アパレル事業を始めることは、ワクワクする体験であり、大きなチャンスにもなりますが、同時に挑戦でもあります。新しいアパレルブランドを成功させるためには、財務計画やスタートアップ資金、マーケティング戦略、そして競合と差別化された商品が欠かせません。まずは、これらすべてを盛り込んだアパレル事業計画を立て、今後の成長プランを明確にしていきましょう。この記事では、その始め方を紹介します。
ビジネスプランとは?
ビジネスプランとは、企業の目的と成功のための戦略をまとめた文書です。小規模な事業から多国籍企業まで、あらゆる規模の企業が活用しています。ハーバード・ビジネス・レビューの調査によると、ビジネスプランを作成した起業家は、そうでない起業家に比べて成功する確率が16%高いと報告されています。
ビジネスプランは、会社の成功のための設計図といえるビジネスモデルとは異なります。たとえば、あなたのアパレルブランドが、ファッション業界の他の成功事例に基づいたビジネスモデルを参考にすることはできますが、ビジネスプランはあなたの会社に特有のものであり、ミッションステートメントや製品を独自の販売戦略に結びつけるものです。
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アパレル事業にビジネスプランが必要な理由
ファッション業界は常に変化しています。トレンドは移り変わり、トレンドは移り変わり、ターゲットとなる顧客層も新しい世代や市場へと移っていきます。こうした絶え間ない変化に対応するのは簡単ではありません。強固なスタートを切り、トレンドの先を行くためには、まず包括的なアパレル事業のビジネスプランを作成することが重要です。
事業が成長していく中で、ビジネスプランは急速に変化する市場環境の中でも、自社のコアミッションや販売戦略を見失わないための軸になります。たとえば、競合他社が新製品を発売したとき、自社も同じ方向に動きたくなるかもしれません。しかし、しっかりとしたビジネスプランがあれば、その判断が自社のブランドアイデンティティやミッションステートメントに合っているかどうかを冷静に見極めることができます。
また、ビジネスプランは資金調達の場面でも大きな力を発揮します。エンジェル投資家やベンチャーキャピタリストに対して、財務諸表などの裏付けを伴う緻密なビジネスプランを提示することで、明確な目的意識と経営の確実性を示すことができます。堅実なビジネスプランは、投資家の信頼を獲得し、競合他社への投資を思いとどまらせる効果も期待できます。
アパレル事業計画を9ステップで構築する方法
- エグゼクティブサマリーを作成する
- ミッションステートメントを策定する
- 市場分析を行う
- コア製品を明確にする
- 組織構造を説明する
- 運営計画をまとめる
- マーケティング計画を立てる
- 財務計画を作成する
- 将来の成長計画を示す
アパレル事業のビジネスプランには、成功と成長に不可欠な9つの要素を盛り込みましょう。ここでは、ビジネスプランの立て方をステップバイステップで紹介します。
1. エグゼクティブサマリーを作成する
エグゼクティブサマリーは、会社の全体像を手短にまとめた要約です。以降の章で詳しく述べる内容を俯瞰します。同じビジネスプランでも、読み手に合わせて複数のサマリーを用意できます。たとえば、運営に焦点を当てた版は経営チーム向けに、財務に焦点を当てた版は投資検討中のベンチャーキャピタリスト向けに、といった具合です。
エグゼクティブサマリーはビジネスプランの最初のセクションですが、実務では本編の主要セクションを書き上げてから最後に作成するケースも少なくありません。
2. ミッションステートメントを策定する
ミッションステートメントは、あなたの会社が存在する目的を明確にするものです。業界、提供する製品、ユニークバリュープロポジション(UVP)、企業としての倫理や価値観、そして創業者としての思いを示します。
営利企業として運営する場合は、株式会社や合同会社など、目的に合った法人形態を選択します。非営利で運営する場合は、一般社団法人やNPO法人などの形態を採用し、非営利事業向けのビジネスプランを作成します。
3. 市場分析を行う
市場分析では、自社のビジネスが競合他社とどのように差別化され、どのようにして安定した顧客基盤を築くかを明確にします。まず、顧客のニーズや欲求を評価する市場評価から始めましょう。さらに、小売業界内での潜在的な競合を調べる競合分析も有効です。アパレル事業では、他のブランドとの直接的な競争だけでなく、最新のファッションではないものの、より低価格で消費者を引きつける古着店や委託販売店といった間接的な競合も存在します。
市場調査には、顧客分析も欠かせません。これは、あなたが販売したい服を購入する理想の顧客プロフィールを明確にする作業です。具体的には、理想的な顧客プロファイルを作成し、ターゲットオーディエンスの一例として架空の人物像(ペルソナ)を設定します。その人物の興味関心、収入層、年齢層やライフスタイル、購買習慣などを想定することで、魅力的な製品開発や効果的なマーケティング戦略の立案につなげることができます。
