特定の時代に生産された古着
- デザイン性:独自の魅力を持つ古着
上記を踏まえて市場調査を行い、業界に関する情報を収集・分析して、最新トレンドや顧客のニーズを把握しましょう。
また取り扱う古着のジャンルについては、古着分野でのニッチ市場を選ぶことがおすすめです。大きな市場に比べて競合他社が少なく、参入障壁も低いことから、小規模事業者にとっても参入しやすい市場といえます。
古着の販売では、例えば下記がニッチ分野に該当します。
- 1950年代のヴィンテージドレス
- デニムコレクター向けの限定版ジーンズ
- 子供向けの海外古着 など
2. ブランドアイデンティティを構築する
ブランドアイデンティティとは、そのブランドらしさを形作る全ての要素を意味します。ブランドらしさを明確に表現し、顧客に自社ブランドの魅力を感じてもらえれば、顧客との長期的な関係構築や他社との差別化につながります。ブランドアイデンティティを反映させる要素は、例えば下記のとおりです。
- ブランド名・ブランドロゴ
- ECサイトのデザイン、掲載写真のテイスト
- SNSのアカウント名
- 顧客とのコミュニケーションスタイル
- キャッチフレーズ
競合調査を通して、自身が展開するサービスの独自性や、競合優位性を確立できるポイントを見極めましょう。そして商品の購入を通してどんな良い体験をもたらしたいかを踏まえて、一貫性のあるブランドアイデンティティを練りましょう。
3. 事業の立ち上げ・運営に必要な資金を算定する

ブランドの方向性が決まったら、古着販売のビジネスの立ち上げ・運営に必要な資金を算定しましょう。古着販売を無理なく始めるには、ネット販売がおすすめです。実店舗で古着屋を開業する場合、物件取得費用や内装費用など含め、平均で300〜500万円ほどの初期費用が必要と言われています。
一方、オンライン販売の場合、必要な費用はECサイト構築のための費用、仕入れの費用、あとは許認可の取得費用のみです。また開業時に必要な費用だけでなく、ランニングコストも大幅に抑えることができるため、少ない負担で古着販売を始める方法としておすすめです。
4. 商品を仕入れる
費用が算定できたら、商品となる古着を仕入れましょう。国内・海外のいずれからでも古着を調達することが可能です。主な仕入れ先は下記のとおりです。
- リサイクルショップ
- フリーマーケット/フリマアプリ
- ネットオークション
検品やクリーニングに手間をかけたくない場合は、問屋やリサイクルショップから仕入れるのがおすすめです。こうした業者の商品は、すでに検品が完了しているため、品質が担保されています。
フリーマーケット・フリマアプリは安価で出品されているものが多いため、仕入れコストを抑えやすいというメリットがあります。国内では手に入らない古着にこだわるのであれば、海外からの仕入れも検討してみましょう。
5. 在庫管理の方法を整える

在庫管理は、顧客へ品質の高い古着を適切に、素早く届けるうえでとても重要です。最近は在庫管理システムを利用する業者も増え、リアルタイムで在庫数を監視して機会損失を防ぎつつ、人的ミスを最小限にするうえで役立っています。
Shopify(ショッピファイ)の場合は在庫管理の機能が標準で搭載されています。Shopifyの管理画面の「在庫」ページから、在庫の追跡設定、在庫の確認、在庫レベルの調整を簡単に行うことができます。リアルタイムでの在庫追跡も可能です。
また古着の保管方法については、下記を念頭に置いてみてください。
- 適切な保管環境:温度と湿度が管理された環境、蛾やその他の布地害虫から保護された場所に保管しましょう。
- ガーメントバッグの使用:商品を埃から守り、取り扱い中に傷むのを防ぐのに役立ちます。ただし湿気を閉じ込めてしまう可能性があります。ビニール製のものは避けましょう。
- パッド付きハンガーの使用:ワイヤーハンガーは、不要な破れや折り目、錆びてしまった場合はシミの原因となる可能性があります。木製ハンガーも、仕上げによってはダメージを与える可能性があります。
- 遮光対策:日光は色あせの原因となります。
- オープンラックで管理:在庫が見やすく、かつ取り出しやすくなります。
