在庫は売り上げにつながる重要な資産ですが、デッドストックになると事業経営の負担になることがあります。本記事では、デッドストックの意味や発生する原因、解決するための在庫管理方法などを紹介します。
デッドストックとは

デッドストックとは、売れ残ったまま販売機会を逃してしまった在庫のことを指します。
アパレル業などでよく使われる用語で、たとえば、冬用コートがシーズン終了後も売れ残った場合、需要は春物へ移っているため、販売機会が無いデッドストックとなります。
デッドストックのメリット
長期保管されたデッドストックは、あまり流通していない希少品やもう手に入らないヴィンテージアイテムとして価値が見直されることもあり、その場合は通常の販売時よりも高い価格で販売できます。
デッドストックが小売業に与える影響

デッドストックは事業全体へ以下のような影響を及ぼします。
- キャッシュフローに悪影響を及ぼす:デッドストックは現金化しづらく、仕入れや製造に使った資金が回収できません。その結果、本来投資すべき施策や仕入れに資金を回せず、資本の投資効率が下がります。さらに、売り上げや利益を生む機会の損失にもつながります。
- 保管コストが継続的に発生する:デッドストックは他の商品に使えるはずの倉庫や店舗スペースを占有し、家賃や管理費などの負担を増やします。
- 時代遅れになり価値が下がる:特にアパレル、季節商品、テクノロジー関連商品はトレンドの変化が早く、販売時期を逃すと市場需要とのズレが生じます。その結果、正規価格での販売が難しくなり、値下げや処分を余儀なくされます。
- 経年劣化や品質低下のリスク:未使用品であっても、長期間の保管によって汚れやキズ、変色などが生じる可能性があります。素材によっては劣化が進み、販売自体が難しくなることもあります。
- 在庫分析や経営判断を難しくする:デッドストックが増えると、在庫回転率や需要予測の精度が下がります。その結果、仕入れ判断を誤る可能性が高くなります。
デッドストックの原因

デッドストックが発生する主な原因は以下の通りです。
- 在庫管理体制の不備:在庫数や販売状況を正確に把握できていないと、適切な発注量や再注文の判断ができず、過剰な仕入れや売れ残りが発生します。
- トレンドや季節性への対応遅れ:トレンドの変化やシーズンの経過に柔軟に対応しないと、売れ残り在庫になってしまいます。
- 商品品質と顧客ニーズのズレ:商品の品質に問題があり、想定していた顧客ニーズと合っていないと、販売が伸び悩みます。
- 市場分析の不足:市場動向を十分に分析せずにいると、需要を正確に把握できません。
デッドストックのコスト

小規模なアパレルECを想定し、デッドストックによって発生するコストを具体的に見てみましょう。
冬に備えて、1着あたり1万円のコートを200着仕入れ、合計200万円を投資しました。しかし、シーズン終了までに売れたのは100着のみで、残りはデッドストックとなってしまいました。このとき、事業者は次のようなコストを抱えることになります。
- 在庫として固定された100万円:100万円分の在庫はすぐに現金化できず、資金が滞留します。
- 保管にかかる16万円:仮に月2万円の保管費がかかり、売り切るまで8カ月を要した場合、合計16万円の保管費用が発生します。
- 回収額の減少による25万円の損失:在庫を処分するために大幅な値下げを行い、1着7,500円で販売した場合、100万円の仕入れに対して回収できるのは75万円にとどまります。
デッドストックを避ける方法

デッドストックを避ける方法は主に以下の通りです。
- 在庫管理システムを活用する:在庫数や販売状況をリアルタイムで把握できる仕組みを整えることで、売れ行きの鈍化や過剰在庫の兆候を早期に発見し、値下げや販促などの対策を取りやすくなります。
- 新商品は小ロットからはじめる:新商品は、売れ行きが確認できるまでは小ロットで注文するのが安全です。仕入れ単価は多少高くなりますが、売れ残りによる損失を下回るのであれば、結果的にこちらの方が健全な判断といえます。
- 顧客のニーズを事前に把握する:アンケートや購入履歴、問い合わせ内容などを通じて、顧客が求めている商品や不満点を把握します。
- データを活用して商品を選定する:商品の仕入れは、担当者の直感で判断せず、業界動向や過去の販売データなどを基に行うことが重要です。
- 再注文のタイミングと数量をルール化する:在庫が一定数まで減った時点で、あらかじめ決めた数量を再注文する、といった基準を設けることで、仕入れの判断が属人的になるのを防げます。
デッドストックを処分する方法

デッドストックの主な処分方法は以下の通りです。
- ECマーケットプレイスへ出品する:eBay(イーベイ)などの販売チャネルを活用することで、現金化の可能性を高められます。
- 慈善団体へ寄付する:慈善団体へ無償で寄付するという選択肢もあります。国や地域によっては、税控除の対象となる場合があります。
- 購入特典として無料提供する:一定金額以上の購入特典やキャンペーンのノベルティとして活用することで、在庫を減らしながら顧客満足度の向上につなげられます。
- ギブアウェイとして提供する:SNSマーケティングの一環として、プレゼントキャンペーンの景品に活用すれば、ブランド認知の向上や将来的な顧客獲得につなげられます。
- バンドル販売する:売れ筋商品とセットにして販売することで、単品では動きにくい在庫も処分しやすくなります。
- 委託販売店やアウトレットで販売する:委託販売店やアウトレットを通じて販売することで、ブランド価値を損なわずに在庫を減らせます。
- クリアランスセールを実施する:SKUごとに価格を下げ、在庫を早期に入れ替えることで、保管コストや管理負担を抑えられます。
まとめ
デッドストックは放置するとコストや機会損失を生み、事業に悪影響を与えます。原因を把握したうえで、在庫管理や仕入れ判断を見直し、発生を避けましょう。すでに抱えている在庫についても、販売方法や活用策を工夫すれば、事業への影響を最小限に抑えられます。自社の在庫状況を定期的に確認し、健全な在庫運営をめざしましょう。
よくある質問
デッドストックとは?
デッドストックとは、仕入れたものの売れ残り、長期間動いていない在庫のことを指します。
デッドストックを日本語に言い換えると?
デッドストックは、日本語では一般的に「不良在庫」や「滞留在庫」と言い換えられます。
デッドストックにはどう対処する?
デッドストックには、次のような活用方法があります。
- ECマーケットプレイスへの出品
- 慈善団体への寄付
- 購入特典として無料で提供
- ギブアウェイとして提供
- バンドル販売
- 委託販売店やアウトレットで販売
- クリアランスセールの実施
デッドストック、ヴィンテージ、旧式在庫の違いは?
それぞれが意味する商品の状態が異なります。内容は以下の通りです。
- デッドストック:販売機会を逃し、事業者にとって負担となっている在庫を指します。
- ヴィンテージ:時間の経過によって希少性や価値が高まり、市場で評価されている商品を指します。もともとデッドストックだった商品が、後にヴィンテージとして扱われるケースもあります。
- 旧式在庫:新モデルの登場や仕様変更により型が古くなった在庫を指します。必ずしも売れない状態とは限らず、価格調整などによって販売されることもあります。
文:Hisato Zukeran