4. コア製品を明確にする
ミッションステートメントを定め、ターゲット市場を特定したら、次に提供する製品について具体的に説明します。初期段階のビジネスプランでは、各製品の概要を簡潔にまとめ、自社で製造するのか、もしくは外部から仕入れるのかを明記しましょう。また、原価をもとに算出した小売価格も記載するとよいでしょう。価格戦略は、市場調査で把握したターゲット顧客の予算に合うように設計することが重要です。
初めて起業する場合は、限られたアイテムからアパレル事業をスタートするのも良い選択です。サプライヤー探しや在庫管理の経験を積みながら、慣れてきた段階で徐々にラインナップを拡大し、新しい商品を追加していくことができます。
5. 組織構造を説明する
ビジネスプランのこのセクションでは、会社の組織構造を整理し、組織図や指揮系統を示します。あわせて、初期段階の経営チームを紹介することもできますが、事業の成長に伴って構成が変化する可能性がある点も考慮しておきましょう。明確に整理された組織計画は、規律ある経営体制を示すものであり、信頼できるビジネスに投資したいと考える投資家の安心感にもつながります。
6. 運営計画をまとめる
運営計画では、ビジネスをどのように運営していくかを具体的に示します。オンラインストアか実店舗か、またはその両方を展開するのかを明確にし、プライベートブランドやホワイトラベル製品を利用するかどうかも説明します。また、在庫を自社で保管するのか、ドロップシッピングモデルを採用するのかといった運営方針も記載します。
この運営計画は、在庫、設備、不動産、物流、従業員管理といった運営面の課題にも自然に関係してきます。このセクションでは、スムーズな事業運営を実現するために必要なリソースを具体的に示すことが大切です。初期の従業員数、必要なスペース、使用する機器やツールの種類などを見積もって記載しましょう。
7. マーケティング計画を立てる
マーケティング計画は、これまでに行った市場分析をもとに、ターゲット層とその顧客にどのようにアプローチするかを明確に示すものです。施策には、デジタルマーケティング、印刷広告、テレビやラジオ広告、屋外広告、口コミマーケティングなどが含まれる場合があります。このセクションを作成する前に、さまざまなマーケティング手法について理解を深めておくと良いでしょう。
ビジネスプランに具体的なマーケティング予算を盛り込む必要はありませんが、月次または四半期ごとにどの程度の資金をマーケティングに充てるか、おおまかな見積もりを示すと説得力が増します。また、マーケティングマネジメントのための専任スタッフやチーム体制を提案するのも効果的です。
8. 財務計画を作成する
このセクションでは、予測される収益と支出が、バランスシート、損益計算書、キャッシュフロー計算書にどのように反映されるかを示します。投資家は、新しいビジネスがすぐに利益を上げることを必ずしも期待していませんが、将来的に黒字化を目指すための現実的で持続可能な計画を示すことが重要です。
9. 将来の成長計画を示す
ビジネスプランの最後は、今後の成長戦略で締めくくります。投資家や新しいチームメンバーは、あなたが明確な成長ビジョンを持っているかどうかを重視します。市場シェアや売上高などの目標を設定し、企業としてどのように発展していくのかを描きましょう。細部まで踏み込む必要はありませんが、現実的でありながら意欲的な成長目標を掲げることが大切です。
アパレル事業計画に関するよくある質問
アパレル事業を始めるには、どれくらいのデザイン数が必要ですか?
立ち上げ時には、顧客に十分な選択肢を提供しつつ、物流やサプライチェーンの負担が過度にならないようにすることが大切です。Fashion Brain Academyのポッドキャストによると、初期のコレクションには3〜8スタイル程度が推奨されています。また、各デザインに複数のカラー展開を設けることで、効率的にバリエーションを増やすことができます。
アパレル事業を始めるのにどれくらいの資金が必要ですか?
アパレルブランドの立ち上げには、原材料(生地や糸など)、人件費、配送費、不動産費、製造設備、決済処理、ウェブサイトの運営費、マーケティング費用など、さまざまなコストが発生します。初期費用は数十万円から数百万円規模になることが多く、事業の規模や生産体制によってはさらに多くの資金が必要になる場合もあります。
アパレル事業にはどんな流通チャネルがありますか?
アパレル事業の流通チャネルには、Eコマースウェブサイト、実店舗、ポップアップストア、Instagram、TikTok、eBay、Etsyなどがあります。
アパレル事業のビジネスプランで考慮すべき法的事項はありますか?
多くの国や地域では、服飾小売業者が販売および売上税を徴収するための許可を取得する必要があります。また、アパレル登録証明書や各種ビジネス保険が求められる場合もあります。会社を法人又は合同会社として法的に設立するのは有効ですが、個人事業主として運営することも可能です。Shopifyのスタートアップガイドは、これらの初期段階の法的手続きを進める際に役立ちます。