- 衣料品の保護:スパンコールや装飾品は、他の衣服の繊細な生地に引っかかる可能性があるので注意しましょう。
6. 商品写真を撮影する

ネットで古着を販売する場合は、掲載する商品写真の質で顧客の購買意欲が大きく左右されます。写真が暗くて商品が見づらかったり、古着を床に直置きして撮影していたりすると、顧客にマイナスの印象を与えてしまい、売上が伸びない原因となります。
自分で古着を撮影する場合は、好印象を与えられるように下記のポイントを踏まえて撮影してみてください。
- 商品が左右対称に写るよう、真正面から写真を撮る
- 商品写真の背景を整える
- 自然光やライトを利用し、明るい環境で写真を撮る など
もし自分で撮影するのが不安な場合は、古着の撮影代行サービスにお願いするのも1つの手段です。
7. 価格を設定する
価格を高く設定すると売れなくなり、逆に低すぎると利益が出ないため、価格設定は慎重に行う必要があります。価格設定を行う手順は下記のとおりです。
原価・経費の把握
販売までにかかった原価と経費を正確に把握しましょう。具体的には、下記を確認してみてください。
- 仕入れの金額
- 送料
- 古着のメンテナンスにかかった費用
- 商品の管理コスト
- 販売手数料(オンラインマーケットプレイスを利用する場合) など
価格相場を確認
市場調査・競合調査を通して販売価格の相場を把握しましょう。例えばフリマアプリで調査をする場合は、「販売状況」を『売り切れ』に設定することで売れた商品のみを表示することができます。また同種の古着のうち、直近に売れた品物の価格を参考にすることで、現在の相場価格との乖離を防ぐことにつながります。
GoogleトレンドやGoogleキーワードプランナーを用いて検索ワードを通して確認できた人気度や検索ボリュームも、商品の需要を予測するうえで役立つでしょう。
価格相場の確認ができたら、それを参考に商品の販売価格を決定します。実際に販売する古着の状態を踏まえて参考価格より高く販売するか、安く販売するか検討しましょう。価格決定時に参考にすべき古着の状態は下記のとおりです。
- 使用感:古着の摩耗・汚れ・ダメージの度合いを、一般的な古着と比較しましょう。
- 新古品かどうか:未使用または極めて状態の良い古着は、相場より高い価格で販売できる1つの要因になります。
利益率・利益額を算出する
市場調査で価格の相場や古着の品質面での優劣を確認できたら、利益率や利益額を考慮しながら販売価格を決定しましょう。
- 販売価格=原価+経費+利益
販売する商品や、販売方法によって目標の利益率は変動しますが、目安は30~50%と言われています。
8. ネットショップを開設する

販売価格が決まったら、古着販売のためのネットショップを立ち上げましょう。
またサイトを訪問し、商品に興味を持った顧客が実際に購入してくれるネットショップを構築するために、下記ポイントを押さえましょう。
- サイズ・状態など古着の情報をより細かく記載し、かつサイト上の表記を統一する
- 古着の全体写真と詳細写真をそれぞれ掲載する
- 自社の商品やサービスが、競合他社と差別化されているポイント(ユニーク・セリング・プロポジション(USP))を明確にする
- Aboutページを強化する
- 物語形式で自社ブランドの価値を伝えるストーリーテリングを活用する
- チェックアウトプロセスを簡素化する
- できるだけ多くの決済手段に対応する
- コレクションページを設置して、古着の在庫を年代・ブランド・アイテムの種類などで分類する
- よくある質問やお問い合わせページへのリンクを設置する
- 購入者のレビューやSNS投稿などのユーザー生成コンテンツ(UGC)を記載する
- 様々なデバイスの画面サイズに合わせてサイトを表示できるように、レスポンシブデザインを導入する
なお、自身でネットショップを開設する場合は、Shopify(ショッピファイ)がおすすめです。ウェブ制作の知識がない方でも簡単にECサイトを開設できるECプラットフォームで、初期費用は無料です。販売する古着に見合った無料テーマを使用して、写真、フォント、色をカスタマイズしましょう。また、SEOやマーケティングツールも基本機能として備わっています。さらにInstagram(インスタグラム)やFacebook(フェイスブック)などのSNSとも連携可能なため、ソーシャルコマースを活用することもでき、ECサイトを効果的に運営するための機能が十分に備わっています。
もしShopifyの利用に迷っている場合は、3日間の無料トライアル期間を有効活用しましょう。実際にお試しで使ってみてから、今後も継続的に利用すべきかを判断するのも1つの手段です。
9. 複数の販売チャネルを用意する
オンラインやソーシャルメディアなど、複数の販売チャネルを展開するマルチチャネル販売は、古着販売で利益を拡大するうえでも有効な手段です。顧客との接点が増えるため、顧客がサービスを知り、古着を購入してくれるきっかけも生まれやすくなります。
例えば自社のネットショップでの販売に加え、Amazon(アマゾン)をはじめとしたECモールを活用するのもおすすめです。またオンライン販売だけでなく、ポップアップストアや地域のバザー・フリーマーケットなど、オフラインイベントに参加して対面で販売する手段もあります。
10. マーケティング戦略を立てる

適切なマーケティング戦略を練ることは、商品販売で十分な利益を確保するうえで欠かせません。マーケティング手法のうち、高い費用対効果が期待できるものを以下に紹介します。
SNSでプレゼントキャンペーンを実施
リポスト&フォローキャンペーンやハッシュタグキャンペーンなど、ユーザーが気軽に参加できるキャンペーンを実施することで、商品やサービスをより拡散できます。
ユーザー生成コンテンツを共有
顧客がSNSアカウントに投稿した商品写真や動画、レビューをネットショップや公式SNSで紹介しましょう。顧客との信頼構築と、購買意欲の向上につなげることができます。
他ブランドとのコラボ
ウェビナーの共同開催、またSNS上でのコラボなどが挙げられます。それぞれの既存顧客に自社のビジネスを知ってもらうきっかけになります。一方でコラボするビジネスがあまりにも似ていて、取り扱う商品が同じ場合は顧客を奪い合うことになりかねないため、取り扱う商品が競合していないことがコラボの条件になります。
コンテンツマーケティングを取り入れる
コンテンツマーケティングとは、ブログやメルマガ、動画などで、消費者に有益な情報を発信することを指します。特に顧客の悩みの解消や、顧客の体験談などをテーマにしたSEO記事の投稿を行い、自社コンテンツで顧客との信頼関係を構築できれば、集客力や売り上げの向上が期待できます。
メールマーケティングを実施する
メールマーケティングとは、メールを通じて製品やサービスの情報を顧客に届ける手法です。自社のメールアドレスと送信先のリストがあれば開始できるため、ECサイトで役立つマーケティング施策の中でも導入ハードルが低いというメリットがあります。またメールを通して定期的に割引コードの配布などを行えば、既存顧客との関係性を維持・強化できるでしょう。
11. 配送方法と返品ポリシーを決定する
配送手段や配送スピードは、顧客満足度に大きく影響します。顧客にとって有意義なショッピング体験を提供するために、商品購入から受け取りまでの時間を可能な限り短縮しましょう。
配送の主な手段は宅配便とメール便で、特徴は下記のとおりです。商品の状態や配送料金・スピードなどを踏まえて選定しましょう。
- 宅配便:大きめの商品や重さのある商品の配送に適している。配送物の追跡が容易で、補償制度も手厚いことが多い。また配送にかかる時間も短め。
- メール便:小型で軽量な商品を配送する際に適している。宅配便に比べて安価で利用できるが、宅配便と比べて配送の追跡機能や補償制度が限定的で、配送までに時間がかかる。
また返金・返品の対応が手厚いかどうかも、顧客が重視する項目の1つです。返金・返品の対応を一律でルール化するよりも、顧客の状況に応じて柔軟に対応できる仕組みがあるサービスの方が好まれます。また実際に返金・返品対応の際は、顧客に親身に寄り添う姿勢を貫きましょう。
さらに、返金・返品が発生しにくい仕組みを構築することも重要です。顧客とのトラブルを未然に防ぐために、下記のポイントを押さえてください。
- ECサイト内で商品情報をより正確に、かつ詳細に説明する
- より高品質な商品写真を載せる
- 採寸方法のイラストを載せ、サイズ違いによる返品を防ぐ
- レビューで指摘された内容は、都度改善に努める など
12. 古物商許可を取得する

古物商許可とは、古着含む「古物」を売買・交換する事業を展開するうえで、個人・法人問わず必要な許認可です。申請場所は主たる営業所の所在地を管轄する警察署で、申請費用は19,000円になります。
都道府県によって提出書類は異なりますが、提出が必要とされる主な資料は下記のとおりです。
- 許可申請書
- 略歴書
- 住民票の写し(本籍(外国籍の方は国籍等)が記載されたもの)
- 誓約書
- 身分証明書
ECサイトで古着の販売を実施する場合は、ECサイトのURLやドメイン名などを追記したうえで、自身に使用権限があることが確認できる資料を提出する必要があります。申請から許可取得まで約40〜60日かかると言われているため、遅くとも開業の2か月前までに申請をしましょう。
まとめ
古着を販売するビジネスを始めるうえで、第一に販売する古着のジャンルの選定が必要で、そのために市場調査が欠かせません。販売する古着を決め、調達し終えたら、品質が落ちないように管理しつつ、リアルタイムで在庫数を監視して機会損失を防ぐことも重要です。そして適切に価格設定できているか、十分なマーケティング戦略を通して認知度向上や信頼構築を図っているか、そしてサイトの写真・商品情報や返金・返品ポリシーが明確に表記されているかなど、顧客に興味を持ってもらい、かつ不安を感じさせないための仕組み作りが利益を出すうえで大切です。
ぜひ1つ1つのステップを地道に実施しながら、1人でも多くの顧客に選ばれる古着ビジネスを展開していってください。
よくある質問
古着を販売する方法は?
以下12のステップを踏むことで、自身で古着ビジネスを開始できます。
- 販売する古着のジャンルを決める
- ブランドアイデンティティを構築する
- 事業の立ち上げ・運営に必要な資金を算定する
- 商品を仕入れる
- 在庫管理の方法を整える
- 商品写真を撮影する
- 価格を設定する
- ネットショップを開設する
- 複数の販売チャネルを用意する
- マーケティング戦略を立てる
- 配送方法と返品ポリシーを決定する
- 古物商許可を取得する
古着を販売するのに最適な手段は?
古着を販売する場合は、オンラインでの販売がおすすめです。特にネットショップを自身で構築する場合はECプラットフォームの費用、仕入れ費用、あとは許認可の取得費のみでビジネスを開始することができます。実店舗で古着屋を開業する場合、物件取得費や内装費用など含め、予算が合計で300〜500万円必要と言われていることから、リスクの抑制や利益を獲得するうえでオンライン販売は有効です。
古着販売ビジネスは儲かる?
ネット販売・店舗販売に関わらず、古着販売自体が収益性の高いビジネスになる可能性を秘めています。ブランドを構築し、健全な市場を持つ分野を見つけ、マルチチャネルで販売しながら、様々なマーケティング施策を講じることで、より古着販売ビジネスの収益化が期待できるでしょう。
古物商許可を取得するうえで必要な書類は?
都道府県によって必須の提出書類は異なりますが、提出が必要とされる主な資料は下記のとおりです。
- 古物許可申請書
- 略歴書
- 住民票の写し(本籍(外国籍の方は国籍等)が記載されたもの)
- 誓約書
- 身分証明書
オンラインで古着を販売する場合でも、古物商許可の取得は必要?
ビジネスとして古物を売買、または交換する「古物営業」にあたる場合は、販売方法にかかわらず古物商許可が必要です。
ネットショップで古着販売するために必要な費用は?
必要な費用は、主に以下のとおりです。
- 通信費用
- 電子機器の購入費用
- ネットショップの開設・運用費用
- 古着の仕入れ費用
- 梱包の費用
- 配送費用
- 古物商許可の取得費用
- 宣伝・広告のための費用
ネットショップで古着を売る際の注意点は?
ネットショップ内で「特定商取引法に基づく表記」を必ず行いましょう。特定商取引法とは、オンライン販売を行う企業に対して定められたもので、消費者を守ることを目的とした法律です。詳細は消費者庁のサイトをご確認ください。
文:Ryutaro Yamauchi





